42話 学園祭④
その晩、柚葉は悠の部屋を訪ねていた。
「それで、話って」
「悠にはまだ言ってなかったんだけど、エレナの事で」
予想外の切り口に悠は一瞬驚くが、柚葉は気にせず話をし始める。
「つまり、人工生命体って事? 一緒にいても全然そんな感じなかったけど」
「まだその疑いがあるってだけだけど。そもそも技術的に可能なのかとかは私より悠の方が詳しいでしょ?」
そう言って柚葉が精密な検査データを渡すと、悠はパラパラと紙をめくっていく。
「そうだなぁ。僕が知る限り不可能じゃないと思う。というのも、過去に何人かやろうと思った学者がいたらしいんだけど、倫理的な問題とかで研究が凍結されてるんだよ。まぁ、噂だと当時の連邦会が技術の完成と公開を恐れて無理やり止めたともいわれてるけど。それに、体の作りがほとんど人間と同じだから、新しく作ったって言うより元々あるものを弄ったて言われた方がしっくりは来るかな」
「それって改造人間って事?」
「そう。ただ、分野的に僕よりししょーの方が詳しいから、聞きに行ってみるのもありかもね」
「悠の師匠って詩乃先輩でしょ? 大丈夫なの?」
「まぁ、だいぶ個性的なのは否定しないけど学者としての腕は本物だから。それで、この事はエレナちゃんには言ってるの?」
「ううん、まだ。知ってるのは私とみやぐらい。確証がない上、記憶もないのにこんなこと言って混乱させたくないし。タイミングを見て話そうと思ってる」
「そう。でもあまり遅くならないようにはした方がいいかも。僕もいろいろ調べてみるよ」
「ありがとう。助かる」
悠たちの話している学生寮のすぐ近く、校舎の屋上にある一人と一匹の影が二人の様子を見ていた。
一つは白い袴を着て雑面を付けた少女、もう一つは少女の頭の上に乗っかっている一匹の黒猫。
黒猫は少女の頭の後ろを尻尾の先でペチペチとはたいていた。
「ねぇ~まるちゃん~、悠たち何話してるのかにゃ~」
「私に聞かれましても。意外と先生の悪口かもしれませんね」
「そう言わずにさ~もうちょっと近づけにゃいの?」
「これ以上近づくと向こうに気づかれると思いますけど、よろしいのですか?」
「別に、隠れる必要もにゃいんでしょ?」
「そうですけど。というか、そろそろ降りていただけませんか? 重いです」
「はぁ、しょうがにゃい」
黒猫はひょいっと少女の頭から飛び降りると、その足元で姿勢よく座る。
「それで、いつまで油を売っているおつもりですか?」
「油を売るもにゃにも、二人の様子の確認も仕事のうちでしょ?」
「そうですね。ですが、あくまでそれはおまけで、本題は出雲心音の状態の確認だってことをどうか忘れないようによろしくお願いします」
「はぁ、ほんとにうちの子たちに似てきたよね。私は少し寂しいよ」
溜息をつきながら、黒猫は校舎の中へと続く扉へと歩いていく。




