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姫様、職場(城)ができるまで「在宅ワーク(監禁)」が確定しました

「私は反対です。神族なんか滅んでしまえばいい存在なのに村に住まわせるつもりなんて。想像しただけでも吐き気がします」


バスクが知り合いだという神族の医師を勧誘しに行ったと、オカリナに説明すると猛反対してきた。


「リィナだって女神だけど同じ村どころか同じ屋根の下に住んでいるじゃない」


私は矛盾点をついて紅茶を一口飲むと、リィナがげっそりした顔で部屋から出てきた。


「腹が減った。どうか女神に救いの手を」


詐欺まがいの商売の返金をした結果、一文無しになり、さらに働いていないため食べるのに困っているみたいである。


「|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》に行って仕事見つけてきなさいよ」


「女神である妾が働くなどありえぬ。もう毒キノコでもかまわぬ。腹を満たしたい」


その様子を見かねてか、オカリナが自分のカバンからパンを取り出して、


「これでもいいなら食べるか?」


「ジャムはないのか?」


「じゃあやらん」


「妾、女神なのに悲しみ」


「仕方ないな」


そんなやりとりを見ていると、魔族第一主義のオカリナでも他種族とうまくいきそうな気がするが。


「女神よ。薬師が医師の神族を村に連れてくるらしいぞ」


オカリナは美味しそうにパンをかじるリィナに言うと、


「それはならぬ。妾以外の神族なんか滅んでしまえばいいのじゃ。同じ村に住むなど考えただけでも吐き気がするのぅ」


「なんでオカリナと同意見なのよ」


「他の神族なんか来たら唯一の神族である妾のレア感がなくなってしまうではないか」


「ごめん。結論が同じでも理由が全然違ったわ」


オカリナは魔族第一主義。リィナは身の保身である。


そんな私の心情を知らずとして、リィナが思いついたように言う。


「医師が務まる神族なんかあやつしかおらぬ。四聖の一人である救命のユリエルじゃ」


「なんかすごく有能そう!」


「妾の側近の一人で、どんな怪我や病気も言い当てることができるのじゃ」


「ん? リィナの側近? オカリナの四天王みたいなもん?」


「まぁそれに近いのぅ」


その話を聞いたオカリナが、


「上司がこんなポンコツなら安心です。神族といっても大したことありませんね。村に住むことにしぶしぶですが賛成しましょう」


「お主とてポンコツではないか」


「貴様。パンとジャムの恩を忘れたのか!」


「さっきのは、神へのお供物ではなかったのか?」


「違うわ! 大体そのユリエルだが、怪我や病気を言い当てるだけではないか!」


「なんでも治せたら妾の立場がなくなるではないか」


「四天王みたいに優秀な奴はいないのか?」


「四天王の優秀さは認めるが裸ではないか!」


「ぐぬぬ。ちなみにその四聖は服を着ているのか?」


「もちろんじゃ!」


ポンコツ二人の不毛なやり取りを聞いて、何故か平和を感じた私なのであった。




「さて、静かになったわけだけど」


オカリナが紅茶の新しいレシピを考え、リィナが楽して食べていく方法を、それぞれ自室で考えているためリビングは静まり返っている。


私はこれからのことを考える。


病院か診療所を建てて欲しいし、この山積みにされた書類の仕分けをしてくれるような事務員が欲しいなぁ。


てか、私って在宅ワークが基本じゃん。


これが姫様というか村長の仕事だというのなら、せめて役場みたいのを建築してもらって、仕事とプライベートを分けたいなぁ。


と思ったりもしたので、|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》に相談も含めて一人で行くことにした。


「姫様。お仕事の依頼ですか?」


エルフの兄妹であり、|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》の管理をしてもらっているオリンとヴィオラが私を見るなり頭を下げて来た。


「そう。仕事の依頼をしたいんだけど」


私は要望を話したら、


「では、診療所の建築と、姫様直轄の事務員、あと姫様の職場を作る依頼を受け付けました」


「ちなみに職場の希望なんだけど」


私はかつて勤めていた雑居ビルみたいなのを作られても困るので先に言っておこうとしたのだが、


「姫様の職場。もちろん城ですよね?」


「城?」


予想の斜め上すぎる答えが返って来た。


「姫様といえば城だと思いますが」


「いや、仕事をする場所が欲しいだけなんだけど。城だったら住まないとダメじゃない?」


「それは当然です。むしろ姫様が現在平屋に住んでいることの方が違和感あります」


確かにどんな世界でも、姫様と呼ばれる者が平屋でシェアハウスをしているのは私くらいしかいないだろう。


違うのだ。私は在宅ワークをしたくないだけなのだ。平屋から城になっても敷地面積が広くなっただけでは意味がないのだ。


「私は仕事を終えて、帰りがてら買い物したり、たまには酒飲んだりして寄り道したいのよ。わかる?」


「それは庶民の楽しみであって、姫様がすることではない気がします」


ここで姫様扱いが足枷になるとは!


そうか。私が姫様兼村長をしているからこうなるんだ。姫様専任なら、城で自由に食っちゃ寝できるはずなのだ。


村長を誰かに丸投げして、診療所だの事務員だの任せればいいんだ。


そしたら、村人から姫様扱いをされてスローライフを送れる。


第二の人生設計完璧じゃない。


「なるほど。姫様のお考えをお察ししました。オカリナさんの言う通り、村一つでは満足しない。やはり世界の支配者になられるおつもりなんですね?」


「え?」


「村をやがて国の規模にし、いくつもの国を束ねる姫になりたい。そういうことですね? つまり今は村長ですが、やがて国王に昇進。それならば俺の妹、ヴィオラを推薦します。身内贔屓ですが優秀です。この|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》は俺一人で管理して見せましょう!」


いや、やっぱりいいやって言えないやつじゃん!


「では早速、村役場を作りヴィオラに働かせます。姫様は城ができるまで、自宅で決済をお願いします!」


いや、その役場を私のために建ててほしいんだけど。



私の願いが通じることもなく、翌日からいつの間にかテーブルに山積みにされていた書類が、今度はヴィオラの手によって山積みにされる生活になるのであった。

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