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プロローグ

第二章スタートです

 ルシアナはシアに変装し、ゴブリン退治のため、バルシファル、サンタ、カールとともに王都近くの葡萄園へとゴブリン退治に来ていた。

 ゴブリンの死体は、後で葡萄園を管理している者が燃やして肥料にするということなので、せめてゴブリンゾンビとして生き返らないように祈りの魔法だけ捧げる。当然、それはルシアナの役目だ。

 彼女が祈りを捧げると、周囲の土から光の粒が浮かび上がっては消えていく幻想的な光景が浮かぶ。


「相変わらず、シアちゃんの祈りは違いますね」

「あぁ、最初に見たときは凄い騒ぎになったからね」

「……ふん」


 サンタが褒めて、それを聞いたバルシファルが、モーズ侯爵領で向かう宿場町のことを思い出して面白そうに笑った。カールは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 そして、祈りが終わる。


「シア、お疲れ様」

「ありがとうございます、ファル様」


 そして、ルシアナは横にいるカールを見て尋ねる。


「どうでした? 私もなかなかのものでしょ、カールくん」

「大したことはないな。俺の知っている冒険者の方がもっとすごい」

「あら、そうですか」


 そのような凄い冒険者がいるのなら、是非会ってみたいものだとルシアナは、皮肉ではなく本心で思った。


「そんなに凄い冒険者なのですか?」

「ああ、まぁ、いろんな意味で凄い女だ。命を救われたことがある」

「女性の方なんですか。もしかして、カール君はその女性が好きなんですか?」

「…………本当に、女はそういう色恋沙汰を話すとぐいぐい近付いてくるな」


 カールは肯定も否定もせずにため息をついた。

 だが、ルシアナは、きっとカールはその女性が好きなのだろうなと思った。


(……ってあれ? この流れ、どこかで)


 ルシアナが何かを思い出しそうになったが、何か引っかかる。


「シア、カール、次に行くよ」

「はい、ファル様」

「わかった」


 雑談の時間は終わりのようだった。

 その後も、ゴブリンを見かけては、バルシファルとカールが倒し、ルシアナが浄化し、バルシファルとカールが倒し、ルシアナが浄化し――と続けた。


「サンタさん、何もしてないですね」

「いや、シアちゃんを守ってるからね、俺っ!?」

「あ、そうでした」


 とはいえ、ルシアナはサンタに守られている自覚がほとんどなかった。

 それほどまでに、バルシファルは強く、そしてカールも――


「サンタさんより、カールくんの方が強いんじゃないですか?」

「ぐっ、確かに強いよ。うん、魔物相手だったり多対一の戦闘技術は経験不足だけど、たぶん、人間相手に一対一で戦えば、王都の剣術大会でも優勝できるレベルだと思うよ」

「確かサンタさんは――」

「……地方の剣術大会の準優勝」


 過去の実績を告げて、サンタが落ち込む。

 それでも、剣術はからっきしのルシアナからしたら、十分凄いのだけれども。

 最初はゴブリン相手に怪我したカールだったが、ゴブリンとの戦い方に慣れたのか、それ以降は一度も傷を負うことなくゴブリンたちを屠っていった。

 そして、無事、ゴブリン退治の依頼が終わった。


「ファル様、お疲れ様でした。カールくんも――はい、傷の治療しますから手を出してください、治療しますから」

「ああ、シアも浄化ありがとう」

「……俺はついでかよ」


 バルシファルが笑顔でルシアナを見て、カールはおまけ扱いをされたことで愚痴をこぼしながら、先ほど怪我をした腕を出す。

 ルシアナはカールの腕に回復魔法を掛けた。


「はい、治りました」

「なるほど、言うだけあって、回復魔法の実力もそこそこだな」


 カールは女性を褒めるのは苦手らしい。

 だが、ルシアナは特に嫌な気持ちになることもなく、どちらかといえば、少し生意気だけれどもかわいい弟のように思えて来た。


「どういたしまして。よく頑張って耐えましたね。偉い偉い」


 ルシアナはそう言って、カールの頭を撫でた。


「なっ、何をしているんだ、お前は」

「え? 何って……あれ?」


 何故か、ルシアナはカールの頭を撫でないといけないような気がした。

 一体何故か?

 それを考え、ルシアナはある事を思い出した。

 ルシアナは昔、カールらしき少年と会った記憶があることに。


「あれ? カールくんって、もしかして、騎士団にいました?」


 その瞬間、カールの表情が変わった。

 一瞬驚いたかと思うと、目を細めて言う。


「……貴様、何故俺が騎士団にいたことを知っている」


 それについて、ルシアナは答えられない。

 何故なら、かつてカールに会ったのは、修道女のシアではなく、公爵令嬢のルシアナだったから。


 それは、九年前――ルシアナが生まれ変わって初めて王城に招かれた日のことだった。   

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