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幕間 追放されし第十三王子の息子

 消えたはずの”花”の動きを感じる。


 全国に七つの支配都市を置く巨大王国ダンデライオンの王都。その城の中には、七つの都市を統べる王族たちの議席と、王国に残り「元帥」として国を導く四つの座席が用意されている。


 全部で十一席。そこに加えて、絶対的に平等ではない真の主の玉座が一つ。ここに座る王の座席を含め、全部で十二席の座席が存在する。


 ——王国に十三番目が誕生した時、異端なる災いを呼び寄せる。


「古くからの言い伝えの時が、来たとでも言うのか......」


 王国の神ソールシアの敬虐な使徒でありながらリアリスト。国を導くには神の言葉だけではなく、現実を見る必要がある。


 その信念を胸に抱くは、玉座に座る大王。その名をロード・サウルギア・ダンデライオン。先代から引き継いだ玉座に座して、ちょうど十五年ほどだろうか。


「ロード。どうされました?」


「先代はなぜ......」


「なぜ?」


「伝承を呼び寄せたのかと、思ってな」


 自分を含めて、十三人の王族による玉座を巡った争いがあった。


 早々に何人かは白旗をあげ、激烈な争いは兄弟の間で死者を出す寸前まで行ってしまった。


 結局のところ、第一王子だったサウルギアが王となったものの、その禍根はまだ癒える段階に達していない。


 特に十三番目。幽閉されていた”存在しない王子”には、どう恨まれているか。想像に容易いだろう......。


(その十三番目の息子が、王立学院に......)


 辺境の村で過ごす十三番目を監視し、その息子が王立学院に入学したことは知らされていた。


 しかも恐ろしいことに、一部突出した才を誇ると話題になっている。まだ直接、見たわけではないので判断はできないが、その一つ一つの噂がどうしても結びついてしまうのだ。


 ——長年の平和を打ち壊すという厄災。それが、十三番目によって引き金を引くと。


(王国に伝わる伝承。くだらないと思っていたが、偶然にしては......考えを巡らせるほど、そうとしか思えぬ)


「ロード。第六都市から報告が入りました」


「ぬっ。そうか、分かった。まとめておいてくれ」


 秘書に報告書をまとめさせ、自身は執務室に座る。玉座に座る王といえど、普段は薄暗い部屋の中で書類に追われる作業だ。


(最近、目が悪くなってきたか。ふっ、平和の余韻に浸かりすぎたようだ)


 先祖代々から受け継がれてきた恒久的な平和。王国ダンデライオンの伝統は、今の自分に繋がるまで脈々と受け継がれてきた。


 その中には、まるで崩壊を願うような不吉な予言も混じっていたが......。


「予言......伝承。ふっ、履き違えるな」


 惑わされてはいけない。十三番目の王子が生まれてからずっと平和だった。その王子の息子が生まれたからといって、何が起こるというのか。


 小さく首を横に振る。肩の古傷が痛み、思わずしかめっつらをする。少し間を置いて、椅子の向きを変えて窓の外。何重にも魔術障壁の貼られた窓を通して、城下町の景色を見下ろす。


「.......『歴史には敬意を持て。その重みを思い知れ』」


 玉座を受け継ぐときに先代から聞かされた、(まじな)いのような言葉だ。


 恐らく込められた願いは「この国は力強く積み重なっている」という、並大抵のことでは揺るぎはしないということだろう。


 全く、その通りだと、フッと小さく笑って元の姿勢に戻る。


(もし仮に、例の十三番目が『災いを呼ぶ存在』だと発覚したなら。俺は全力で、その芽を引き抜いてやる)


 王国の安寧を脅かす影は必要ない。たとえどんなに善性があれど、その存在が災いを呼ぶ火種となり得るなら......。


 ロード・サウルギア・ダンデライオンは、まだ誰にも打ち明けることのない、この密かな不安と不確かな疑念を、そっと胸の内に仕舞い込んだ。わずかに湧き上がる「拭いきれない予感」と共に。



 ——かくしてその”予感”は当たっていたのだろうか。


 少なくとも大王は、直接その存在を認知したわけではない。だから、彼は知らないのだ。


 ”十三番目”の息子は”勇者の光”を受け継いでいることを。その存在はすでに、災いの種と触れてしまっていることを。


 そして......”十三番目”は()()()()()()


 ......昔日からの呼び声を無視していけなかったのだ。


【時計の針を戻した先で待っている。回れ、回れ、右に向かって】


 何があっても、どんな不幸が起ころうとも、進んでしまった時間は戻せない。


 ”声の主”は、たったそれだけのことを胸に刻み続け、”光を失った両眼”をそっと閉じるのだった。


 絆も記憶も愛情も......何もかも、全てをかなぐり捨てた果ての先で。

第1章〜2章を読んでいただき、ありがとうございました。

いかがでしたか?面白いと思った方は感想や、ブックマーク登録、評価などしてくださると今後の励みになりますので、よろしくお願いします!!


