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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第三章 覚醒編
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63話 お友達

「失礼いたします。当日の設営で確認していただきたいことがあるのですが」

 昼下がり、生徒会の静寂は一人の生徒によって破られる。

 その生徒と目が合うなり、悠は何も見なかったふりをして再び書類に目を落とす。

 その反応が気に入らなかったのか、その生徒はわかりやすく膨れる。

「ちょっと、無視しないでいただけます?!」

「……ゆずなら居ないけど」

「でしたら好都合ですわ」

「好都合?」

 得意げにする少女の意図がわからず、悠は混乱する。

「学園祭実行委員長としての用事じゃないってこと?」

「いいえ、一つはそのことでですが、もう一つはあなたの『お友だち』としてです」

 お友達。

 悠はその言葉の意味を理解すると、厄介なことに遭遇したと頭を抱える。

「……何もお願いした覚えはないけど。勝手に動いて、その分取り立てられるのは勘弁してほしいな」

「そんなことはしませんわ! 今回のはちょっとしたプレゼントのようなものだと考えて頂いてかいません」

「だったらもっと怖いんだけど。タダより高いものは無いって言うし」

「はぁ、本当に用心深いお方ですわね。ですが、今回は本当に何もありませんわよ。何より、確証のとれていない話で対価を求めたなんて知られたら、お母様がどれだけお怒りになるか分かったものではありませんもの」

「そこまで言うなら……」

 ようやく話を聞く気になった悠を見て、西城は満足そうに悠と机を挟んで席に着く。

「実は西城家は、おばあ様の代から神楽家の動向を注視していましたの」

「確かに神楽家は目立ってるけど、そこまでする必要あるの?」

「これはあまり一般的に知られていることではありませんが、神楽家の成り立ちは少し特殊なんです。それゆえ出入りする方の中には滅多にお目にかかれない方もいて、なかなか面白いのですよ」

「そんな事の為にわざわざ来たの?」

「まさか、本題はここからですわ。その中に定期的に訪れる白髪の女性の方がいるのですが、今年に入ってからは来ていないそうなのですよ」

「それは、たまたま他の用事があるとかで行けてないとか」

「一月やそこらでしたらその線もあり得ますが、半年以上は流石に現実的ではありません」

「その白髪の身元は特定出来てるの?」

「残念ながら未だ特定は出来ておりませんが、私の個人的な予想はあります」

「……ヴァレンタイン家?」

「あら、以外ですわね。まさかあなたも何か調べていましたの?」

「中央が神楽家に対して強く出れない理由の一つが、主要戦力の大半が神楽家に関わっているから。そう言われてるけど、どうもそうは思えなくてね。まぁ、根拠もなんもない妄言みたいなものだけど」

「それについては私も概ね同意見いたしますが、そうするとある問題が出てきます。今残ってるヴァレンタイン家の人間はステラ・ヴァレンタインのみですが、記録上彼女はこの街今の体制をとって以降ずっと連邦生徒会会長の役職についていますし、直接会ったことのある人はごく少数です。もしかしたらそのような人物などもとから存在していないのではと考える方が自然とさえ思うほど、情報が存在していないのです。と、少し話がそれてしましましたわね。そのヴァレンタイン家のみが持つ特徴の一つが白髪白眼、そう言われているそうです。ここまで言えば、もうわかりますわよね?」

「……エレナちゃんを疑ってるの?」

「ええ。この街にヴァレンタイン家の特徴に一致する身元不明の少女が現れ、その少し前から神楽家に出入りするヴァレンタイン家と思われる白髪の方の出入りが途絶えた。流石に不自然だと思いませんか?」

 珍しくまじめな顔で話す西城に、悠はペンで机を叩きながら自分の知っている情報と合わせて整理していた。

「なるほどね。確かにあり得ないことじゃないけど、信じたくは無いかな」

「それは贔屓目ですか?」

「うーん、そうかもね。でも……」

 ようやくまとまった意見を口にしようとした時、それを遮るように柚葉が部屋へと入ってくる。

「あれ、西城さん?」

「これは戸田様、書類の確認をよろしくお願いしたします。では不知火様、残りの話しはまた後日ということで、私はここで失礼いたします」

 西城は目があるなり持ってきた書類を柚葉に押し付けると、そそくさと部屋を出ていく。

 想像外の組み合わせに、柚葉は不思議そうに悠を見る。

「学園祭の話?」

「まぁ、そんなところ」

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