38話 親子でも
その後、部屋の炎を消し終わった悠さんが思い出したように聞く。
「そう言えば、これって出雲さんが書いたものだよね?」
そう言い悠さんが差し出したのは、私たちがここに来て最初に見た脅迫状だった。
「それは、その……。ごめんなさい!」
「別に本気で爆破しようとは思ってないでしょ? あわよくば学園祭が中止になればいい。その位でしょ?」
「でも、皆さんに迷惑かけて」
「別に、このくらい迷惑とは思ってないよ。それに、お母さんに捕まりたくないからだよね?」
それを聞き、出雲さんは驚いた様子で悠さんを見つめる。
「なんで……」
「言ったでしょ? 調べたって。今まで1人でよく頑張ったね。後は僕たちに任せてゆっくり休んで」
出雲さんが寮へと戻るのを見届けると、悠さんが話し始める。
「出雲さんさ、母親に売られたんだよ。僕たちのとこに持ってきた物は全部母親からだった」
「そんな事って……」
「あるんだよ。いくら親子でも人間だから、何かがきっかけでね」
「それじゃあ、学園祭に乗じてさらってまた売ろうとしてたって事ですか?」
「それはわかんないけど、可能性は十分にあるだろうね。普段は簡単に入れないけど、学園祭は一般にも開放してるからチャンスは十分にあるんじゃない?」
そんな。
どうにか出来ないのかな。
「まぁ、後は僕の方で上手くやっておくから、エレナちゃんは何の心配もしなくても大丈夫だよ」
そう言うと、悠さんは軽く伸びをする。
気付けば雰囲気もいつもの感じに戻っていた。
「さて、夜も更けてきたし。今日はもうお開きにしよっか。明日もやる事沢山だし、夜更かしは肌に悪いからね~」
悠さんはそう明るく振る舞うが、心配するなって方が無理だと思う。
あと3日もすれば学園祭は始まってしまう。
そんな私を見かねたのか悠さんは近づいてくる。
「はぁ、仕方ない。えいっ!!」
「ッ!? 何するんですか!?」
悠さんにデコピンされたおでこを抑えながらその場にしゃがみ込む。
「後は僕が何とかするって言ったでしょ? だからエレナちゃんは気にしないで祭りを楽しめばいいの!」
「そんなこと言っても、気にするなって言う方が無理ですよ」
「何かが起こるかも知れないってだけで、本当に起こるとは限らないし、もしそうなっても大丈夫なように僕が見てるから。事前に出来ることも出来る限りやるつもりだから、安心して祭りを楽しんでて」
「でも……」
「でもじゃありません! 本当にダメだって時はちゃんと話すし、ゆずにも協力してもらうから。だから大丈夫」
そこからの数日間は何事もなく過ぎていった。
相変わらず悠さんは居たりいなかったりしたが、幸い急いでやらなきゃいけない事はそんなになかったのでなんとかなった。
入院していた環さんは目が覚めるとすぐに学校に戻ろうとしたらしいが、大事を取ってしばらくは入院生活は続くそう。
そんなこんなで学園祭当日を迎えた。




