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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
幕間 暗躍編
80/145

76話 『世界』③

「流石に疲れましたね」

 中央のどこかで、ステラ・ヴァレンタインは珍しく目を閉じて椅子の背もたれに頭をもたれかけていた。

 どれほどの時間そうしていたかは数えていなかったが、気づけば隣の椅子には一人の少女が座っていた。

「お~お~。そこまでだらけてるの珍しいね」

「久遠様。あちらがここまで早く動くとは思ってもいませんでした」

 ステラ・ヴァレンタインは突然の来訪にも慌てることなく、目を閉じたまま答える。

 一方の久遠桜は珍しいものが見れたからか、あるいは元からそういう性格なのか、楽しそうにしている。

「いや、どうだろ」

「そちらでも何かあったのですか?」

「最後に飛んでったあの槍、あれ作ったの紫陽の猫だったんだよ」

 ステラ・ヴァレンタインはあの存在の事は前々から注意していたが、まさか他にもある選択肢の中からもっとも好ましくないものが選ばれるとは思っていなかった。

 いくら複製とはいえ神具を作れる存在は限られ、今この場にいる者を除けばそれが出来るのは終末の発起者とされる神以外いないだろう。

 だがそうすると記憶と一部合わない箇所が出てくる。

「ですが、本には一柱だけだと」

「たぶん何かしらの理由で観測できなかったか、登場自体がイレギュラーだったとか。どまぁ、詳しいことは本人に聞かないとわからないけどね」

「そうですか……」

『本人』に聞きに行くには、少なくとも学園の人形の力の覚醒が必要になるだろう

 いくら力の繋がりを辿れるとはいえ、その人が使えない力自体はコピーすることが出来ないのは少しもどかしく感じる。

 今回ばかりは時間をそうかけられるものでもない。

「それで、あの事件自体はどうするの?ここの子たちはもう動いてるみたいだけど」

「そうですか。でしたら今回は私の介入は必要ないでしょう。それよりも今は計画の修正が先決でしょう」

「そう言うと思って、一つ朗報を持ってきたよ」

 そう言いい隣に座る少女は得意げに話し始める。

「見つからないって言ってた八重環がその猫の所にいる。それもだいぶやばい状況で」

「すでに限界が近いのですか?」

「直接見たわけじゃ無いから詳しくは知らないけど、聞く分にはいつ飲まれてもおかしくないって」

「そうでしたか。場所の特定はお任せしてもよろしいですか?」

「良いよ。たぶんすぐに見つかると思うから」

「では回収するための準備をしないといけませんね」

「それと、割と急いだほうがいいかも」

「何か問題でもありましたか?」

「流石に私の事は認識されてないと思う。けどあの時スタジアムに結界が張ってあった、それもだいぶ強いのが。たぶん上にいるステラから存在を観測されないように警戒してたんだと思う。あっちはこっちの想像以上に念入りに準備をしてるかもしれない」

「そうですか。では場所がわかり次第、すぐに回収作業を出来るように準備を済ませておきます」

「うん、お願いね」

 これでパズルのピーズはそろった。

 後はタイミングの問題だろう。

「となると、不知火様の件を少し前倒しにする必要がありそうですね」

「それなんだけど、私の情報をおとりにうまいこと引っぱり出せないかなぁ~と思ってるんだけど、どう?」

 あまりにも突然だったが、言われてみればそれが最も効果的かもしれない。

 幸い彼の求めているものはすべてこちらの手の中にある。

 それらを使えば難なくことは進むだろう。

「そういう事でしたら手配をしておきましょう」

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