第22話 エピローグ 健やかな花の匂わせ
——王立学院にて。
父からは家名を。母からは特徴的な髪型を受け継ぎ、自らはそれに甘んじないで鍛錬に励んだ。
可憐さを磨く。健やかさを疎かにしない。そして彼女が行き着いた答えは、地道に続ける肉体改造。それが導いた結果なのか、先の前期試験ではグループ二位の成績を獲得した。
「一位ではないのが悔しいですが、仲間のマッスルズたちと精一杯挑んだ証。素直に喜びますわ〜!」
成績を確認した彼女は、その喜びを噛み締めながら廊下を歩く。一人で高笑いする"縦巻きロールの髪型"を揺らす様は、すれ違う生徒たちの瞳をかっぽじって注目を集めている。
それに気づきそっと口に手を当てて、何事もなかったように歩き出す。やがて冷静さを取り戻し、試験の出来事を振り返ると、思い出してしまった。
(そういえば"あの少年"は......思い出すとなぜだが、虫唾が走りますわね)
思い出す。前期試験に現れたイレギュラーと、たった一人で対処した”あの少年”のことを。
......目撃した出来事は、試験の監視をしている教師に口止めされている。
しかし、その教師たちも全てを把握しているのではない。
ブラックローズの娘が奮闘した後、ただ一人、意識を保っていた自分は、”謎の二人組”に襲われた。
そして消えゆく意識をギリギリまで保ちながら、事の顛末を見守っていた。わずかで朧げな記憶だが、ある一人が、圧倒的な力で敵を消し去ったのだ。
最後に見た、あの”七色の光を放つ彼の後ろ姿”は、当時の自分の胸の内に、煌めくような感情を抱かせた。
それを思い出して......ひどく憤慨しそうになる。
あの時の自分はどうかしていた。自分以上の”美”が、そこらに転がっているとは到底、認められないからだ。
(試す必要がありますわね)
許せないという気持ち。そして、あの少年の抱えている秘密を暴いて、自分の抱いた感情が間違いだと正すための制裁。その決意を固めた。
王立学院で認められている、個人同士の模擬試合。それは頻繁に生徒の間で行われていて、つい先日は「特殊な血族」と誰かの戦いがあったと盛り上がりを見せていた。
しかし、彼女はそんな試合など興味が無い。見ていてもつまらない、程度の低いお遊びをするくらいなら、自分を鍛え上げるのが一番だと思っているから。
(我が従者のマッスルズに頼んで......いえ、それは大人気ないですわ。あの情報屋と取引でもするとしましょうか)
段取りを企てる。必ずあの少年の秘密を暴いてやるのだと、少女は口の端を小さく釣り上げ、内に秘める野心をあらわにするのだった。
次回で第二章 最終話です。
あとがきで色々とお伝えすることがあるので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。




