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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフを希望する姫様と、それを阻止するしもべ達〜  作者: みずほたる
隣人がゴキブリを退治したら私が死んでいた件 〜天使のミスで始まった、可愛すぎるお姫様(中身45歳)の再就職〜
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姫様、漆黒のドレスが「高笑い」と「飛行能力」を強制習得しま

「それにしても一体なんじゃったと言うのか。このドレス呪われとるのか?」


私はそう言いながらも額に手を当てる。


「姫様。口調が女神ですが」


「おそらくミナエはこの辺りのものから邪気を吸収し、それを自らに取り込んでしまったんだろうな」


リィナが前に出る。


「なんか今までになかった力みたいのを持ってる感覚はあるのじゃが、この口調がリィナみたいでってリィナあんた普通になってないか?」


「我の邪気が一番強かったが、奪える能力が皆無だからせめて口調だけでもってドレスが癇に障ったのではないか?」


「なんで女神が一番邪気が強いんじゃ。てか能力が皆無って!」


「わかないけど、これで女神としてようやくスタート地点に立てたわ! 悪魔姫に泣きながらついてきた甲斐があったってもんよ!」


「だが女神よ。奪われる能力がなくなったら人間と違いがないではないか。空中移動すらできなくなったのではないか?」


「フッ、私は慈愛の女神。空くらい飛べるわ」


しかし沈黙の時間が続く。


「姫様。飛べますか?」


「どうやって飛ぶのじゃ?」


「念じれば」


そう言われて想像してみると、いきなり身体が宙に舞って天井に頭を打ちつけて地面に叩きつけられた。


「痛いけど飛べたのじゃ!」


初めて空を飛んで感動する私。


「さすが姫様。あの硬い天井に穴を開けるとは!」


天井を見て感動するオカリナ。


「ミナエよ。その唯一残されてた私の能力を返してくれないかなぁ?」


「どうやって返すのじゃ?」


「わかんない! でもこれから先、地面を歩くとか考えられない!」


「堕落した部分は変わってない気がするのう」


「性格はさすがに変わりませんよ。要するに、今までより更に役に立たなくなったかと思われます」


「聖女から能力を返してもらうしかないのね。私、悲しい」


「ま、仕方があるまい。慣れるまで我慢するとしよう」


私は諦めて玉座に座ることにした。


それにしてもこのドレスを着ただけで、あんなチート能力が発動するとは。


ただし、相変わらず発動条件がわからない。


褒められて嬉しくなったら発動したような気がする。


「それにしても姫様。そのお姿、そして認めたくはございませんが、まさに姫様に相応しい言葉遣い。ほぼ完璧かと」


オカリナが片膝をついて言ってくる。


「ほぼ、とは気に食わんことでもあるのか?」


「出来れば、今後誰とも会わないときは姫様としての佇まいを勉強なされた方が良いかと思います」


「え?」


「これをご覧ください」


「誰でもできる姫様入門。初級編と書いてある本じゃが......一ページ目から「まずは姫様という存在は無駄に高笑いを好みます。さぁ手を口元に当てホーッホッホッと笑ってみましょう」ってこの作者、漫画の読み過ぎではないかのう?」


「素晴らしい! これを実践し、完璧な姫様となりましょう!」


「オカリナよ、主は妾の話を聞いておるのか?」 


口元に手を当てるのでなく、額に手を当ててしまう私。


「姫様。アンダンテ領主の使者と名乗る者が来ましたが、いかがなされますか?」


宮殿で働く受付嬢が私の返事を聞きに来た。


「アンダンテ領ってどこにあるのじゃ?」


「森を抜けた先にある街など一帯です」


「まあ折角来た者を追い払うのも野暮じゃ。ここに通せ」


「かしこまりました」


と言いながらも立ち尽くす受付嬢。


「どうしたのじゃ?」


「いえ、その佇まいにその口調。まさに私たちを導いてくれる姫様のお姿に感動してしまいました。今までただの小娘だと思って申し訳ございませんでした!!」


「民が妾をどう思っていようが構わぬ。とりあえず使者に返事を伝えてくれ」


「かしこまりました!」


受付嬢がいなくなると、


「口調だけで印象って変わるもんなのかのう?」


リィナに聞くと、


「当然でしょ。ミナエは神のみが許される口調で話をしてるのよ?」


「女神キャラになりきっている人にしか見てなかったのう」


「私、悲しい!」


そんなやりとりをしていると、見た目が裕福そうな男たち三名が大広間に入ってきた。


「お前がこの森の領主か」


偉そうに話しかけてくるオッサン。


なんだこいつ。使者という割に威圧的じゃない?


