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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフを希望する姫様と、それを阻止するしもべ達〜  作者: みずほたる
隣人がゴキブリを退治したら私が死んでいた件 〜天使のミスで始まった、可愛すぎるお姫様(中身45歳)の再就職〜
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姫様、慈愛の女神がアップルパイで買収されて「クビ」になりました

二週間後。玉座にて。


「姫様。投降兵を率いていた隊長たちが御目通りを願っております。抹殺しますか?」


「オカリナよ。いまだにそなたの処刑基準がわからぬ。兵士たちはおそらく帰順したいって頼んでくるとふんでおるわ」


「いかがなされるおつもりで?」


「妾は来年の夏を快適に過ごすために、団扇を開発しなければならぬゆえ、忙しいと伝えよ」


「かしこまりました」


「あとオカリナ。暇なら四天王候補の一人、風のウインドとやらを見つけて参れ。奴の能力なら扇風機どころかエアコンまで作ってくれそうじゃ。ああ、そしたら雷の方も見つけてほしいのう。じゃが、これ以上裸のおっさんを増やされてものう」


「ご心情お察しします」



その後、宮殿の外にて、オカリナは私の返事を兵隊長たちに答えた。


「そんなわけで、姫様は夏に向けて快適に過ごせるための新技術を開発中ゆえお会いすることはできない。姫様の側近の私ですらこれから人材集めに奔走するのだ」


「まだ夏が終わったばかりだというのに!」


「そうだな。なんでも宮殿の中で、夏は暑く冬は寒いなんてありえないって呟いておられたからな」


「それって当たり前なのでは?」


「夏はほどよく涼しく、冬はほどよく暖かいのが理想だそうだ」


「労働環境といい、プレハブ小屋の快適さといい俺らの常識の遥か先を見ておられるんですね」


「それこそ古の悪魔姫(デビルプリンセス)。私が唯一忠義を尽くせるお方ということだ。そろそろ人探しに行かねばならん」


そう言ってオカリナは空を飛んでいなくなったのであった。



さらに一週間後。


「慈愛の女神リィナ様とお見受けしました」


喫茶店でバイトをしているエプロン姿のリィナは投降兵に声をかけられた。


「聞かなくても女神にしか見えないでしょ?」


少しムッとするリィナ。


口は動かすがテーブルを適当に拭いている。


「あんたたち投降兵でしょ? 私に何のようよ? 私、バイト中だから、無駄話なんか店長に見つかったら怒られるのよ」


「実は姫様に直接お礼とお願いを聞き入れてもらいたかったんですが、オカリナさんはいないし、ヴィオラ村長には「あんたたちのリストを作るだけで忙しい。三千人いて字を書ける人がいないっておかしくないか」と突っぱねられまして」


「識字率、この村では八割超えるからね」


「話を聞くと学校という存在に驚きました」


「ミナエが言うには、意思疎通や報連相って大事らしいから、まずは読み書きからやってるみたいよ」


「頭が上がりません。リィナ様にはこれを」


「ムムッ、これは行列が常にできて手に入らないアップルパイというスイーツじゃない」


「姫様へとりなしていただければさしあげようかと」


「確かに私の言うことならミナエは耳を傾けてくれるとは思うけど、これって賄賂じゃないの?」


「アップルパイごときが賄賂にはなりませんよ」


「投降兵よ。お主も悪よのう」


悪そうな顔をしてリィナはアップルパイを受け取るのであった。




宮殿の大広間にて、私はある人物と面会をしていると、


「ミナエ。投降兵たちが面会を望んでいるわ」


アップルパイを食べながらリィナがやって来ては頼み事をしてきた。


「どうせ、そのアップルパイで買収されたんじゃろう? 女神くせに情けないのう」


「仕方がないじゃない、喫茶店のバイトなんて最低賃金だし、並んでアップルパイを買う時間帯も合わないし。たまには私もスイーツを堪能したいわ」


「というか、勤務中じゃなかったのか?」


「店長がいなかったからバイトリーダーにうまいこと騙して抜け出してきたのよ」


「......だそうじゃが」


私はそれまで話をしていた人物にため息をついて言うと、


「遅刻はする。つまみ食いはする。仕事は適当にやる。もうクビですね」


「げっ、店長。今のは天の声よ」


「知らんわ。ロッカーの片付けをして出て行きなされ」


「神、やっとバイト先を見つけたのに、悲しみ」


こうして、リィナは目的をすっかり忘れ、店長に必死に謝る。


そんな悲しい女神の姿を見せられるのであった。

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