40話 学園祭②
「久しぶり……。4年ぶりくらいになるのかな。大きくなったね」
「今更会いに来て何の用ですか」
「心音、一緒に帰ろう? それで、また前みたいに」
「前みたいに?」
母親の言葉に引っかかりを感じた心音は、俯いてた顔を上げる。
「お父さんはお前が殺しておいて、どうしてそんな事が言えるの?!」
「あんたっ! 何でそれを!!」
心音が知っていたことに驚いた母親は心音に迫っていき、後退りしようとした心音はバランスを崩して転んでしまう。
逃がさないと言いたげに肩を掴もうと手を伸ばすが、寸前で現れた人によって止められる。
「いやー危ない危ない。悪いですけど、生徒へのお触りは禁止なんですよ」
「急に出てきて何なの?」
「はじめまして、でもないのか。紫陽学園の不知火と言います」
「どうして……」
「ごめんね、本当はもう少し早く来たかったんだけど」
「はは、そうか。心音があのことを知ってるのもそう言うことか。紫陽の情報収集能力がここまでとは思わなかったわ」
「いやー、流石にそこまで褒められるとむず痒いですねぇ。実際は連邦会にも協力してもらってますけど」
「連邦会って……。何で。こんな小さな事で協力するとは思えない」
「それがそうでもないんですよ」
「不知火さん、私はもう大丈夫です」
「そう?」
心音は立ち上がると悠の横に立つ。
その目には力がこもっていた。
「あなたが私をどうしたいのかは知りませんけど、私がここに居たい気持ちは変わらないし、家に戻ることもありません。それと、もう私に関わらないでください。皆んなを待たせてるのでもう行きますね」
そう宣言し友人を追いかける心音の後ろ姿を、母親は静かに見ていた。
しばらくそうしていると、静かに口を開く。
「はぁ、こんなんして何の意味があるんだか」
「まぁまぁそう言わないで、自分で決断させることに意味があるんだから」
「それにしても、言霊って便利ですね。自分の記憶も思い通りみたいですし」
「冗談やめて頂戴。それより、これで約束は果たしたってことでいいんでしょうね」
「あー、そう言いたいんですけど、ここからが本題なんです」
「本題?」
「『博士』って名前の人、聞いたことありません?」
「コードネームか何か? 悪いけど知らないわね」
「そっかぁ。じゃあ不知火真奈は?」
「さっきから何なの。人探しなら頼る相手が違うんじゃない?」
「そっか。こういうことはあんまりしたく無かったんだけどな」
悠は一瞬のうちに首を掴み、自身を中心に壁や体から赤い炎があがる。
「もう一回だけ聞くぞ。不知火真奈って名前に聞き覚えは?」
「この炎。そうか、お前はあの時のガキか」
「なんだよ、覚えてんじゃん」
「はっ。ならもう知ってるんだろ? 博士の所に行った人がどうなるのかも。とっくに手遅れだよ」
「それでも探さなきゃいけないんだよ。それがここにいる唯一の理由だから」
「私らも居場所なんて知りやしないよ」
そう言い彼女が手を振ると、燃えていた炎が全てかき消される。
「話が終わりならもう良いでしょ。離してちょうだい。それと、これで取引は完遂されたってことで、連邦会の方はやっておきなさいよ」
渋々悠が手を離すと、元来た道を辿っていく。
1人その場に残った悠は拳を握ると、自分に言い聞かせる様に呟く。
「もう2度と大切な物は失わない、それだけが生きている理由。だから、絶対に」




