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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第三章 覚醒編
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47話 内1名死亡 1名意識不明③

 そう宣言した柚葉の纏う雰囲気はさっきまでとは明らかに変わっていて、部屋の空気は重たくのしかかっていた。

 それでも、先手を打とうと神楽綾人は剣を作ろうとするが、それよりも早く柚葉の操る鋼糸が部屋中を縦横無尽に駆け巡る。

 天井は崩れ壁には大穴が開き、部屋中を煙が立ち込めるが、柚葉はそれを気にも留めず攻撃の手を緩めない。

 煙が晴れると、柚葉の見る先には地面に膝をつく神楽綾人がいた。

「なんだよ、これが本気かよ!!」

 笑いながら言うも、全身に鋼糸がめり込んでいて、常人であればすでに息絶えているほどの大怪我だった。

 その様子を見る柚葉はずっと黙っていた。

「ははは、やっぱ本物はちげぇや」

 二っと笑う神楽綾人は鋼糸を引き抜くと、すぐさま傷は治っていく。

「いやぁ、危ない危ない」

 攻勢を維持していたはずの柚葉は入れ替わるように地面に倒れる。

 背中には一本の短剣が刺さっていて、柚葉の顔は苦しそうにしていた。

「出来るならもうちょっと楽しみたかったよ」

 神楽綾人は一本の剣を作ると、柚葉の心臓めがけて振り下ろす。

 しかし、剣は砂粒へと変わり、本来剣が刺さるべき場所には一匹の黒猫が座っていた。

「は? 猫とかふざけてんか?」

 そう言ってもう一度振り下ろそうとしたが、やはり剣は砂粒へと変わってしまった。

「はぁ、これで神楽を名乗ってると思うと今代の苦労が目に浮かぶにゃぁ」

「は? 猫がしゃべった?」

「あぁ、もう君いらないから帰っていいよ」

 そう言って猫はしっしと手で払う。

「ふざけんじゃねぇぞ!!」

 ぞんざいに扱われたことに腹を立てた神楽綾人は、もてる力すべてを使い剣を作り振り下ろす。

「ふぁぁ。学習してほしいにゃ~」

 黒猫があくびをするうちに、すべて砂粒へと変わり地面に落ちる。

「はぁ? なんなんだよてめぇは」

「え、そこそんにゃに気ににゃる?」

 そう言い、黒猫はしぶしぶ名乗る。

詩乃(しの)。神楽名乗ってるなら一回ぐらいは聞いたことあるんじゃにゃい?」

「は? 詩乃って……。嘘だろ」

「で、どうする? 死ぬより辛い思いしたくないなら今のうちだよ」

 信じられないというように見る神楽綾人に、詩乃と名乗る猫は気さくに話しかける。

「クソッ」

 そう吐き捨てると、神楽綾人は足早にその場を後にする。

「さてと、どこから手を付けようか」

 部屋を見回した詩乃は、優先順位をつけていく。

「まずは、柚葉かにゃぁ」

 そう言って、猫は背中の短剣を抜くと傷口に手を当てる。

 すると、全身の傷はみるみるうちに消えてなくなり、柚葉は起き上がる。

「……しのせんぱい?」

 おぼろげな意識の中、柚葉は猫のことを見て安心したように呟く。

「良かった。とりあえず解毒と傷の治療はしておいたから、しばらく安静にしといて」

 そう言って、次に八重沙羅のところへ行こうとするが柚葉に呼び止められる。

「待って、悠が……。悠はもう」

「……知ってる。最初から見てたから」

 柚葉は予想外の回答を受け、衝撃を受けていた。

「見てたって……。じゃあなんで、なんでもっと早く助けに入ってくれなかったんですかっ!!」

 柚葉の知る限り、悠は詩乃のことを師匠と呼び親しくしていたはずだった。

「もっと早く来てれば、悠は死ななくて済んだかもしれないのに!!」

 だんだんと意識がはっきりしてきた柚葉は、思ったことをすべて詩乃へとぶつける。

「柚葉にはわからないかもだけど、悠はあれでいいんだよ」

「なんなんですかっ」

 もっと言いたいことはあったが、ポケットに入れたままの携帯が鳴る。

「メッセージ?」

 タイミングが悪いと思いながら見るも、内容は嬉しいものだった。

「なんだったの?」

 不思議そうに詩乃が訪ねる。

「八重紗奈さんの保護ができたって、みやから」


 八重沙羅が来た日の夕方。

 柚葉はある作戦を思いつき、宮矢とエレナを双葉のいる禁書庫へと呼んでいた。

「で、話ってなんです?」

 不思議そうにする宮矢に柚葉はさっきまでの話と、今回の作戦の内容を話す。

「じゃあ、会長と悠さんが気を引いてる間に八重紗奈さんの保護をすると」

「でも、場所がわからないんじゃどうしようもないでしょ」

「みやの言う通り。だからここに来た」

 そう言って、柚葉は双葉の方を見る。

「あぁ、そーゆ―こと」

「どういうことですか?」

「この禁書庫にはこの街のありとあらゆる情報が保管されているからね。もちろんその中には、紅輪学園の全ての建物の地図もある」

「そういうこと。二人にはその地図を参考に八重紗奈さんを見つけて、保護してほしい。頼める?」

 そう言い柚葉は二人の顔を交互に見る。

「わかりました。そういうことであれば、頑張ります!」

「あ、私も良いけど、それって悠さんとかには言っていいやつ?」

「いや、出来ればここだけの話にしてほしい。だって悠は口軽そうじゃん」

 そして、柚葉が神楽綾人と相対しているのと同じころ。

 宮矢とエレナは地図を片手に部屋をしらみつぶしに回り、予想より早く八重紗奈のいる部屋を絞れてはいた。

「あの見張りどうしましょう」

 しかし、残りの部屋に行くための扉の前には二人の見張りがいて、強行突破はできそうにもなかった。

 どうすればいいのかわからない私はみやさんに方法を聞くも、帰ってきたのは意外な答えだった。

「あと少し」

「え?」

「予想通りならもうそろそろ会長と神楽綾人はぶつかる。そしたら……」

 そこまで言うと、急に廊下の電気が消え、見張りの人たちの慌てた様子でいる。

「じゃあ煙吸わないように口押さえててね」

 そう言ってみやさんは、曲がり角から茜ちゃんと戦った時に使ったボールを見張りの方へと投げ込む。

 着弾した衝撃でボールは破裂し、中から強力な睡眠ガスが溢れる。

 それを吸った見張りは、気絶したようにその場に倒れる。

「よしっ、今のうちに」

 そう言って、みやさんは扉を開ける。

 途中大きな物音がして建物中が揺れるような感覚があったが、八重紗奈さんのいる部屋を見つけるまでに時間はあまりかからなかった。

 見つけた部屋の中には縛られた状態の八重紗奈が床に座っていた。

「エレナは拘束といてあげて、私は会長に連絡しとく」

 言われた通りにしようとするも、私は手を動かすことができなかった。

「そういえばさ……」

 振り返った宮矢が見たのは、意識を失い地面に倒れるエレナだった。

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