姫様、女神の考えた「売れるラインナップ」が愛の木刀でした
「姫様、こんな素敵なドレス。よろしいのですか?」
布の服ではあんまりなので、服屋にて仕立ててもらい、聖香にプレゼントをしたら喜んでくれた。
一ヶ月前まで世界から聖女としてもてなされ、綺麗なドレスに豪華な食事を与えられ、立派な屋敷に住んでいたのだが、人と魔族の不可侵条約が締結され、対魔族の結界を放棄したことにより、無職扱いとなり、屋敷から追い出された聖香。
聖女から無職への末路は、見たことがない。
「姫様。聖香を交渉役として採用すべきです。話し方やたたずまいなど、素質があります」
オカリナが私にそう進言してきたのには驚いた。彼女からしたら聖女はラスボスなはずだ。
今まで結界にどれだけ苦労したか、その結界のせいで同胞である魔族をどれだけ殺されてきたか。
その苦悩は測り知れないところがあるからだ。
そんなわけで聖香には私への取り次ぎ役、交渉役の役割を与えた。住まいも宮殿の近くに建てた。
「とまあ、交渉なんか今までしたことないんだけど、前回メロディ法国に行ってもらう人材で悩んだ経緯があるから必要ね」
「かしこまりました。祈る生活から脱却できて嬉しく思いますわ」
そんな話を三人でしていると、
「ミナエ。ついにお土産屋に並べる商品をラインナップしたわ!」
と、はしゃいだリィナがやって来た。
「リィナ! あなたここにいたんですか?」
「聖香じゃない。なんでここにいるのよ?」
「聖女をやめたら屋敷から追い出されて、ここで働くことにしたんです」
「聖女をやめたって? せっかく不老不死の加護を与えたのにもったいない」
「そのせいで何百年祈り続ける羽目になりました。できたら加護を返したく思います。というか返します」
そう言われてリィナが困ると、
「女神よ。聖香は聖女なのか?」
「元、になるけど」
「え? 早く言え。知らなかったから仲良く話してしまったどころか、姫様の側近として働くよう進言してしまったではないか」
「いや、むしろ世界最速スピードで言ったと思うけど」
「姫様はご存知だったのですか?」
「一ヶ月前にここにきたからね。ちなみにオカリナはあそこで九九を唱えてたよ!」
「あれは地獄でした。しかし、姫様。進言してしまった落ち度があるとはいえ、聖女は我々魔族の天敵です」
「今は聖女じゃないわ」
「あ、そうですね。ならば問題ないでしょう」
オカリナがポンコツで助かったと思う日が来るとは思わなかった。
話を戻そうと
「で、リィナ。加護って返すことは可能なの?」
「可能だけど、私が不老不死になっちゃう」
「女神って不老不死じゃなかったら平均寿命どれくらいなの?」
「一億年とちょっとくらい?」
「返しなさい。今すぐに!」
「私にあと一億年生きろっていうの?」
「変わらないでしょ!」
「仕方ないわね」
しぶしぶリィナは右手を聖香の胸に当てると、眩しいくらい輝き出した。
光が収まると、聖香に変化はなかったがリィナの頭上に天使の輪が現れた。
「まさか、慈愛の女神として戻る日が来るとは思わなかった」
口調が元に戻っている。
「ああ、力がみなぎってくるのがわかる」
「リィナ。神らしいことして」
「え? 急に言われても」
「もしかして、神らしいことできない?」
「妾は慈愛の女神。不老不死欲しいのかのう?」
「八千年生きるらしいからいらない」
「まあ美苗よ。妾は神の目覚めにより、女神バズーカが使えるようになったぞ。アンダンテ国の城くらいなら一撃で吹き飛ばせる威力があるのじゃ」
「いまさら? てか、私たちは攻められない限り攻めませんって世界に向けて発信した直後でそのスキル無駄でしょ」
「妾、女神なのに悲しみ。じゃが、ラインナップを見てくれ。これは売れるぞ」
私はペラペラと流して読んでみる。
愛と書かれた木刀。
正義と書かれたワッペン。
友情と書かれたキーホルダー。
誰が買うんだ?
そもそも今更だが気づいてしまったことがある。
「この村って誰か来るの? しかもお土産屋でしょ?」
「え?」
「だって、この村に来る人いないじゃん。インバウンド客ゼロに近いよ?」
「美苗よ。村に来るまでに生えている毒キノコなんとかならんかのう? そうしたら人が来るかもしれぬ」
「刈り取っても次の日には生えているから無理じゃない?」
というよりも、私は毒キノコが生えていることにより、防衛費に資金を費やす必要がない方が需要が大きいと考えている。
そのため今まで対策を講じたことがないのだ。
「妾は何のためにあの地獄の勉強をしたというのか。まさに、女神、悲しみ」
「まあ、国中の都市を一周するような電車の開発案はあるんだけど、まだまだ先だなあ」
私は言うと、突然床に巨大な魔法陣が現れた。
「なんじゃこれは! 早速女神バズーカの出番か?」
「宮殿壊さないで!」
「姫様。これは転移の魔法陣です」
聖香が説明をすると、
「これがあれば集客が見込めるのではないか!」
「っていうか、今はそれどころじゃない。誰が来るっていうのよ!」
魔法陣から放電のようなものが放たれると、、オカリナが青ざめてこう言った。
「姫様、魔王です」




