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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第三章 覚醒編
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49話 夢①

 気が付くと日の落ちかけたアテナに居た。

 少し遠くには今となっては見慣れた紫陽学園の校舎がある。

 けれど、街には人が一人も見当たらず、今まで感じたことのない異様な空気が流れていた。


 なにかあったのかな。


 そう思って学園に戻ろうとしても、その場を動くことができなかった。


 どうして。


 理由を考える間もなく変化は訪れる。

 突如遠くに見える紫陽学園の校舎が音を立てて崩れる。

 そして、それを皮切りに次々と周りの景色が書き換わっていく。

 あっという間に周囲には瓦礫の山が作られ、あちらこちらから爆発音や銃声、人の叫び声が聞こえてくる。


 なにが起こってるの?


 当然の事態にどうすれば良いのか混乱していると、ちょうど目の前で一人の女性が足元がもつれ転倒する。


 大丈夫ですか?


 そう言ったはずなのに、女性は私を気にも留めず来た方をじっと見ている。

 誰かいるのか、そう思ってその方を見ると、黒く影のような靄に覆われた人型のなにかがそこに立っていた。

 そしてこちらが動くより早く、人型のなにかは腕から伸ばした靄のようなものを使い女性の首をはねる。

 そのまま人型のなにかはどこへ行くでもなく、ずっとその場に立っている。

 顔は見えないのに、不思議と目が合っている。そんな感覚がした。

「あなたは誰なの?」

 そう声に出した瞬間、再び景色が変わる。

 広い草原のような場所にいて、遠くには大きな木が見える。

 その下には一人の女性がいて、一冊の赤い本を読んでいた。

 不思議とその場所に行かなければいけない気がして、そう思うより前に体が勝手に動いていた。

「初めまして。かわいいお人形さん」

 開口一番、女性はそう話す。

 初めて会ったはずなのに、その顔は何度も見たことがあった。なぜなら……

「私はエレナ・ヴァレンタイン。ある意味あなたのお母さんね」

 そう言い、私に隣に座るように促す。

「ここはどこなんですか?」

「それが最初の質問でいいの? ほかにもっと聞きたいことあると思うのだけれど」

 隣から聞こえる女性の声を聴くたび、頭の中がふわふわとした感覚になる。

「それじゃあ、聞いたら答えてくれるんですか?」

「それはもちろん。でもまずは私の話を聞いてもらえる?」

「わかりました」

 女性は閉じた本の表紙を撫でながら話し出す。

「そうね。まずはあなたがさっきまで見ていた記憶についてかしら」

「記憶?」

「そう。あれは元々あなたがいた世界の記憶」

「世界の……」

「今はあまり時間がないから細かいところは省かせてもらうけど、あの世界であなたは作られたの」

「ちょっと待ってください。作られたってなんですか」

「本当に何も知らないのね。あなたは私の遺伝情報をもとに作られた人工生命体なの」

 初めて聞く真実だったが、自分でも不思議に思うほど感情は動かず、自然と受け入れていた。

「それでね、あなたが見ていたあの戦争はその技術が原因で起きて、その争いは世界の消滅って形で終わりを迎えた」

「それは、私が原因ってことですか?」

「まぁ、無関係ではないわね。あなたは起動されると同時に今の世界に飛ばされた。記憶がないと思ってたのはそのせいね」

 自分が原因で多くの人が争いに巻き込まれた。

 普段なら取り乱してもおかしくないのに、その時だけは何とも思うことはなかった。

「あなたが今いる世界はその技術すら不完全だから、もし完成品であるあなたの存在が見つかれば、あなたをめぐって争いが生まれるかもしれない」

「そんな……」

「出来るなら人と関わらないでって言いたかったけど、もう手遅れみたいだったし」

 そこまで話したところで景色に亀裂が入り、崩れ落ちていく。

「あら、もう時間だったのね」

「何か。何か出来……ことは」

「もし今もある……ヴァレ、タイン家……訪ね。きっと……たの力、なって……れるか」

 途中ノイズが入りうまく聞き取ることが出来なかったが、最後の一言ははっきりと聞き取ることができた。

「……桜を、頼みます」

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