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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第五章 目覚め編
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82話 『さあ、楽しみましょう』②

「これでそろいましたか」

 ステラ・ヴァレンタインは横になった八重環から取り出した、小さな木の実のようなものを机に置く。

 その横には似たような物があり、今置いたので八個目になる。

「では、代価を頂きましょう」

 壁にもたれかかるように地面に座り、意識をなくしている二人に静かに近寄ったステラ・ヴァレンタインは彼女らの頭に手をかざす。

 しかし、何度たどっても詩乃に関わる情報はかけらも見つけることが出来なかった。

「おかしいですね。どこにも見当たりません」

 今までこのような状況になったことがなかったステラ・ヴァレンタインは、過去と今回の違いを考えるが、すぐに心当たりは見つかった。

「随分とまぁ執着しちゃって。やっぱりこの見た目は可愛すぎたかにゃ~」

「……どうやってここへ?」

 他に人のいるはずのない部屋に一人の声が響く。

 ステラが振り返ると、八重環の横になっている台に一匹の黒猫が座っていた。

 尻尾を左右へと振りリラックスしているように見えるが、目の奥が笑っていないように見えた彼女には、その不一致感がより不気味さを感じさせる。

 緊張で体がこわばるステラ・ヴァレンタインとは対照的に、詩乃は軽い足取りで彼女の元へと歩いてくる。

「はぁ、エレボスといい、どうしてちょっと考えればわかることを……。それより、どう頑張っても私の情報は見れないよ」

「そのようですね」

 力の差、というより種族としての圧倒的な差を感じたステラ・ヴァレンタインは、すでにこの方法で情報を得ることをあきらめていた。

 相手に危害を加える意思がないことを感じた彼女は、警戒心こそ解かなかったが、比較的リラックスした様子で応対する。

「うんうん。あきらめの速さも大事だけど、一応敵判定してるやつからの意見なんだから、もう少し慎重になったほうがいいなじゃにゃい?」

「敵認定されていると知りながらもここへ来た理由は何ですか。宣戦布告ということでしょうか」

「あ~ぁ、誤解しにゃいで。ちょっとした興味で来ただけだから。あのルナの後継って言われると、死ぬ前に一回見ときたいなって」

 遠くの方を眺めながら話す様子は亡き故人を偲ぶようにも見え、彼女は新ためてその影響の大きさを感じる。

「あのお方はそんなにすごい方だったのですか」

「すごいなんてもんじゃないよ。一緒に勉強できたのが今でも誇りだよ」

「それが、どうしてこうなってしまったのでしょうね」

「ちょっと、何私だけ悪者扱いしてるの」

「違うのですか」

 ステラ・ヴァレンタインはこうして対話をしている状態を不思議に思うが、今はそれ以上に好奇心が勝り目の前の相手が敵対者であることも忘れてしまいそうなほどだった。

「善悪なんて所詮相手のどっちの面を見るかでしかないんだよ。私もルナも根底にあるものは一緒、多分ね。ただ、観測される面と状況が違っただけ」

「ではあのお方は善ではないのですか」

「そうだね、ルナだって場合によっては大罪になることをしてるんだよ。例えば、世界の理の書き換えとか」

「そんなこと可能なのですか」

「私も無理だって思ったけど、事実出来ちゃってるからね。さすがにこればっかりは壊すのをもったいなく感じるよ」

「では。今からでも中止にされたら良いのでは」

「なに、説得のつもり? なら悪いけど私は止まらないよ。せっかく用意された舞台、望み通り盛大に終わらせてあげないと」

「そうですか、残念です」

 いつも間にか二人は打ち解け、はたから見れば友人同士が話をしているようにしか見えなかった。

 一通り話し切った詩乃は大きくあくびをして背筋を伸ばす。

「さてと、それじゃあもう帰ろうかな。一人で突っ走っちゃう問題児の後始末をしないとだし」

「私たちは必ずあなたを止めて見せます。あなたが望む未来は実現させません」

「そう。楽しみにしてるよ、ステラ」

 笑顔でそういった詩乃は尻尾を左右に揺らしながらドアの方へと歩いていく。

 ステラ・ヴァレンタインがその様子を眺めていると、ふと詩乃は足を止める。

「そうだ、せっかくだから一つ贈り物をあげるよ」

 そういって詩乃はステラ・ヴァレンタインの手を軽く握りぶつぶつと何かを唱える。

 詩乃が一息ついたタイミングでステラ・ヴァレンタインは自分の中に知らない何かが流れ込んでくる感覚を感じる。

「これは……?」

「女神アステリアの加護。余計かもしれないけど、ステラには途中で止まってほしくないからね。お守り代わりに持っておいてよ」

「何か悪いものなどを引き寄せたりしませんか?」

「失敬な。これでもれっきとした女神やってるんだから……」

「そこは疑ってなどいません。ただ、あなたなら加護と偽ってそういうことをしてもおかしくないと、そう思っただけです」

「んー、この短時間で私への理解度がだいぶ深まったのはいいけど、ちょっと複雑。けど安心していいよ、こういう時にふざけないのが私だから」

「そうですか、ではありがたくいただきます」

「うむ、素直でよろしい。じゃ、またね」

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