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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第五章 目覚め編
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81話 『さあ、楽しみましょう』①

 翌日、悠の言う頼りになる人の返事がないと動くことが出来ないということで、皆はいつも通りに過ごしていた。

 夕日も落ちかけ、不完全燃焼な気持ちになりながら過ごしていた時、生徒会室の扉が叩かれる。

「不知火様、少しよろしいでしょうか」

「どうしたの、おひな」

「昨晩の件で少しお話があるのですが、お時間よろしいでしょうか」

 そう言いながらも、西城の目は柚葉の方を見ていた。

 それが何を意図しているのか悠には簡単に想像がついたし、このタイミングで本当に良いのかという危惧も共感できる。

 現状校内で西城家のことについて知っている存在は極僅かで、実際に必要以上にそのことを話すことは避けるように何度も釘を刺されていた。

「なに昨晩の話って。もしかして、私邪魔だったら席外そうか?」

「いや、ゆずにもいてもらった方が話が早くて助かるけど、本当に良いの?」

「致し方ありませんわ。元より永遠に隠し続けることは不可能とわかっておりましたから」

「えぇ、二人で何の話してるのさ」

「後で説明してあげるから、今はおひなの話聞こ」

 柚葉は納得しきれない様子でいるが、いつになく真面目な様子の悠を見て、いったんその気持ちを奥へと押し込める。

 無言を肯定ととらえた西城は立ったまま話を始める。

「早速ですが、連絡が取れないとされていた小鳥遊様のお父様のおおよその位置の特定が完了致しました。正確な場所はまだ調査中ですが、おそらく明日の朝にはお伝え出来るかと」

「随分早いね」

「ええ、なにより記録がそのまま残っていましたし、映像も確認出来ました」

「改ざんの可能性は?」

「家で確認ところ、改ざんされた可能性は限りなくゼロに近いとの事です」

「そう……」

 西城は、吉報のはずなのに微妙そうな反応の悠が気にかかる。

 他の件の時も大はしゃぎはしないものの、このような反応は見たことがなかった。

「何か気になるところがございましたか?」

「いや、いくら何でもスムーズすぎる気がして。いつもならもうちょっと時間がかかってたから」

「それは私も感じておりました。しかし、何者かが裏で働いているにしては証拠が残りすぎています」

「何もないとは思えないし、でもあまり時間もかけたくないし。どうしたものか……」

 この際改ざん等、何かしら事件性があることを匂わせるものが見つかれば中央を巻き込んで大々的に動けるが、少なくとも今ある情報だけでは中央が動かないのは悠もよくわかっていた。

 具体的な場所が特定されるまでは不用意に行動して相手の警戒心を高めるのも避けたい。

 悠は今次の手を打ちあぐねていた。

 そんな時だった。

 部屋のドアが小さく開き、その隙間から一人の生徒が顔をのぞかせる。

「あの、さっきこれが…………その、お話し中すいません」

 小鳥遊は部屋の空気が重いことを感じ、その雰囲気を怖く感じ出した顔を僅かに引っ込ませる。

 今まで黙って話を聞いていた柚葉は立ち上がると、ドアの方へと行く。

「ううん、大丈夫だよ。それより、慌ててどうしたの?」

「そうだ、えっと、さっきこれが届いてるのを見つけて、それでどうしたらいいのかわからなくて」

 柚葉見せられたスマホの画面には、両手足を拘束された状態で地面に横たわる男性の写真が写っていた。

 その混乱具合から、写真に写っているのが彼女の父親であることは想像に難くない。

「これが小鳥遊さんにお父さんで間違いないんだね」

「はい。でも、なんで……」

「すみません、お借りします」

 西城は混乱した小鳥遊の手からスマホをとると、その写真を自身のスマホと家へと送る。

「おひな、場所分かる?」

「ええ、すぐにでも特定してみせます」


「となると、だれが現地に行くかだけど」

 西城は準備があると、小鳥遊を連れて部屋を出て行った。

「先に言っとくけど、ゆずは今回お留守番ね」

「なんで」

「まだ前みたいに闘うのは無理でしょ。だから僕が行く」

「一人で大丈夫なの」

 心配そうにする柚葉に、悠はしばらく黙る。

 近くで聞いている茜も、今回ばかりは心配そうに様子を眺めていた。

「……多分。でも、できるなら索敵係でエレナちゃんも連れていきたい」

「それはダメ。いくら何でも危険すぎるし、エレナには早すぎる」

「そんなことない。今のエレナちゃんなら離れたところからでも仕事はできるし、だれか外で見ている人がいる方が僕も集中できる」

「それなら私がいく。要は戦わなきゃいいんでしょ」

「それだと時間がかかりすぎる。こうなった以上時間はあまりかけられないから、一気に中の情報をとれるエレナちゃんの方が適任。それに、その場にいれば絶対に無茶するでしょ。だから今回はお留守番」

 二人はお互いの言うメリットをよく理解していた。

 ただ、悠の避けたいデメリットと柚葉の避けたいデメリットが嚙み合わず、議論は平行線をたどる。

 それならいっそのこと自分が行くと茜が言いかけた時、三度部屋の扉が開く。

 その奥からは慌てた様子のエレナが部屋へ駈け込んでくる。

「すみません、遅くなりました」

「ちょうどよかった。小鳥遊さんの話ってどこまで聞いてる」

「新しい写真が送られてきたのは聞きました」

「じゃあ大丈夫、今から僕と現地に行ってもらいたい」

「ちょっと……まだ話は」

「わかりました」

「もう、エレナまで」

「それで、何をすればいいんですか」

「離れた場所から建物の中の情報を見て僕に伝えるだけ。いつもやってることと同じでしょ?」

「はい」

 その距離にもよるが、今の状態であれば問題なく役目を果たせると、そうエレナは確信を持っていた。

「ゆず、今回ばかりは折れてほしい。もちろんエレナちゃんの安全はできる限り取るつもりだし」

「中にいる悠がどうやって外のエレナの安全を保障するの」

「えっと、その辺は気合で何とか、ね?」

「会長、私からもお願いします。自分にできることがあって、それで人を助けられるなら行きたいです」

「はぁ、なんでここ二人はこういうときに波長が会っちゃうのかなぁ。わかった、行っておいで。でもくれぐれも無理をしないように」

「はい」

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