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阪神・淡路大震災の1年以上前に見た幻想的な出来事

作者: きつねあるき

 1995年(平成7年)1月17日5時46分に、阪神(はんしん)淡路大震災(あわじだいしんさい)起きました。


 統計(とうけい)では、犠牲者(ぎせいしゃ)6434名の大災害でした。


 淡路島北部の北緯(ほくい)34度36分、東経(とうけい)135度02分、深さ16kmを震源(しんげん)とするマグニチュード7,3の地震(じしん)でした。


 この地震により、神戸と洲本(すもと)震度(しんど)6を観測(かんそく)したほか、豊岡(とよおか)彦根(ひこね)、京都で震度5、大阪、姫路(ひめじ)、和歌山などで震度4を観測するなど、東北から九州にかけて広い範囲(はんい)で有感となりました。


 また、この地震の発生直後に行った気象庁地震機動観測班による被害状況調査の結果、神戸市の一部の地域等が震度7だったそうです。


 阪神・淡路大震災が起きたのは、令和3年から数えると26年前の事になります。


 関西地方では、阪神・淡路大震災が起きる前に、その予兆(よちょう)やら不思議な体験をされた方も多いと聞きます。


 大震災前の地震雲(じしんぐも)は、ネットにも随分(ずいぶん)()っていました。


 自分も、少なからずその1人ではあった訳です。


 それでは、その当時のエピソードを書いていきます。


 その出来事があったのは、忘れもしない1993年(平成5年)8月29日の事でした。


 その当時、自分は友人の1人と、京都、大阪、神戸に、何回かフリーで旅行に行っていました。


 フリーの旅行は、3泊4日でした。


 旅行に行く為に、夏休みは週払いの建築業のバイトを集中的に入れていて、バイト代のほぼ全額を旅行に()てていました。


 東京から新大阪までの新幹線の往復切符(おうふくきっぷ)と、京阪神ミニ周遊券(しゅうゆうけん)という切符を買って、あちこち観光に行っていました。


 新大阪から、徒歩10分位にあるホテルを拠点(きょてん)として、時間の(ゆる)す限り朝から晩まで、ガイドブックと時刻表を持って、観光や食べ歩きをしていました。


 旅行の一番の目的は、グリーンスタジアム神戸でオリックス戦のナイターを見る事でした。


 ナイターは試合だけでなく練習も見ていたので、球場に着いた時はまだ日差しがありました。


 それ以外の日中は、(ひま)を持て(あま)してしまうので、適当に周辺を観光していました。


 適当といっても、友達と意見が一致する場所が決まるまで、時間が掛かる事もありました。


 前日に観光地を決めて、当日の夜に翌日の観光地を決めていました。


 移動にも時間が掛かるので、京都方面1日、大阪方面1日、神戸方面1日という感じで、観光に行く場所を決めていました。


 その日は、昼頃に有馬温泉に着くように電車を乗り継いでいました。


 新大阪駅から京都線で三ノ宮(さんのみや)駅、三宮(さんのみや)駅から神戸市営地下鉄で谷上(たにがみ)駅、谷上駅から神鉄有馬線で有馬口(ありまぐち)駅、有馬口駅から神鉄有馬線で有馬温泉駅…とまあ、だいたい1時間半は掛かったと思います。


 有馬温泉というと黄金の湯が有名ですが、周辺には太閤(たいこう)像とねね像があり、多くの観光客が銅像の写真を()っていました。


 太閤像とねね像は、撮影(さつえい)待ちの方が多くいたので、写真は(あきら)めて温泉に直行しました。


 温泉に()かると、浴槽(よくそう)の中に細かい粒子(りゅうし)がキラキラとしていました。


 時間を掛けて来た甲斐(かい)があり、すっかりリフレッシュしました。


 1時間半くらいで温泉を出ると、食事もせずに次の観光地の神戸ポートタワーに向かいました。


 食事をしていると、球場での練習が見られなくなるかもしれなかったからです。


 有馬温泉駅から神鉄有馬線で有馬口駅、有馬口駅から神鉄有馬線で終点まで移動していると、途中震災で大きな被害を受けた、長田(ながた)駅(神戸電鉄線)に到着しました。


 そこで、車窓(しゃそう)から見えたのは、広範囲(こうはんい)密集(みっしゅう)している住宅でした。


 すると、自分はそこで目が(かす)み、右耳の後ろから高周波(こうしゅうは)のような音を感じました。


(ここからが、自分の脳裏(のうり)に入り込んできた、映像(えいぞう)と音です。)


「ガッター--ン!!」


 一瞬(いっしゅん)、自分が(しず)みこむような、強い縦揺(たてゆ)れを感じました。


 長田駅を少し過ぎた辺りで車窓を見ると、住宅街のかなり奥の方で何か所か火事になっているのが見えました。


「あっ、あれ?向こうの方で火事だよ!」


「早く消さないとヤバいな!」


 と、思っていたら、その火事の(ほのお)が…、


「ブワァァ--」


「ゴゴゴッ--!!」


 …と、火柱(ひばしら)が立ったと思ったら、あっという間に住宅街がみるみる火の海に変わり、その火が自分が乗っている電車の方に向かって押し寄せてきたのです!


