4話 生徒会
エレナとみやが話をした次の日。
紫陽学園の生徒会室に3人の姿があった。
「困った事になった」
「困った事になりましたね、会長」
「あ、あの、何かあったんですか?」
長机に突っ伏す二人に話が追いついていないエレナは困惑していた。
そんなエレナに顔を上げたみやは不機嫌そうな声色で話す。
「嫌な話と一見良さそうで実はめっちゃ嫌な話、どっちから聞きたい?」
「何ですか? その二択になっていない二択は」
「だって本当のことだし……。で、どっちから?」
「じゃあ嫌な方からお願いします」
「記憶喪失者がまた一人増えました〜」
手をパチパチと叩きながらやけくそ気味に話すみやに、会長は耳を塞ぎ聞こえないフリをする。
「それで、一見良さそうな方は?」
「それはね……」
みやが内容を話し始めるのとほぼ同時に生徒会室のドアが開き、一人の男子が教室に入る。
それが原因なのか、会長は頭を抱え唸り声を上げる。
「一見良い話は彼です」
「うん、二人が困っているって聞いたから手伝いに来たんだけど、一見良い話ってどう言う事かな?」
「あの、みやさん。この方は?」
「初めましてだね! 君がエレナちゃんかな? 僕は三年の不知火悠。よろしくね!」
そう言って手を差し出す悠に応えてようとして手を出そうとするが、あげかけた手を会長につかまれる。
「やめときなさい」
「ひどいなぁ、僕はただ女性に礼儀を尽くしたいだけなんだよ?」
「礼儀? 何年も私をストーカーするのも礼儀だって言うの?」
「ストーカーなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。僕はただ愛を誓った人の側に居たいだけのに」
そのまま言い合いを始めた二人に唖然としているとみやが少し離れたところから私を手招きしていた。
「あの、これは?」
「悠さんはね、中等部の時会長に一目惚れしてから事あるごとにこんなんでね……。悪い人じゃないんだけど」
「ところで、会長ってゆずさんて言うんですね」
「あ、自己紹介してなかったか。会長! お楽しみの所すいませんけど、私たちまだ自己紹介してません」
会長は悠さんとの言い合い(?)を一方的に中断すると私に方を向き姿勢を正す。
「紫陽学園三年生徒会会長、アテナ連邦生徒会所属戸田柚葉。改めてよろしくね! そして」
「はい! 同じく紫陽学園二年生徒会宮矢咲夜、よろしくね。それと」
「あ、僕もやるの? じゃあ改めて、紫陽学園三年生徒会副会長不知火悠だよ。困ったことがあれば何でも相談してね」
「やめときなさいエレナ。こんなやつ関わらない方が良いわよ」
「あれ? もしかして妬いちゃった? 全くゆずはもうすこし素直になった方が良いんじゃないか?」
「はぁ? もしかしなくても妬いて無いから!」
こうして再び始まる痴話喧嘩を眺めていると、みやが私の横に立つ。
「改めてようこそ紫陽学園へ。騒がしい所だけどよろしくね!」