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第五十六話

このお話で一区切りとなるため短めです。

(次話はその分長めです)

『今こそ失われた歴史のやり直しの時。

 今度こそ道を違えることがないよう、花の女神の名の下に選ばれし者達に祝福を授けましょう』


 女神様がそう口にした刹那、ある異変が起こる。それは……。


「「わっ……!?」」


 私は自分とエリアスとを交互に見、エリアスは私を凝視する。

 それは、天から真っ直ぐと、突如私達の身体にそれぞれ違う色の光が降り注いでいるからだ。


(っ、もしかしなくてもこれは……!)


 女神様の言葉を思い出し、ハッと空を見上げる私達に女神様の声が続く。


『魔物達と向き合った、勇気ある若者達五名に祝福を。

 一人目は、エドワール・アルドワン。

 かつての賢者であり、王家の血筋を継いだ子。

 “失われた歴史”の存在を否定することなく受け入れることの出来る貴方こそ、国を統べる者に相応しい。

 よって、結界の神による祝福を授けましょう』


 女神様の言葉通り、王太子殿下には殿下の扱う結界の魔法と同じ虹色の光が一際強く天から降り注ぐ。

 女神様はそのまま順に口にしていく。


『二人目は、ヴィオラ・ノルディーン。

 妖精からも認められた使い手でありながら、決して驕り高ぶることなく誰にでも優しく接することの出来る聡明な貴女にこそ、この力は相応しい。

 よって、光の神による祝福を授けましょう』


 そうしてヴィオラ様には、金色の眩いばかりの温かな光が降り注ぐ。


『三人目は、フェリシー・バシュレ。

 運命に翻弄されながらも前を向き、己の意志を貫くことの出来る強い生命力と情熱を持つ貴女を応援したい。

 よって、火の神による祝福を授けましょう』


 フェリシー様に降り注ぐ薄い赤色の光に、フェリシー様が驚いているのが遠目からでも分かる。


(フェリシー様にとってこの祝福が、彼女の役に立ちますように)


 そう祈らずにはいられず、心の中で祈っていると、順番は私の隣にいたエリアスに回ってきた。


『四人目は、エリアス・ロディン。

 貴方は孤独に打ち勝ち、そして己の守りたいもののために我が身を顧みずに戦う強い心を持っている。

 だけど忘れないで。貴方の力は、決して貴方の心まで凍てつかせるものではない。

 貴方の強い力は、愛し愛されるためにあると』

「!」


 エリアスと目が合い、私は笑みを浮かべ頷いてみせる。

 そして、女神様の声が響いた。


『氷の神による祝福を授けましょう』


 エリアスに降り注いでいた氷色の光が、出現した氷の結晶と共に一際強く輝きを放つ。

 エリアスは驚いているけれど、私は嬉しかった。

 彼の頑張りが、神にも認められたということだから。

 自分のことのように心からの嬉しいという感情が涙となって溢れたのを拭っていると。


『最後の一人は、アリス・ロディン』

「!」


 私の番となり、空を見上げる。

 女神様は柔らかな声で告げた。


『貴女は自らの力で幸せを掴み、人からも妖精からも愛される存在となった。

 その姿はまるで、見ているだけで心が癒され凛と咲き誇る花のよう。

 そんなあなたには、花の女神である私から祝福を授けましょう』

「……!」


 天から降り注いだ光がより一層強く輝きを放ち、桃色の花弁と共に降り注ぐ。


(温かい……)


 まるで包み込まれるような温かさを感じてそっと目を瞑った私の頭に、女神様の声が届く。


『たとえあなたから姿は見えなくても、いつも天から見守っているわ』

「っ、お母様……」


 ギュッと胸の前で手を握り、はらはらと落ちる涙をそのままに言葉を紡ぐ。


「ありがとう、ございます……!」


 女神様は私の言葉に小さく笑ってみせてから、皆に届く声で言葉を発する。


『他にも祝福したい子達がいるけれど、妖精は多種多様で神が存在しない力もある。

 だからその子達には私から、妖精によく伝えておくわね』


 女神様の言葉に、リンデル夫妻やリオネル様、神々から祝福を受けたエリアスやフェリシー様、ヴィオラ様、そして私の所にも妖精が光を纏って現れる。


「アリス、おめでと〜!」

「めがみさまとおそろい!」

「エリアスもおめでとー! かぜのよーせいもこうみえてよろこんでるよ!」

「ば、余計なこと言うな!」


 光の中から聞こえる声に、私とエリアスは顔を見合わせクスクスと笑う。

 そして頷き合うと、彼らに向かって二人揃って口にした。


「「ありがとう」」

「「「「どーいたしましてー!/あぁ」」」」


 妖精達が返事を返してくれたのが聞こえたように、女神様は高らかに告げる。


『改めて、花の女神の名の下に告ぐ!

 かの者達が導く国の未来に栄光と祝福を……!!』


 そう女神様が宣言した刹那、色とりどりの花弁が空から降ってくる。

 そして、人々の歓声と笑顔が溢れる中で、最後に届いた言葉は。




 ―――アリス。あなたの人生に、幸せという名の花が咲き続けますように……















これにて魔物との決戦編が終了です!いかがでしたでしょうか?

次回、いよいよ最終編へと突入いたします。

そして、最終話まで残すところ後4話となった愛されない悪役令嬢の物語を、最後まで見届けていただけましたら幸いです。

引き続きよろしくお願いいたします。

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