「ヤバい、このままこっちに火が回ったら、電車の中の乗客も全員丸焼けだ!!」


 …と、恐怖(きょうふ)を感じていたら…、


「ボボボォォォォー-」


「ゴゴゴゴゴゴォォ--」


「ブワァァァァ--!」


 …と、物凄(ものすご)轟音(ごうおん)()き起って、確実に自分の乗車している電車に、火の海が近付いてきたのです!


 火の海が徐々に電車に近付いて来るにつれて、目の前の景色が真っ赤に染まってきました。


 とはいえ、電車は高架橋(こうかきょう)を走っていたから、火の海がこっちに向かって来ても、高架橋の下を通り抜けて行くのではないか?


 と、思いました。


 そうなれば、電車の乗客は全員助かるんじゃないかな?


 …と、考えていました。


 そう思った数秒後、そんな考えは見事なまでに打ち(くだ)かれました…。


 火の海が、いよいよもって電車の間近まで来た時、電車の中はその熱で猛烈(もうれつ)に熱せられ、灼熱地獄(しゃくねつじごく)のような熱さに見舞(みま)われました。


「ヤバい、このままでは誰も助からない!」


 …と、思っていたら、電車の上方(じょうほう)の窓ガラスが、


「ピッ、ピシッ」


「パァ--ン、パァ---ン!」


「バリィ--ン!」


 …と、熱気(ねっき)で押されて、窓ガラスが(はじ)け飛んだと思ったら、その直後に熱風(ねっぷう)()き込んできて、


「ブワァ~」


「ブワァァ~」


「ゴゴゴゴゴォ~~!」


 …と、火炎放射器(かえんほうしゃき)で火炎を放たれたかのような、陽炎(かげろう)物凄(ものすご)い熱気が一気に(おそ)ってきました。


「…あぁ…熱いっ!」


「…く…苦し…い…」


「…も、もう…ダ…メ……だ…」


 …と、思い、電車のドア付近にいた自分は、すぐ(わき)手摺(てす)りに(つか)まろうとしました。


 しかし、そこは火炎で熱せられたようになっていて、


「熱っー!熱くて()れられもしない!」


 そのまま、自分は片膝(かたひざ)をついたまま動けなくなりました。


(ここまでが、脳裏に入り込んできたものです)


 ………………………


「おい!大丈夫か?」


 一緒に電車に乗っていた友人が、自分の肩を(たた)いて言いました。


 はっ!と、我に返った自分は、何が起きたか分からないまま、


「う、うん、何とかね」


 と、答えるのが精一杯でした。


 意識が正常に戻ると、


「ガタンゴトン、ガタンゴトン」


 という音を立てて、普通に電車が走っていました。


 ふと、車窓を見ると通常の風景でした。


「さっき、自分の脳裏に飛び込んできた映像は何だったんだろう?」


 …と、思いながら周りを見回すと、電車内は冷房がキンキンに効いているのが分かりました。


 しかし、その中で自分1人だけが尋常(じんじょう)でない汗をかいていたのです。


 電車の床には、無数の汗が(したた)っていました。


 ………………………


 それから、約1年5か月後に阪神・淡路大震災が起きた訳ですが、報道番組の長田地区の映像と、この時の電車内でみえた映像とが一致して見えたのです。


 その時は、本当にゾッとしました。


 あの時、電車の中で見えていた事が、まさかそんな…。


 密集した住宅地に燃え盛る炎、消防隊の放水も途中で水が出なくなり、鎮火(ちんか)した時には焼け野原と化していました。


 他の、地域でも建造物の倒壊(とうかい)等、広範囲に渡って被害が出ました。


 インフラ等、甚大(じんだい)な被害が出た阪神・淡路大震災でしたが、その後、いろいろと教訓になり、建築物や防災に関して劇的(げきてき)に改善されていきました。


 復興(ふっこう)には長い年月が掛かりましたが、神戸市の再開発事業は最後に残った長田区の事業に終了のめどが立ち、震災発生から25年の2020年で完了する見通しになったそうです。


 しかし、大震災の記憶は風化してはいけませんね。


 震災の経験や(そな)えの大切さを、いつまでも次世代に伝えていきたいですね。


 阪神・淡路大震災で被害に()われた方々に、哀悼(あいとう)の意を(ささ)げ、この辺で終わりたいと思います。


 きつねあるき

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