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第二十話

「魔法を習得する前に、まずは“癒しの力”の効果を聞かせてもらいたい」


 エリアスの言葉に同調するように私も頷くと、妖精さん達が「まかせて〜!」と声を揃えて口にした後言った。


「“いやしのちから”は、はなしたとおり、め……、じゃなかった、とてもたいせつなちからなの〜」

「わたしたちはそんなにたくさんのまりょくはあげられないけど」

「ひとやだいちにいやしをあたえることができるの〜」

「人だけでなく、大地に?」


 驚く私に、彼らはコクンと頷き、「たとえば〜」と頭を傾けて例を上げていく。


「かわいたじめんをおはながそだてられるよう、ひよく? なちにする、とか」

「おはなのせいちょうをうながすこともできるよ!」

「あとは、おはなをながくもたせたり」

「アリスのすきな“いけばな”のために、おはなをみずきりしたり」

「いちいちとりにいかなくても、おへやのなかでおにわのおはなをしゅつげんさせることもできるよ!」

「あとはあとは」

「ちょ、ちょっと待って! ストップ!」


 彼らの話が更に続きそうだと慌てて制止の声を上げると、彼らはキョトンとしたように話をやめた。

 それを見たエリアスが、少し息を吐き言う。


「つまり、“癒しの力”と一概に言えど、クレールと同じ力も有しているということか」

「「そー!!」」

「クレールにわたしてるまほう、アリスもぜんぶつかえるよ!」

「そ、そうなの……?」


 それってもう、クレールの祝福の力を実質超えているということよね……? と冷や汗が流れる私に反し、エリアスは冷静に口にする。


「では、表向きはクレールと同じ力、という扱いで公表出来るな」

「うん! それがいいとおもう〜」

「アリスのちから、とくべつだから」

「なるべくかくしたほうがいいかもって、め……、ううん、わたしたちでおはなししてた〜」


 妖精達が慌てて女神様という単語を隠す度、ヒヤヒヤとするものの、多分エリアスは内心気付いているのではないかと思う。


(“癒しの力”について、何か思い当たる節があるようだし)


 だから彼は、幼馴染で王族であるエドワール殿下にさえも伝えない選択肢を選び、こうして私のために忙しい時間の合間を縫ってくれているのではないかと思うと、彼は本当に良い人だと思う。

 そんなことを考えている私をよそに、エリアスは次の質問をした。


「君達はあまり力を与えてあげられないと言っていたが、もし、最悪の場合アリスの魔力が暴走する、なんてことがあったら、“癒しの力”の威力は、具体的にどんな力になるんだ?」


 花の妖精達はその言葉に顔を見合わせ、うーんと口にしてから言った。


「いやしのちからのまりょくがぼーそーすると」

「たしか……」


 どうだったっけ? という表情をする二人の妖精の間から、黄の妖精があっ、と声を上げ口にした。


「“えいえんのねむりにつく”っていってた〜」

「「!?」」


 私達が驚き言葉を発せずにいるのに対し、赤と青の妖精が慌てたように言った。


「そ、それはさいあくのばあいでしょ!?」

「だ、だいじょうぶだよ〜、ぼくたちには、そこまでのちからはないよ! ただ、いやしのちからはすこしおおきなまほうだから、きをつけてつかってね〜」

「……エリアス、私一気に自信がなくなったのだけど」


 小声でそう彼に向かって話しかければ、彼は慌てたように小声で返した。


「ま、まあ、大丈夫だ。最悪の場合のことを聞いただけで、君が制御出来るようになればそういうことは起こらない」

「本当に?」


 心配になって恐る恐る尋ねれば、彼は息を呑んだようになぜか口元に手を押さえながら、モゴモゴと口にした。


「だ、大丈夫だ。俺が、ついている」

「……そうね。エリアスがいるものね。ありがとう、頑張ってみるわ」


 そう行って笑みを浮かべれば、彼はぎこちなく頷いた後、妖精達に向かって声をかけた。


「ほ、他に何か、知っていることはあるか?」

「しってること?」

「そうだな〜……」


 彼らはうーんと考えた後、閃いたように口にした。


「いやしのまほうは、まものにもきくよ!」

「「魔物!?」」


 私とエリアスが驚いていると、彼らは顔を見合わせて言った。


「そう〜、なにかとぶっそうだっておはなししてたから」

「アリスにも、まものがちかよってくることがあるとおもうけど」

「わたしたちがいるかぎり、まものはだいじょーぶ! おいはらえるよ!」

「追い払える……」


 私の呟きに、エリアスは驚いたように口にした。


「癒しの力でも、魔物を追い払えるのか?」

「そうだよ〜」

「いやしのちからは、どちらかというとこーげきするんじゃなくて」

「まもののせんいをそうしつさせるこうかがあるよ〜」

「戦意を喪失させる? それは、どうやって」


 思わず問いかけた私の言葉に対し、青の妖精が答えた。


「おはなのかおりをかがせるんだよ! そうしたら、まものもおとなしくなってじぶんからかえっていくよ」

「「ねー」」

「……それはつまり、花の香りが名前の通り魔物にとっても癒しとなる、ということか」

「「「そゆこと〜」」」


 エリアスの言葉に頷いた妖精達を見て、私は声を上げる。


「戦う前に戦意を喪失させるって、何だか平和的ね」

「あぁ。君にピッタリだ」


 そう言って笑う彼の表情に思わずドキッとしつつ、誤魔化すようにして声を上げた。


「そ、そうね、その前に魔法を使えるようにならなければね。魔物から自分で身を守ることが出来るのは、良いことだと思うもの」


 そう言ってギュッと拳を握り、その手を見つめる。


(私の魂にソールの魔力が宿っていて、それが魔物を惹きつけてしまうのなら、エリアスに頼らず一人で自衛出来るようにならないと)


 無力だと思っていた私に宿ったこの力を、どうにか使えるようになりたい。

 対魔物に使えるのなら、なおさら。

 そう思った私は、エリアスと妖精達に向かって尋ねた。


「では、具体的に魔法を使えるようになるためにはどうすれば良いの?」


 そう尋ねた私に対し、彼らは皆一様に首を傾げた。


「うーんと……」

「ことばにしにくい……」

「め……、じゃなかった、クレールとかは、つよくおねがいするんだって」

「お願い?」


 私が尋ねたのに対し、エリアスもまた口にした。


「そうだな。大体そんな感じだ。というか発動する時にあまり深く考えたことはなかった」

「そ、それを教えてくれるのではなかったの?」


 思わずそう口にしてしまう私に対し、彼はハッとしたように慌てて言った。


「あ、い、いや、そうだな……。俺に祝福を与えてくれた風の妖精は特殊、というか力が強いということもあって、君のように、妖精とのコミュニケーションを取って力を借りたことはないな……」

「……忘れていたわ。貴方、天才だったものね」


 思わずそう呟いた私に対し、彼はうっと喉に詰まらせながらも反論した。


「何だその目は」

「いいえ、何でも」


(ダメね。これは自分で習得するしかなさそう)


 そう諦めモードになった私の考えを察したらしい。

 彼はそうだ、と口にすると、不意に私の手を取った。


「!?」


 それに驚く私に対し、彼は告げた。


「そういえば、初歩の段階で行う方法があった」

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