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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第三章 覚醒編
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46話 内1名死亡 1名意識不明②

「ねぇ、流石におかしいと思わない?」

 八重沙羅の案内で設備の中を移動している三人だったが、ここまで一度も神楽綾人の手下と思われる人に会わなかったことを、悠は怪しんでいた。

「そうだけど、出来る限り戦闘は避けたいから」

 駆けながらそんなことを話していると、ドアの前で八重沙羅が立ち止まる。

「ここです」

 八重沙羅が学生証をかざすと鍵が開き、自動で開く。

「早いのは感心するけど、余計なのも連れてこないでよね」

 部屋の奥に座る少年、神楽綾人が不満そうに言う。

 立ち上がると柚葉に向かって礼をする。

「初めまして、お会いできるのを楽しみにしておりました。戸田柚葉さん」

「やっぱりか。私に用があるなら、こんな事せずに直接くればいいのに」

「あぁ、僕がしたいのは殺し合いなんで。普通に行ったら断るでしょ?」

「当たり前でしょ……」

 あきれる柚葉と神楽綾人に八重沙羅が割り込む。

「それより、紗奈は無事なんでしょうね」

「そんなに気になるの?」

 そう言って、神楽綾人はそばに控えてる人を呼ぶ。

「ねぇ、返しといて」

「えっと、私共はどこにいるか知らないのですが……」

「そうなの? 俺もしらないんだけどなぁ。どうしたものかなぁ」

 神楽綾人はわざとらしく頭を抱えながら言う。

「最初から紗奈を返す気なんてなかったってこと?」

「嫌だなぁ、話聞いてなかったの? どこにいるかわからないんだって」

「ふざけんなっ!」

 八重沙羅は地面を強く踏み込み神楽綾人へと駆けようとするが、少し進むと八重沙羅の肩に静かに飛んできた短剣が刺さる。

「ッ!!」

 崩れるように地面にうずくまった八重沙羅は首を抑え、苦しそうのもだえる。

「八重さん!」

 柚葉と悠は駆け寄ったのを見て、神楽綾人は不服そうに頭をかく。

「はぁ、せっかく用意したのを無駄にしやがって」

「何したの?」

「はぁ? それ言う必要ある?」

 悠は沙羅に刺さった短剣を抜くと、自分の指に切り傷を作る。

「これっ」

 悠は胸を抑えるようにして地面に両手をつく。

 全身からはとめどなく汗が溢れていた。

「ちょっと、悠。大丈夫?」

「大丈夫……。けど、これ少しまずいな」

 しばらくそうしていた悠だったが、しばらくすると呼吸は落ち着いていた。

「悠、解毒できるの?」

「自分の体ならすぐできるけど、人の体だと時間がかかるかも」

「じゃあそっちに集中してて」

「ゆずは?」

「せっかくの機会だからちょっと本気出す」

 柚葉は髪を結ぶと神楽綾人に相対する。

「お、いいねぇ。やる気になってくれてうれしいよ」

 笑いながら指を鳴らすと無数の剣が作られ、柚葉へ向かって飛んでいく。

「ゆずっ!!」

 柚葉のことを横目で見ていた悠は、つい声をかけてしまう。

「大丈夫」

 そう言い柚葉が手を前に出すと、鎖が二本伸びていき飛んでくる剣をすべてを弾き地面や壁へと突き刺す。

「はは、すごいっ。家のまがい物とは全く違う。最高だよっ!!」

「私は別に褒められても嬉しくないんだけど」

「そう言うなってっ!」

 満面の笑みでいう神楽綾人の背後には先ほど以上の数の剣があり、次々と柚葉へと飛んでくる。

「ちょっと、数どうなってるの」

 そう苦言を零しながらも、柚葉は二本の鎖をうまく操り、正確に剣を弾き返していく。

「おかしいな、鎖十本くらい使えるって聞いてたけど。何企んでる?」

「言うわけないでしょ」

「そりゃそっか」

 神楽綾とは次々剣を打ち出そうと思っていたが、ふと違和感に気づく。

 それとほぼ同時に柚葉はニヤリと笑う。

「見つけた」

 そうつぶやくのと同時に部屋の照明が落ち、部屋は暗闇に包まれる。

 神楽綾人は一瞬のうちに見えなくなることのデメリットに気づき移動しようとするが。

「足が動かない」

 その足には地面から生えた鎖が何重にも絡まっており、到底すぐにほどけるようなものではなかった。

「クソがっ!!」

 やけくそ気味に剣を飛ばしていくも、すでに柚葉は元居た場所にはおず、あちらこちらから鎖の音がなる中では正確な位置を見るけることは不可能だった。

「あぁ、鬱陶しい!」

 そう叫び、神楽綾人は最終手段をとる。

「みんなまとめてっ!!」

 神楽綾人は部屋中をカバーしても有り余るほど多くの短剣を作り、文字通り剣の雨を降らせる。

 全てを避けきれないと思った柚葉は、自身の周りを鎖で覆う。

 そして同時に照明がつくと、柚葉の目に入ったのは意外な光景だった。

「悠っ!!」

 地面に所せましと刺さる短剣のなか気を失った八重沙羅に覆いかぶさるようにする悠の背中には何本もの短剣が深く刺さり、地面は流れ出る血で赤く染められていた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ」

 力の抜けた悠を抱えた柚葉は激しく泣き叫ぶ。

 止血しようとするも、すでに脈拍は感じられなくなっていた。

「やだ、ねぇお願い。目を開けてよ……」

 柚葉は頭の中は霞がかかったように感じ、何も考えることはできなかった。

 一方、神楽綾人も少なくない疲労を感じていた。

「あぁ~疲れたぁ!」

 軽く伸びをしながら神楽綾人は声をだす。

 そして、柚葉の方を見て落胆したように声をかける。

「はぁ、これで全力なら期待外れもいいところだよ」

 その声が聞こえていたのかはわからないが、柚葉は悠の亡骸を地面に寝かせると、再び神楽綾人に相対する。

 顔はあふれる涙で濡れ、目は神楽綾人のことを強く睨んでいた。

「ぶっ殺す」

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