54話 ん? どーゆ―こと?
「大丈夫?」
どうにか思い瞼を開けると、目の前に心配そうにする悠さんがいた。
吐き気は収まったが、まだ頭が痛いし耳鳴りもする。
「大丈夫……、じゃないかも」
ふらつく膝に手をつき、立ち上がる。
転びそうになり近くの棚に手をつくと、手とぶつかった本の山が地面に崩れ落ちる。
「ちょっと、目閉じたままだと危ないよ」
「え?」
その時に初めて違和感に気づく。
本来なら見えないはずの場所。
後ろの方や壁の向こう側、上の階に誰がいて何をしているのか。
人の動きのみならず機械の動作や舞う埃まで、文字通り全てがはっきりとわかる。
「……なに、これ」
混乱する頭をよそに、情報は次々と入ってくる。
範囲はどんどん広がって行って、あっという間にセントラルタワーを丸々覆うぐらいになっていた。
全てを処理しきれずに頭がパンクしそうになるが、それでも止まる気配はない。
「誰か……。来る!」
幸い、深夜だったこともあり動いている人が少なかったのは運がよかった。
ようやくその情報量に頭が慣れてきて、選別をかけられるようになってきた。
そして、今いる部屋のドアの向こうに誰かがいることを見つける。
悠さんに知らせようとするが、振り返ったとたん集中が乱れ、今までよそに置こうとしていたものが再び頭に入って気を失いそうになる。
こちらが物陰に隠れるより先に声がかけられる。
「誰かいるの?」
おそらく何かを感じたのだろう。
声かけに返事をするか迷っていると、ドアが開けられ電気がつけられる。
もうダメだと思ったが、現れたのは意外な人物だった。
「あれ? エレナと……」
「双葉さん?」
「あ、引きこもり双葉じゃん」
悠さんは双葉さんを見た途端緊張感をなくし軽口をたたき始める。
その様子を双葉さんはめんどくさそうにしていた。
「2人はここで何してるの。てかどうやってこの部屋に来た?」
「いやぁ、気づいたらここにいて。ここ何階?」
「32階。この部屋は基本人が来ることがないから何事かと思ったけど……ん? どうして来れたの?二人は20階までだよね」
「そう言えば、確かになんでだろ」
「まぁ今はそんなことよりこっちの方でしょ」
そう言って双葉さんは私のことを見る。
今はある程度コントロールにも慣れてきて、軽い耳鳴りと頭痛程度に収めているからすぐに何か起こることは無いだろうが、心配がなくなることにはならない。
「すいません」
「いいから、とりあえずすぐに学園に戻ろう。ここに来たことは後で考えよ」
「そうだけど。ここからなら師匠のいる病院の方が近くない?」
「ん、そうだよ?」
悠は何言ってるんだ、みたいな顔で双葉を見るが、双葉は自信気に片手で部屋のドアを開ける。
本来その先には廊下があるはずだったが、その代わりに前に行ったことのある書庫が広がっていた。
信じられない光景に私も悠さんも目が丸くなる。
「ん? どーゆ―こと?」
「それも後で説明するから。とりあえず保健室に連れてって」
「なんか双葉に命令されるの気に食わないけど、任された」




