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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第三章 覚醒編
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50話 夢②

 夢を見ていた気がする。

 頭がふわふわして内容は思い出せないが、それだけは確実に言える。

 そんな不思議な心地とともに目を覚ますと枕元で一匹の黒猫が横になっていた。

 そして、その猫はあの時宮さんと見ていた猫だった。

「あなたは、ここの飼い猫さんだったんですね」

 猫は答える代わりに大きなあくびをするとひょいっと床に降りる。

「どこに行くんですか?」

 倦怠感に包まれる体を起こし、猫の後を追う。

 猫は窓の方へと行くと、器用に窓を開ける。

 それと同じくらいに部屋のドアも開けられる。

「エレナ、起きたの?」

 そう言って目をこすりながら入ってきたのは会長だった。

 私を見ると慌てた様子で私を支える。

「ちょっと、急に立って大丈夫なの?」

「……猫が」

 そう言って窓枠を指すが、もうそこには猫は居なくなっていた。

「猫?どこにもいないけど」

「あれ。さっきまでいたのに」

「それより、もう体は大丈夫なの?」

「どうなんでしょう。ちょっとだるいですけど、痛みとかは無いですね」

「ならよかった」

 そう言って、会長は私をベッドへと戻す。

 されるがままでいる間ぼーっと外を眺めていると、ふと遠くに煙が見える。

「煙が……」

「煙?」

 ボソッと出た言葉に柚葉は振り返り窓の外を確認するが、そんなものは確認できなかった。

「煙なんてないけど」

「いえ、あそこに」

 そう言って支える会長の手を振りほどいて窓際まで近づき、煙の上がっている方を指さす。

「そんなの見えないけど」

「いえ。ありますって」

 何度確認しても見えない柚葉は不審に思いエレナをベッドへと戻そうとする。

「きっとまだ疲れが残ってるんだよ。だから、もう少し横になろう?」

「……はい」

 会長に言われた通りだと自分に言い聞かせベッドへと戻ろうとすると、床に赤い染みが出来れいるのを見つける。

「これなんでしょう」

「どうしたの?」

 会長の質問をよそにそれを辿っていくと、予想外のところからだった。

「会長、その顔……」

 その時になって始めて会長の顔が血で赤く染まっていることに気づく。

 その瞬間夢の内容がフラッシュバックする。

 壊れる街、目の前で首をはねられた女性、そしてある声。

『あの世界であなたは作られたの』

『あの戦争はその技術が原因で起きて、その争いは世界の消滅って形で終わりを迎えた』

「私が原因?」

『まぁ、無関係ではないわね』

 エレナは膝から崩れ落ち、自身の体を抱くようにして震えている。

 瞳孔は開き切り、言葉にならないかすれ声が出るだけだった。

「ちょっと、大丈夫?」

 柚葉は突然の変化に戸惑うが、取り合えず落ち着かせようと必死だった。

「私は……人間じゃ、ない?」

 靄がかかっているようになっていた夢の内容がはっきりとしてくる。

「会長は知ってたんですかっ!!」

 突然声を荒げるエレナを前に、柚葉はただなだめることで精一杯だった。

「エレナ、今はちょっと横になろ? 少し休もうよ、ね?」

「……知ってたんですか」

 柚葉はふらつく足元をそのままに部屋を出ようとするエレナを抱きしめると頭をなでる。

「ごめんなさい。私は最初から」

「なら、なんで、もっとはやく……」

 エレナは気を失うと柚葉にもたれかかる。

 次に目が覚めた時、エレナはその場所から逃げ出した。


 エレナは己のおぼろげな記憶だけを頼りに街はずれの港にたどり着くと、積み上げられたコンテナにもたれかかって座っていた。

 その目元は赤くなり、顔には疲れがにじみ出ていた。

「これで良い……。これで皆さんに」

「何が良いの?」

 ふとかけられた声に驚き周りを見回すと、目の前に悠さんが立っていた。

「こんなところで何してるの」

「……悠さんには関係ないです」

 そう言ってその場を離れようとするが、思っていたより体は疲れていたらしく、立ち上がることすら出来なかった。

 それでも離れようと地面をはって進もうとするが、悠さんに楽々と抱えられる。

「やめてくださいっ! 離してっ!! 私は誰にも関わっちゃいけないんですっ!!」

 そう言って手足をばたつかせどうにかしようとあがくが、そんなものが通じるはずもなかった。

「悪い夢でも見たの?」

「関係ないですっ!!」

「そう言わずにさ、何かあるなら話してよ」

 そう言って悠はエレナを地面に座らせる。

「話したら放っておいてくれますか?」

「そうだね。ちゃんと理由があるなら」

「じゃあ」

 ぽつぽつと夢の内容を話す。

 戦争の記憶、自身の成り立ち、世界が終わること。

 言葉にすればするほど頭の中は整理され、だんだんと理性が戻ってくる。

「それでみんなの前から黙って消えようと?」

「そうです。出来るだけ人に関わらないように」

「そう。話してくれれば良かったのに」

「だから、それじゃあダメなんですっ」

 つい声を荒げてしまうが、悠さんは気にせず話を続ける。

「別に、すぐに世界がどうこうなるって訳じゃないんでしょ?」

「それは……、たぶん」

「なら皆でどうにかすれば良い。ね、帰ろ?」

「そういうのは悠さんだから言えるんです。みんなに頼られて、なんでも出来るから」

「そうでもないんだよ。自慢じゃないけど、僕も自分の目標の為にゆずに迷惑かけてるし、僕もゆずの目標の為に協力してる。お互い苦手な所を補い合ってどうにかこうにかやってるんだよ、実は」

「嘘です。そんなの言われても」

「じゃあ、少し僕の過去の話しよっか。なんでこの街に来たのか」

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