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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第四章 学園祭編
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73話 禁止!

 詩乃がスタジアムから出てくると、周りの騒ぎには目もくれずひたすらに柚葉の治療をする悠を見つける。

「ありゃりゃ、こりゃ随分とまぁひどい状態だにゃ~」

 思い空気に耐えられない詩乃は少し茶化し気味に言うが、悠は集中を切らさずにいた。

 その反応がすこし面白くない詩乃は胡坐をかき、頬杖をつく。

「ししょーはあれが何か知ってるの?」

「まあ、知らない訳じゃないのかねぇ。ただ悠の聞きたい事は答えられないかな。私だって全知全能じゃあないんだよ」

「ちょっと意外、ししょーにも知らない事あるんだ」

「悪かったね」

 その後は二人とも何の言葉を交わさず、ただ時だけが過ぎて行った。

 数十分が経過したとき、悠は額にかいた汗をを拭い大きく伸びをする。

 隣で眺めていた詩乃から見れば完璧とは言い難いものの、あまり時間をかけられないことを考えれば満点に近い成果だった。

 そしてもう一人、祈るように柚葉の手を握っていた茜は終わったことを悟ると閉じていた目を開ける。

「さて、これで良いかな」

「お姉ちゃんは……」

「大丈夫、しばらく安静にしてれば元通りになるよ」

「……良かった」

「さてと。ししょーはその腕……。見てるだけで痛いんだけど」

「ほえ?」

 詩乃は自分の腕を見ると白衣の袖は血で赤く染まり、骨こそ飛び出してないものの、中はぐちゃぐちゃになっていた。

 常人ならその痛みに気を失ってもおかしくないが、数十分もの間それに気づかないのが何とも詩乃らしいと悠は思いながら自分の腕をさする。

「あー、ほんとだ。やっぱりあのレベルの複製(レプリカ)でもこうなっちゃうかぁ~」

「え、痛くないの? それ」

「自分の体いじるのに、それこそ痛覚なんてあったら地獄でしょ」

 そう言いながら腕をプラプラと揺らすと、肩の方から順に骨が再生されていく。

 全て再生されきると、手を動かしながら調子を確認する。

「はい、元通り」

「相変わらずデタラメだよね」

「こらこら、人をバケモノみたいに言うでない」

 これを見た人は全員バケモノだと言うんじゃないか、そう心の中でツッコミながら悠はこの後のことを考えていた。

「これじゃあ学園祭は中止だろうし、ゆずは動けないしで忙しくなりそうだなぁ。とりあえず西城探さないと」

「それじゃあ、私も良くとするかにゃ~」

「行くってどこに?」

「古い知り合いのとこにちょっとね。急用が出来たから」


「頭痛い……」

「大丈夫? はい、お水飲んで」

「ありがと……」

 応急処置がされた柚葉は茜によって保健室へと運ばれていた。

 眠りから覚めた柚葉は頭を抱えながら上半身を起き上がらせる。

 口元に運ばれたコップに口を付けながら、柚葉は外の様子を目の端で確認する。

「どれくらい寝てた? それに学園祭は」

「4時間くらいかな……。学園祭は中止になって、今は西城さんたちが中央の人とお話してるよ」

「そっか」

 恐らくその場に悠と宮矢もいるだろうと思った柚葉は、自分も行かなければと思いベッドを出ようとする。

「お姉ちゃん?」

「行かない……と」

「ダメッ!」

 茜は起き上がろうとする柚葉をベッドに押し倒す。

「ちょっと、そんなに強く抑えなくても……」

「ヤダッ。保健委員の人言ってたよ、この前のエレナさんよりもずっとひどいって。最低でも二週間ははギフトの使用も激しい運動も禁止!」

 両手首を抑える茜の手は震えていて、瞳には一歩も譲らないという気持ちがこもっていた。

 暫くは対抗するも、これ以上心配をかけたくないという気持ちもあり、柚葉は諦めて腕に込めていた力を抜く。

「はぁ、わかったよ。今日はみんなに任せて寝てるよ」

「ダメ。お仕事は回復するまでずっとダメ」

「悠はなんて言ってるの?」

「……明後日にはリハビリを始められるかもって」

「心配してくれるのは嬉しいけど、お願い」

「んん……。一週間! 一週間だけちゃんと休んで」

「うん。ありがと」

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