60話 保護者会……?
「ご無沙汰しております、不知火様」
悠が廊下を歩いていると、後ろから声をかけられる。
振り向くと、まるが一礼する。
「あぁまるさん、お久しぶりです」
「エレナ様の件なのですが、先生が暫く面倒を見ると仰っているのですが、お借りしてもよろしいでしょうか」
「たぶん大丈夫だと思いますよ。一応ゆずには僕から伝えておきます」
「はい、よろしくお願いします」
「それにしても、随分入れ込んでるみたいだにゃ~」
突如二人の間に詩乃が割って入るようにして現れる。
「うわっ、ししょーどこから来たの」
「先生、わざわざいらっしゃるならご自身でお話をしていただきたいのですが。私共は先生のように暇では無いのです」
「にゃはは、エレにゃんの回復が想像以上に早くてね。それに、悠はなんでそこまでエレにゃんに肩入れするのか忘れないうちに聞いておこうと思って」
「お二人でお話があるようでしたら、私はこれで失礼いたします」
まるは二人に礼をすると、空気に溶けるようにしてその場から消える。
「なんの事かわからないな~、なんて言ってみたり?」
「苦手な精神支配をあそこまで頑張っちゃて。干渉痕がちゃんと残ってるし、あれで隠してる気なら詰めが甘いと言わざるを得ないかにゃ~」
「だってそれで体力が限界だったんだよ? それくらいは見逃してよ」
「まぁ、ギリギリ及第点ってとこかな。それでなんでそこまで頑張るの?」
「そうだなぁ……、見てられなかったからかな。あのまま放っておいたら心の中がぐちゃぐちゃになって、世の中の悪い事の全部を自分のせいにしそうな勢いだったし」
「人間じゃないのに心ねぇ」
「別にそこは重要じゃないと思うけどなぁ。まぁ、ししょーみたいな人には言っても無駄だと思うけど」
「これまた随分な言われようだにゃ~」
詩乃は尻尾で壁を叩きながら不満をあらわにする。
「それで、あっちの方はどうなの?」
「真奈の事、だよね。相手の情報が全くつかめなくてね。ここまで徹底的に情報が隠されてると、いっそ神楽家が関わってるって言われても納得できるくらいだよ」
「神楽ねぇ、あまり考えたくはないけど。事件自体は本国で起きたんだし、そっちの方の記録は調べられないの?」
「何年か前に見てみたけど、そもそも事件自体が無かったことになってるぽくって、全く使い物にならなかったんだよ。そもそも、相手はなんでここまでして真奈の事を欲しがるのかわからないし」
「ん~、もう無理なら手かそうか?」
打つ手なしに等しい悠にとって、この話は渡りに船だったが、以外にも悠は断った。
「いや、やめとくよ。後で何せびられるかわからないし」
「まぁまぁ、そう言わずに。今なら特別価格で引き受けるよ?」
「だからだよ。ししょーがそう言う時、大抵ロクな事考えてないから。それにあの日、命に代えても探すって誓ったから」
「いっちょ前に言うようになちゃって」
「今後彼の存在は必要不可欠になりますが、よろしいのですか」
「盗み聞きなんて悪趣味なこと、誰に教わったの?」
「……申し訳ございません」
悠が見えなくなると、詩乃の首輪に挟まっていた紙人形が起き上がる。
それは拠点へと帰ったまるが操るものだった。
「別に悠である必要は無いんだよ。妹が見つかればそっちでも代替は利くし」
「そうでしたか。それで、場所はご存じなのですか?」
「所有者の目星はおおよそついてるんだけどねぇ。下手にちょっかいをかけられない相手だから、正確な保管場所までは掴めてないんだよ」
「では、場所の捜索も行いますか?」
「いや~、下手に手を出して仕返し食らうのも避けたいし、しばらくは様子見かなぁ」




