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姫様、最後の一人は「服を着ている」ことが採用条件です

「姫様の人望により火、水、土の四天王がそろいました。これによりいつでも他国に宣戦布告出来るようになりました。いつでも御命令下さい」


翌日の朝、起きたばかりだというのに物騒な話をし始める悪魔大元帥オカリナ。


気のせいか背負っている鎌が一段と輝いて見える。


だが、私は思う。


四天王はインフラ要員としてはチートレベルで間違いなく優秀だが、村の外に出たら間違いなく通報されるレベルの変態である。


鉢合わせした瞬間に発狂すること間違いなしだろう。たまに村から悲鳴も聞こえるし。


「四天王は外に出しちゃいけないよね」


つい口に出してしまった。


「さすが姫様。四天王はまさに人間にとって厄災です」


「多分、勘違いしてそうだけど、とりあえず村が豊かになるまでおとなしくするわよ」


「かしこまりました。しかし出陣の際はまず私にご命令を!」


状態異常の効果をつけられるとはいえ、1のダメージしか与えられないのに、世界征服のやる気は十分。


一方、私は領土拡大は避けて、働かなくても、のんびり暮らすためのやる気は十分。


この噛み合わない二人の生活は今日も始まるのであった。


「そう言えば、三人は知ってるけど最後の四天王っているの?」


今まで会話にすら出てこなかったから、いるのかも謎だった。


「かつて最後の四天王の席を二人が争っておりました。でもこの際、姫様が選ばれても良い気がします」


「ちなみにどんな人?」


「一人は風のウィンド。奴の起こす竜巻は全てを吹き飛ばしますが、服を着ております。しかし、雷のボルトは科学技術とかいうものに専念して戦闘能力はありません。しかし全裸です」


「風のウィンド一択じゃないの? でも科学技術も捨てがたいなぁ。ようするに文明だよね」


「姫様。服を着てるかどうかで判断してませんか?」


「そこが一番重要じゃない?」


「私も服は着た方がいいとは思いますが、コスチュームは統一すべきかと」


「全裸で統一させてどうするのよ」


そんなやりとりをしていると、


「すみません。大変失礼とは承知ですが、女神リィナ様はおられますか?」


村娘が我が家を訪ねて来た。


「リィナなら寝てるけど、どうかしたの?」


「これは姫様。大変失礼しました。実は父が仕事中に怪我をしまして、もしかしたら治せないかと思いまして」


「リィナに治せるのかしら?」


「噂によれば神に祈れば願いが通じる、と聞きまして」


「アレに祈っても通じるのかしら?」


とりあえずリィナを起こしてくると、


「神の眠りを妨げるとは罰当たりもんじゃぞ」


文句を言いながらあくびをかくリィナ。どこから見ても神らしくない仕草である。


「もう昼前だ。この際永久に眠らせてもいいんだぞ?」


「妾じゃって一生懸命働いておるのじゃ。コソコソ村人に接したり、ミナエの側でくっちゃべってるだけのお主と違ってな」


「ぐぬぬ」


悔しがるオカリナをよそに、


「女神リィナ様。怪我をした父の治療をお願いします!」


「ウム。ではこれを飲ませると良い」


リィナは小さな袋を村娘に手渡すと、


「ありがとうございます! これはお布施です」


「ありがたく頂戴しよう」


深く頭を下げて家を出る村娘。


「今の何?」


彼女がいなくなって私は聞くと、


「妾は神じゃからな。信じるものは救われるのじゃ」


胸を張るリィナ。


「いや、そうじゃなくて何を渡したの?」


「ただの豆じゃ。食べてしばらくすると治ると噂が流れてのぅ。たまに欲しがりにくる者がいるじゃ」


「それってただの自然治癒じゃない。しかもお金とってるの?」


「お布施じゃから問題なかろう」


「問題しかない気がするわ。とりあえず、この村に病院が必要だなぁ」


「お主は妾が考えた折角の仕事をつぶすつもりか!」


「ただのインチキ商売じゃない!」


でも私は病院には通う専門だし、そんな知識ないしなぁ。医学ってこの世界どれくらい発達してるのかしら?


私は家を出て、村人に聞いてみることにした。


村人といっても元々は盗賊団だ。村の設立にあたり村人として扱うことにしたのだ。


だが昇格(?)したことにより彼らも後ろめたいものがなくなったのか、地元から家族を呼び寄せる者が多数いた。さっきの村娘も呼び寄せられた一人なのである。


「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」


通りすがりの男に声をかけると、


「これは姫様、挨拶が遅れ申し訳ございません!」


持っているものを地面に置き、直立不動で敬礼をされる。


「いや、そんなにかしこまらなくていいんだけど」


「でもオカリナさんに姫様を世界の神だと思って接しろと言われてますので」


何その洗脳教育みたいの。


「まぁいいわ。医学ってどれくらい発達してるのか聞きたくてね」


「お医者様は大きな街にしかおりませぬ。しかも高額のため王族や貴族しか診てもらえませぬ」


思ったよりも深刻そうだ。


「あとは治癒師という者がおります。魔法で怪我は治せますが病気は治せません。逆に薬師は病気は治せますが怪我は治せません」


「へぇ。この世界、毒キノコやしびれ草があるくらいだから、薬草とかポーションがあると思ってたわ」


「近い物はこの村にあります。女神の豆ですが」


嫌な予感がして来た。


「神を信じて食べると徐々に怪我や病気が治っていくそうです。少々高いですが」


「ちなみにいくら?」


「一週間働いた分くらいですかね」


話を聞いた後、急いで家に戻ってリィナに、


「あんた何、善良な村人から金貨巻き上げてんのよ!」


と、村人に返金させたのは言うまでもないのであった。

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