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第四十八話

お待たせいたしました。

ついに、物語の真相編に入ります…!

短めです。

 ふわふわと、温かくてどこか懐かしい心地の中で目を覚ます。


「ん……」


 ゆっくりと瞼を開け、ぼやけた視界に映ったのは……。


「っ、エリアス!」


 その顔を見て、一瞬にして覚醒する。

 慌ててエリアスの身体を強く揺すると。


「……う……、アリス……?」


 閉じられていた瞼が開き、氷色の瞳が私を捉えて名前を呼んだ瞬間、感極まって横たわったままのエリアスに抱きつく。


「っ、エリアス……! 良かった! 無事で……!!」

「ア、アリス、苦しい……」

「あ、ご、ごめんなさい!」


 慌てて離れようとしたところで、それを許さないというふうに繋がれていた右手によってバランスを崩す。

 それを見て、私は涙交じりに笑って言った。


「……手、離さないでいてくれたのね」

「あぁ、もちろんだ」


 エリアスが微笑む。その笑みを見て、心から良かったと安堵していると、エリアスが身体を起こして辺りを見回した。


「無事だとは言ったが……、本当に無事なのか? ここはもしかしなくても」

「以前私が過ごしてエリアスが迎えにきてくれた、天界のお花畑よね……?」


 雲ひとつない青空と、太陽の光に照らされて輝かんばかりに咲き誇る、地面が見えないほどの花々が一面を覆う幻想的な光景は、まさに以前ソールに連れてきてもらい一ヶ月滞在した場所のようで。


(あの時はソールに連れてきてもらったけれど、今回の場合私達は魔力切れを起こして、空から落ちた。それってつまり)


「……もしかしなくても私達、死んでしまった?」


 思わず呟きエリアスと顔を見合わせた、その時。


「死んでねぇ。勝手に早とちりすんな」

「「……!?」」


 不意に訪れた、よく知る声の主に二人同時にその方向を見やる。

 そこにいたのは、久しぶりに見る人間の姿をしたソールと……。


「「っ……」」


 ソールの後ろから現れた神々しいお二人の姿に、思わず息を呑み目を瞠る。

 それはエリアスも同じだったようで、驚きすぎて声を出せない私達を前に、後ろから現れた一人の女性が声を上げた。


「ソール。そんな言い方はないでしょう? 人一倍心配していたというのに、素直じゃないのだから。

 ごめんなさいね、驚かせてしまって」


 そう言うと、女性はふわりと微笑んでから、ゆっくりと私の目の前まで歩み寄ってきて……。


「ずっと、会いたかったわ」

「!?」


 固まってしまっていた私の身体を、その女性に抱きしめられる。

 ふわりと鼻を擽ったのは、とても柔らかくてどこか懐かしい、お花畑と同じ花の香りで。


(私、この女性のことを知っている)


 直感的にそう思いながら、気が付けば口に出していた。


「……女神、様?」


 私の言葉に、彼女はそっと身体を離すと、私の肩に手を置きその瞳に私を映し出した。

 その瞳の色も、髪の色も、私と同じ色を宿したその女性は、目に涙を浮かべながら頷いた。


「えぇ、そうよ。私は花の女神。

 花の女神、フルール。そしてあなたは、花から生まれた私の大切な子。

 独りぼっちにしてしまってごめんなさい。

 ずっと……、ずっと、会いたかったわ」

「え…………?」


 一度に多くのことを言われすぎて、理解が追いつかない。


(今目の前にいる女神様は、花が大好きで、妖精さん達からも多分話に聞く女神様で、時に私を励ましてくれた女神様でもあって……、その女神様が実は花の女神で、私は花から生まれた女神様の子供……って)


「ま、待ってください!」

「!」


 混乱する頭で、咄嗟に女神様から距離を取り手を繋いだままのエリアスにしがみつくように身を寄せる。

 エリアスもまた戸惑ったような表情をしているのを見て、ソールが助け舟を出すように口を開いた。


「女神サマ、急にそんなこと言われてもアリスが困るだけだろ。

 ……神々のいざこざに巻き込まれて散々な目に遭ってんだ、一からちゃんと説明してやらねぇと理不尽だろ」


 ソールの言葉に、女神様は力なく笑う。


「そうね、ソールの言う通りだわ。

 ごめんなさい、私ったら気が急いてしまって。

 ……隣にいるのが、エリアス・ロディン……、氷属性の一族の末裔よね」

「は、はい」


 話を振られると思っていなかったのだろうエリアスが返答すると、女神様が「そう」とチラリと後ろにいるもうお一人の顔を見上げて言った。


「……何の因果かしら。先祖代々私達に仕えてくれている騎士が力を与えた、人間の家のその末裔の子が、何千年という時を経て私の子と結ばれるなんて、誰が予想出来たでしょうね」

「あ、あの……?」


 上手く言葉が聞き取れず聞き返した私に、女神様は「何でもないわ」と言うと、パチンと指を鳴らす。

 すると。


「「わっ」」


 ふわっとお尻が持ち上がったかと思えば、座り心地の良いお花の形をした椅子に座らされていて。

 そして、椅子より一回り大きな花を模った机の向かいには、女神様とソールも同様に座っており、女神様の後ろで一人だけ立っている方を見やると、女神様は肩を竦めて言った。


「気にしないで。彼、とても真面目だから常に騎士の役目を果たしてくれているの。

 それでは、改めてお話をしましょうか。

 この国の始まりと歴史を。

 それから、あなたをなぜ生んで、なぜ一人にしてしまったのかを。

 長くなると思うけれど……、聞いてくれるかしら?」


 女神様の言葉に思わずエリアスを見やる。

 エリアスが頷いてくれたのを見て、私も女神様に向かってそっと頷くと、女神様は「ありがとう」と困ったように笑ってから言う。


「まずは順を追って、この地と神々についてお話しするわね。途方もなく壮大なお話しになると思うわ」


 女神様はそう前置きをしてから、まるで遠い世界の御伽話のように語り始めるのだった。








次回の更新は、10/31(木)朝8時の予定です。

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