・次回投稿について

次の第3章は書き上がっているものの、まだ完全に手直しをしていません。なので、いつ投稿できるかわかりませんが、1月以降を目安に考えています。

そもそも出来具合に満足言っていないので、修正をしたいのですが......仕事が年末前後でかなり忙しく執筆活動に時間が取れません。仕事だけじゃなくプライベートも人付き合いなりなんなりで、最近は時間確保が難しく...。

とりあえず1月になったら「活動報告」なりで進捗を報告させていただきます。



・この作品を描いた理由

さて、少し振り返りを話しましょうか。

なぜこんな作品を書こうと思ったのか、その経緯について。


まず第一に、私の代表作「アンチテーゼ/アンライフ」は異世界転生ものではあるものの、完全オリジナルで何かの作品を踏襲したわけじゃありません。

なので常々「王道でテンプレ要素のあるストーリーが書いてみたいなぁ」と思っていました。しかし、それは「アンチテーゼ/アンライフ」では書けない話です。

なぜなら王道要素として親しまれるのは「勇者」や「魔王」の話で、あの作品にはその要素がカケラもありません。

ではどうするのか?となった時、「新作を作ろう!構想は......よくある『勇者が転生した話』で!」「独自要素で『羊飼い』という設定を入れたる!!」「『羊飼い』の要素を入れるならアレコレ......」と思って次々と構想が固まっていきました。

そして明確な「敵組織の存在」を用意し、こうして世に送り出したというわけです。

ただ、書いててやはり王道から少し離れつつ、王道要素を取り返すように反復横跳びする状態が続いている気はしますが......笑。


タイトルにもあるように「羊飼いの元勇者が”花”を導くストーリー」が、この作品の流れです。

異世界物には「バトル」がつきものですが、私の作品はバトル要素をそこまで長く書きたいとは思ってません。できるだけあっさり済ませ、人と人のストーリーを描くのが好きなので(これは「アンチテーゼ/アンライフ」もそうですが)、キャラに魅力を持たせた話を書くようにしています。

そして、テンポよく進めたいので、基本的に主人公「エディデア・ダンデライオン」は最強です。展開によりわずかな苦戦を用意し、深みを出していきますが。

彼が苦戦するとしたら、それは「彼が中心になる話が来た時」です。それまでは最強です。


また、「世界の秘密と勇者が転生した謎」に迫るのも作品の魅力です。


今回、明らかになった「ナイン・オブ・ブレード」とは一体、なんなのか。

今回、現れた二人の魔神を操るように言葉を投げかけた【】で話す存在は何者なのか。

勇者の生まれ変わりは魔神になることを求められているのか。


散りばめた謎を徐々に、明確に明らかに、答えを用意してあるお話です。

主要なキャラの「名前」にもそれぞれ意味があり、主人公「エディデア・ダンデライオン」や「シオン・ブラックローズ」などもその一例です。例えば名前に「花言葉」が隠されています。「ブラックローズ=黒いバラ=花言葉」という感じで、キャラの要素は名前に含まれているのです。

ちなみに「シオン・ブラックローズ」に込められた意味は花言葉「憎悪」「あなたは私のもの」「執着」などがあります。彼女の性格に加えて、彼女の家や生き様、家族からの扱いが全て「花言葉」に集約されています。

そういう意味でも、主要なキャラには名前を大事に名付けています。

あとお遊びだと「ショコラルテ」は「ショコラ」をもじったもの。「イブリス・ブレッド」はそのまま「ラテン語のイグニスをもじった言葉」と「パン」です。


こんな感じで、今後も名前遊びでキャラを出し続けていきますので「このキャラはこういう意味なのか?」と考察すると、より作品が楽しめるかもしれません......よ?


なのでそういった、謎解き要素(?)を楽しんでいただけるように頑張ります。


・最後に

次回の更新日はまだ未定ですが、近いうちに必ずあげたいと思います!

なので首を長くして、温かい目で待っていてください。

それではみなさん、年明けを目安に会いましょう。さようなら〜!


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