6話 作戦
会長が考えた作戦。
それは、来週末に行われる学校説明会を使い事を起こすであろう犯人を捕まえると言う物だった。
「それって他の方は安全なんですか?」
「過去の傾向から学園に関係ない人には被害が出てないから大丈夫だと思う。それに、そうさせない為に生徒にも協力をお願いする」
「じゃあ勝算は?」
「十分にある。そのための準備ももう直ぐ終わる」
会長がそう言い終わると同時に生徒会室のドアがノックされる。
「エンジニア部の九条です。頼まれた物が完成しました」
「どうぞ」
「失礼します」
「しつれい、しま……す」
そうして入ってきたのは大柄な人と、その影に隠れるようにする小柄な人の2人だった。
「お待たせしました、会長」
「九条くんこそお疲れ様。さっそくだけど、現物を見ても?」
そう言われると九条は手に持っていたイヤホンとメガネを机の上に置く。
会長はそれを取ると、実際に身につけて使用感を確かめる。
「あの、それ何ですか?」
「これは当日使う便利グッズ。本部から直接指示が出せるようにイヤホンと、みんなの状況を映像で確認する為のメガネ」
「それって、イヤホンは売ってるやつじゃダメなの?」
「それだと不都合が多いの、それに数を揃えようとするとお金がかかるから市販のは使いたくない」
「なるほど」
「付けた感じ特に問題はないけど、テストは?」
「今のところ問題ありません。あとはどれだけ数を揃えられるかですが……」
「そうだなぁ、100あればありがたいけど……。て言うか、後ろにいるその子は?」
急に自分に話が振られたのにびっくりしたのか、その子は先ほどまで少しづつ出していた顔を引っ込めて、九条の陰で縮こまる。
「この子は一年の小鳥遊です。今回の設計をやってくれました。腕は良いんですが人見知りが激しくて、今日も来る必要は無いって言ったんですが」
「これは、私の仕事。だから……ダメなところ、ちゃんと……知りたい」
小鳥遊がそう言い切ると九条は幼児を褒めるようにその頭を撫でる。
そして、会長も同じようにしようとするが、寸前で避けられてしまう。
「それで、来週末までにいくつ用意できる?」
「80弱が限界かと……。材料はどうにかなりますが、時間が足りなくて」
そう申し訳なさそうに話す九条を横目に、宮矢が机に置かれたイヤホンを手に取る。
「うん、これならいけるかも」
そう呟く宮矢がイヤホンを握ると手のひらが僅かに光り、開くと元々一つだったはずの物が二つに増えていた。
「会長、九条先輩、私も1日2個位なら作れます」
「そっか、それなら100揃えられる?」
「えぇ、ギリギリ足りるはずです」
問題解決の兆しが見え早速作業に取り掛かる為に、九条と小鳥遊が部屋を後にする。