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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフを希望する姫様と、それを阻止するしもべ達〜  作者: みずほたる
第2章 スターフィールド建国記 〜姫様扱いはビジー(多忙)モードへの招待状でした〜
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姫様、近所のお裾分けが「伝説の絶滅種」だと言われて困惑しました

「宮廷で料理人として働きたい者がいる?」


玉座にて私はヴィオラに聞き返した。


「はい。|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》の受付にてそう申請した人物がいたそうです。お会いになられますか?」


聖女がもしここに来たいと言ったら、彼女や護衛団たちをもてなす必要がある。


今現在はメイドたちが当番制で料理を作っているのだが、元々は私が教えたこともあり基本は家庭料理だ。


ここは新しいメニューを開拓するためにも会っておいて損はないと考えたのであった。


しばらくして。


「お目通りありがとうございます。トロン村から参りましたボーンと申します」


白いコック姿の少年は少し緊張しているように見える。


オカリナが、


「トロン村。北にある小さな村だな」


「はい。その村一番の料理人を自負してます」


「うちの宮殿で料理人として働きたいって聞いたけど?」


「ハイ!」


「なら厨房を貸してあげるから、なんか作ってちょうだい」


「わかりました。みんなを笑顔にしてさしあげます!」


そう元気よく言うと駆け足でヴィオラについていった。


「姫様。これは期待できそうですね」


隣に立っているオカリナは私に言うと、


「そうね。せっかくだからナナミとチヒロも呼んできてくれない?」


「かしこまりました。あの二人は味にうるさいですからね」


オカリナが姿を消すと、居ても立ってもいられなかったので厨房の様子を見に行くことにした。


厨房に行くと、腰を抜かして倒れているボーンがいた。


「姫様。この野菜なんですが」


震えながら人参やじゃがいもなどを指差している。


「今朝、近所のお婆さんが採れたてだからっておすそわけしてくれたやつ?」


「こんな高級食材見たことがありません!」


「は?」


「例えばこの人参。……見てください、この血管のような瑞々しい繊維! 断面から溢れる滴はもはや宝石です。これは数百年前に絶滅したと言われる伝説の『龍の髭人参』ではないですか!? 王侯貴族が一生に一度食べられるかどうかという代物を、お婆さんがおすそわけ!?」


「……いや、普通の人参だけど。泥ついてたし」


「泥!? 泥ではありません、それはきっと大地の魔力が凝縮されているに違いません!」


「まあ、この村は土の四天王が土壌を品種改良の実験をしている最中だしね」


「食材でなく、土壌を品種改良なんて聞いたことがありません!」


「うちには食材を品種改良する能力がないんだから仕方ないじゃない。おいしいんだからどちらでもいいじゃない」


「この食材、下手に調理するなんてとんでもありません。生で食べるべきです!」


「そしたらあなたがいる意味がないでしょ」


私が文句を言うと、チヒロが現れた。


「お呼ばれされたから来ちゃった。はい。今朝採れたシャインマスカット。みんなで食べて」


「シャインマスカットですって!? あの存在するかどうか研究者たちが今でも論争を繰り広げている幻のぶどうが、こんな簡単に?」


背景に雷が落ちまくっているであろうボーン。


「あ、アタイさ、願いながら畑を耕したらなんでも栽培できるんだよ。リクエストがあったら言ってね」


「願ったらそれが栽培できるって農業の原理をぶっ壊してるじゃないですか。でも、パイナップルはさすがに無理ですよね? ここは森の中ですし」


「そんなものあちこちで採れすぎて安値で八百屋で売ってるよ?」


「なんですとぉ!?」


派手に驚くボーン。


「この様子じゃ、まだ何もできていないみたいね。姫様、お腹が空いてるから冷蔵庫からなんか拝借してもいい?」


「え? いいけど、今日はまだ買い出しに行ってないはずよ?」


「ご飯と卵と醤油があればいいよ」


「あの。一体何を?」


オロオロするボーンに、


「卵かけご飯だけど」


「試食してみても?」


「どうぞ」


一口食べると、料理漫画みたいなリアクションをして倒れてしまった。


「姫様、どうすんのこれ?」




「首都といっても田舎の森だとあなどり、申し訳ございませんでした。この地はどこよりも食べ物が美味しいと思わされました」


気を取り直したボーンは、玉座でため息をついていた私に深く謝罪をした。


「この村は土壌が特殊すぎるけど、他の街でとれた食材もおいしいと思うんだけどなぁ。農家さんが一生懸命育てただけあって違いはないと思うよ?」


「確かにおっしゃるとおりです。料理人として初心に帰り修業に励みたいと思います」


「ま、自分に納得したらまた宮廷料理人として名乗り出るといいわ」


「ありがとうございます。その時はまたよろしくお願いします。ところでお一つ質問をしてもよろしいですか?」


「私が答えられる範囲から」


「この村でとれる食材はしゃべらないのですか?」


「むしろしゃべる食材を見たことがないわ」


「包丁を入れると断末魔が聞こえません?」


「もうそれ、ホラーじゃない」


「他にも疾風ジャガイモとか、浮遊タマネギとかがあるんですが、捕まえて切ろうとしたり茹でようとしたら暴れるんです」


「なんで野菜は捕まえる物なのよ。その村おかしいんじゃないの?」


「一応採ってきたんですけど、食べます?」


ボーンは風呂敷で包んだ箱を差し出してきた。


「この村の生態系壊す気?」


私は嫌がると、ナナミが慌ててやって来た。


「姫様。遅れて申し訳ございませんでした」


「ちょうどよかった。彼、地元からしゃべる人参やら、吠えるきゅうりやら持って来てるっぽいけど、調理してもらって食べる?」


「食べたい人、いるんですか?」


こうして彼が地元に帰った後、世界は広いんだなあと思いながら、卵かけご飯を堪能するのであった。

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