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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第四章 学園祭編
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65話 僕は何もやってないよ

「えっと……これはどうでしょうか」

「ありがとう、助かるよ」

 エンジニア部の管理する工房の一つ、小鳥遊千智の使う部屋は珍しく賑わっていた。

 学園祭で行う特別推薦様子を記録したいという柚葉の提案で、録画用の機材を求めて柚葉と悠はここに来ていた。

 小鳥遊は物置に所せましと置かれた過去に作ったものを引っ張りだすと、宝探しをするかのように求められているものを取り出す。

「それにしても……大変なことになりましたね」

「そう? 毎年こんな感じだと思うけど」

「毎年? えっと、妹さんが今年の特別推薦、摸擬戦で受けるって、聞いて……」

「そうなの?」

「……ごめんなさい」

「別に悪いことしたわけじゃ無いんだから、謝らなくても」

 相変わらずくっついたままの茜に聞くと、目を合わせず小さな声で答える。

 自分の知らないところで茜が動いてるとは思わなかった柚葉は驚くが、別に悪いことをしているわけではなく、これ以上追及する必要も感じなかった。

「それにしても、そっか、茜か……。確かに大変かも。でも一次は受けてなかったよね?」

 学園祭で行われるのは二次試験で、筆記試験と面談の行われる一次試験があるはずだが、柚葉の記憶が正しければ茜がそれを受けている感じは無かった。

 しかし、一般的には使われないものの、一次試験は学校関係者の推薦状があればスキップすることが出来る。

 となると問題なのは誰がその推薦状を書いたかなのだが。

「えーっと、僕はさっそく機材の準備行ってくるね~」

「ちょっと待って」

 何かを感じたのか、悠は部屋を去ろうとするが、柚葉の鎖に首を掴まれる。

「……僕は何もやってないよ」

「悪いことする人はみんなそれ言う」

 逃げられないと悟り、悠はおとなしく座り話をする。

「はぁ~。確かに紹介状を書いてほしいって頼まれたけど、僕じゃ書けないから他の人を紹介したんだよ」

「他の人って、誰?」

「文実委員長の西城陽菜」

「まぁ、西城さんなら安心か」

「西城さんは良い人……」

「じゃあ僕は?」

「……悪い人じゃない」


 あっという間に学園祭一週間前になった。

 それにともなって、会場の設営など本格的に学園祭に向けた準備が始まる。

 出店も有志の団体だったり部活単位でが多いのと、生徒会としてすることも無いので自由に使える時間が格段に増えた。

 そのおかげもあり、見れる範囲はついに校舎を丸々覆えるまでになった。

「……あの、顔色が良くなさそうですけど、大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫ですよ。それはステージ横のテントにお願いします」

 時間に余裕もできたので、会場設営の手伝いをすることになったのだが、詩乃さんにそれを伝えるとギフトを使いながらするように言われた。

 最初はその理由がわからなかったが、使ってみるとその辛さが身に染みる。

 今までは早朝や授業中が多くて人の動きがあまりなかったのもあり、比較的負荷が少なかったようだ。

 ただ、今は人の移動が活発で、今までの半分以下の範囲を維持するだけで頭がパンクしそうだった。

「随分苦労してるにゃ~」

「誰の提案だと思ってるんですか」

「にゃはは~。でも、どうせいつかはやらなきゃなんだよ?」

「……わかってますよ」

 どこから見ていたのか、まるさんに抱きかかえられた詩乃さんは目の前で美味しそうにかき氷をなめている。

 その奇抜な様子からか、周りの人たちは少しざわついてる。

「まぁ、一週間もやってれば慣れてくるでしょ」

「だといいですね」

 なんだかんだ言って、ここまでの進捗はほとんど詩乃さんの予想通りになったのも考えると、おそらく今回もその通りになるのだろう。

 その予想は過去の経験から来るのか、あるいは何か他にあるのか。

 どちらにしろ相変わらず底の見えない、不思議な人だ。

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