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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第三章 覚醒編
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48話 内1名死亡 1名意識不明④

「それで、悠はそのままで良いってどういうことですか」

 悠の亡骸を抱えながら柚葉は詩乃を睨んでいた。

「そのままの意味だよ。しばらくすれば目も覚めるんじゃにゃい」

「それじゃあ答えになって無いです」

 しばらく休んで体調の戻ってきた柚葉は追及の手を緩めないが、詩乃は気楽に答える。

「それより、今はこっち見にゃいと」

 詩乃は足軽に八重沙羅の元へと行くと、両前足をおでこに押し当てる。

「うん、ちゃんと解毒は出来てるにゃ。苦手にゃのにずいぶん無理しちゃって、後でちゃんと褒めとかにゃいと」

「ちょっと、話はまだ終わってないんですけど」

「はぁ。だってよ、とっとと目を覚ましにゃさい」

「……何言ってるんですか」

 理解できない柚葉だったが、詩乃の呼びかけに答ええるように抱えられた悠の全身から激しい炎が上がる。

「え? なにこれ」

 柚葉は抱えていた亡骸を地面におろす。

 炎がひとしきり燃え切ると、せき込みながら悠は目を覚ます。

「ゆうぅぅ」

「ゆず? 師匠もなんで……」

「良かったあぁぁぁ!!」

 起き上がった悠に抱き着く柚葉はからは、大粒の涙が流れ落ちる。

 悠は一瞬あっけにとられるが、安心させるように柚葉の頭をなでる。

「ごめんね、ちょっと無茶しすぎた」

「そうだよぉ。ほんとに死んじゃうんじゃないかってっ!」

「お帰り。よく頑張ったね」

 詩乃は悠の背中をとんとんと叩く。

「そうだ。師匠はなんでここに居るんですか?」

「私はあっち」

 そう言って詩乃は起き上がった沙羅の方を指す。

「お手数をおかけして申し訳ございません」

「いーのいーの。もともと私のお願いで生まれた問題だったんだから、その尻拭いぐらいはするよ」

「あの、それで紗奈は」

「あー、それなら」

「紗奈さんは他の生徒会の人が保護してます」

「そうですか。本当にありがとうございます」

 そう言って沙羅は深々と柚葉に頭を下げる。

 待ち合わせをするため、外に移動してから細かい確認をしていると、少し離れたところの空間に亀裂が入る。

「紗奈っ」

 そう言って沙羅は亀裂に駆け寄るが、出てきたのは意外な人物だった。

「大変です会長。エレナがっ!」


「うーん。体に異常はないかな」

 床に横にしたエレナの額に人差し指を当てた詩乃は眉を細めながら言う。

「そうですか」

「とりあえず、沙羅と紗奈は先に戻って休んでて。部屋はいつものところ用意してあるから」

「はい。ではお先に失礼します」

 そう言って一礼すると、沙羅は紗奈を支えながら紗奈の作った亀裂に入っていく。

 八重姉妹がいなくなったのを確認すると、詩乃は柚葉の方を見る。

「それで、柚葉は()()をどこで拾ったの?」

「それってどういう……」

 混乱する柚葉を詩乃は細目で睨みながら言う。

「これ、人間じゃないよね」

 動揺する柚葉は顔を下げる。

「これを知ってるのは?」

「私と悠と、宮矢だけ……、です」

「そう」

 詩乃はそう静かに呟く。

「色々と言いたいことはあるけど、とりあえず今日はもう帰って休んで。とりあえず、これはうちで預かるから」


 学園へ戻る最中、神楽綾人は笑いをこらえるのが精一杯なほど充実感に満たされていた。

「何がそんなにおかしいの?」

 ふと気が付くと、神楽綾人の背中にぴったりと張り付くように、10歳くらい少女が立っていた。

「あぁ、(すい)か。あんなに白熱したのは久ぶりだよ」

「楽しもうと手加減して足元救われたのに?」

「なんだ見てたのか」

「そーだよ。ていうか、彗がいなきゃ今頃お陀仏だったかもなんだから、少しは感謝してほしーね」

 そう言って、彗は自慢げに胸を張る。

「それで、そんなに楽しかったの?」

「あぁ、久しぶりに本気をぶつけられそうなのを見つけた。そう思わない?」

「うーん。彗はあのお姉さんは別にいいかな。それより、近くにいた赤髪のお兄さんの方が気になった」

「そうか? 別に気にするほどじゃないと思うけど。もしかして面食いか?」

「そーだよ。愛する者のために一途にひた走る。それでさ、目の前で『その人』をなぶり殺したらどんな顔を見せてくれるかなぁ。きっといい顔してくれるんだろうなぁ。あぁ、楽しみだなぁぁ。そう思わない?」

 そう言って笑う彗の顔は、到底その年の少女がしていいようなものではなかった。

「やっぱり、お前の考えは俺には理解できねぇな」

「ざんねーん。それより、本家の人が呼んでたけどどうするの?」

「要件は?」

「さあ。彗は呼んでくるよう言われただけだから」

「そうか」

「それで行くの?」

「あぁ、流石に無視できないからな」

「そう。じゃあ彗は先に戻るけど、何か伝えとく事ある?」

「そうだな。問題児は順調に育ってるって伝えといてくれ」

「はーい」

 そう言い残すと、彗はその場からいなくなっていた。

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