52話 深夜だから迷惑にならないように
「その後師匠に会って……、ってそう言えばエレナちゃんはまだ師匠と会ってないのか。まぁそんなこんなで生き別れの妹を探しにここに居るんだよ」
「そんなことが」
「ゆずもあんなだけど抱えてるものは僕よりも大きいんだよ」
「でも、私のことは解決法が……」
「夢の中で何か言われなかったの?」
「なにか……」
記憶を辿り、あの時話していたことを正確に振り返っていく。
そうしていると最後の方のことを思い出す。
「……ヴァレンタイン」
「え?」
「ヴァレンタイン家を訪ねれば力になってくれるって」
「そうか。よりにもよってヴァレンタイン家か」
今頼れる唯一の手掛かりだったが、悠さんの顔は意外にも曇っていた。
「それはちょっと面倒くさいかもしれないな」
「どうしてですか?」
「僕が知る限りだと、今生きてる唯一のヴァレンタイン家の人間が連邦生徒会会長ステラ・ヴァレンタイン。つまり、この街で一番偉い人のみなんだよ」
「それじゃあ……」
「そもそも会えるかどうかわからない」
「……そんな」
「そう落ち込まずにさ、とりあえず会いに行ってみよ」
「悠さん……」
行こうと悠さんは立ち上がり手を差し出すが、後ろから現れた何者かによって海に突き落とされる。
と同時に私はその何者かによって勢いよく抱きしめられ、地面に倒れる。
「エレナっ!!」
「会長?」
「とりあえず無事でよかった。勝手に居なくなってどれだけ心配したと思ってるのっ」
「……ごめんなさい」
「ちょっとっ! 僕を突き落とす必要ないと思うんだけどっ!」
海水につかりながら悠は抗議の声を上げる。
「だって、悠と話してるとエレナの教育に良くなさそうだったし」
「いま絶賛カウンセリング中だったんだけど。というか、服とか超濡れたんだけど」
「別に、それくらいならすぐ乾かせるでしょ?」
「そうだけど、海水は臭いがつくからやなんだよ」
「そう? 私は海のにおいも良いと思うけど」
「……それ悪口だよね」
「さあ?」
意地悪そうに笑うと柚葉は鎖を使い悠を引き上げる。
「あぁ最悪。べたべたする」
「それで、エレナと何話してたの? いや今はいいや。夜も遅いしとりあえず寮に戻ろう」
「あの……」
「それなんだけど、この後急用が入ってまだ帰れないから、ゆずは先帰ってていいよ」
「その、そういうことになりました」
手早く服を乾かした悠さんは、どう話せばいいのか困る私の代わりに話を切り出す。
「急用って、どこに行くの?」
「どこって……、あそこ」
そう言って悠さんは街の中央、セントラルタワーの頂上を指さす。
「ステラ・ヴァレンタインに会ってくる」
「ちょっと、今何時かわかってるの?」
「深夜でしょ? 流石にそれくらいはわかるって」
「普通深夜に人に会いに行こうって思わないよね? しかも相手が連邦会長って」
「それでも行かなきゃいけないんです」
「エレナ……」
「というわけだからゆずはもう休んでて。今もだいぶ無理してるでしょ?」
「……それは」
「大丈夫。何も危険なことは無いし、朝には帰るから」
「ごめんなさい。今回だけはどうしても行かなきゃいけないんです」
そう言って会長に頭を下げる。
そして、以外にも会長は私の頭をなで始める。
「そういえば初めて聞いたかも」
「え?」
「エレナに何かお願いされるの」
「そうですか?」
「そうだよ」
会長はしばらく黙り考えていたが、諦めたように一息つく。
「わかった、行っておいで。でも向こうの迷惑にならないようにね」
「はいっ」
「それって、夜中に行く時点で相当迷惑だから無理じゃない?」
「悠がそれを言うか」