まずは「はじめまして」から初めて名刺交換じゃないわけ?


ついイラッとしてしまった。


「そうじゃ。妾がこの辺り一体を守護するミナエじゃ」


絶望の波動が私の身体から溢れ出る。玉座の横に置いてあった花が萎れた。


当然その波動は使者をも巻き込む。


重圧をかけられたかのように立てなくなって座ってしまった。


その姿はまるで平伏しているようだ。


「領主様からのお言葉を伝える」


そう言ってきたので睨みつける。波動が更に強まる。


私のそばにいるオカリナはもちろん、リィナも何事もないかのように平然と立っているが、リィナは使者に伝えた。


「あなた仮にも使者でしょ? 言葉遣い考えないと交渉が終わる前に波動に押し潰されちゃうと思うよ?」


「クッ、絶滅危惧種の魔族のくせに」


「いや、私は慈愛の女神だから」


「コスプレイヤーも大変だな」


女神の羽衣(偽物)を纏い、羽が生えていても信じてもらえないリィナが少し可哀想に見えた。


まあ、これまでも信じられた覚えがないが。


「で、使者よ。妾になんのようじゃ?」


「この村周辺は豊かと聞く。全てを我々に捧げれば滅ぼさないでやろう。もちろん拒否しても構わないがその場合は容赦なく攻めさせてもらう」


この言葉にオカリナが、


「この無礼な者たちの首を刎ね、送り返しますか?」


「建ったばかりの宮殿をいきなり事故物件にしたくないのう」


鎌に手を取ったオカリナを制して、


「この村で収穫したものは妾たちのものじゃ。恵んでくださいお願いしますって頭を下げたら考えなくもないがのう」


「魔族如きがふざけるな! 聖女様の結界がある限り、貴様らの攻撃など通用せんわ!」


どうやらこの者たちは、森一帯に貼ってあった結界がすでに破られていることを知らないようだ。まあ、教えてやる道理もない。


「なら交渉は決裂じゃな。せいぜい攻めてきて妾の首を取ると良いわ。ま、戦争になれば良いな。誰一人として森を抜け、村にたどり着きすらできぬわ」


私は使者に言うとオカリナが耳元で


「姫様。今です!」


え? 


恥ずかしいのを押さえながら手の甲を口元に当て、


「オーッホッホッホッ」


「今の言葉、後悔するなよ!」


使者たちが立ち上がろうとすると、


「くっ、足が!」


三人とも立てないでいるのを見てリィナが、


「絶望の波動を人間があれだけ浴びたんだもん、足が痺れるのは当然よ」


「やっぱり民たちの前では危険かのう?」


「民は姫様のしもべだからデバフはかからないわよ。ま、今の会話時間五分くらい? 正座五時間くらいの痺れね」


「ちょっとたいしたことなさそうな気がするのう」


「何言ってるのよ。しばらく立つことすら不可能よ。這いつくばるしかないし。で、こいつらどうするの? 動けないわよ?」


「そこは安心しろ。こんなこともあろうかと仕掛けを用意しておいた。姫様。このボタンを押せばあの者たちがいる床が抜け、宮殿の外に放り出せます。放り出した先は洗っても一ヶ月は嫌な匂いがする池にダイブです」


「なんでそんな池があるのじゃ?」


「この悪魔大元帥オカリナ。一日二回の調合スキルを一ヶ月継続し肥だめの池を完成させました。なんとこの池、浴びない限り無臭です!」


「回数制限のある貴重なスキルの無駄遣いじゃ」


「姫様に無礼をなす者への天罰と受け止めてください」


「まあ良い。ここにいられても迷惑じゃし。変な押し売りを追い返すと受け止めるとしようかのう」


私はボタンを押すと、床に穴が開き三人は「覚えてろよ」と叫びながら落ちていった。


「さて、ミナエ。どう見ても戦争になるわけだけど、無双して私強い子アピールするつもり?」


「戦争にすらならんと思うがのう。オカリナよ、四天王やエルフ、他戦力になりそうなものに戦うなと伝えよ。ヴィオラに医療班は待機するように伝えておくのじゃ」


「戦わないのに医療班が必要なのですか?」


「そうじゃな。使者にも伝えたが、村に誰一人として立ち入ることはできぬじゃろうな。妾たちがこの森の特殊性に慣れすぎているだけじゃ」


私はそう言うと立ち上がり、再度塞がった床を見つめてこう言った。


「こんな罠、いくらしたんじゃろう?」

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