35話 病院
「原因は疲労とストレス。数日は入院してもらうけど、ちゃんと休めば大丈夫だよ」
「そうですか」
医者に診てもらい重症じゃないと知り、音葉はこわばっていた体から力が抜け落ちる。
「もう少しで学園祭なんでしょ? 生徒会が忙しいのも分かるけど、先輩の君がちゃんと見てないでどうするの?」
「はい。すいません」
「まあ、分かってるならこれ以上は言わないけど」
「何か言いたいことがあるなら聞くけど?」
「あ、あの。今晩病室に泊まっても良いですか」
「別に、そんなにひどい状態って訳でもないし、キミからすれば赤の他人でしょ? そもそも規則で家族以外の宿泊は認められてないし」
「それは……。でも」
「ま、目が覚めたとき1人じゃ可哀想か。特例で認めてあげるけど、ちゃんと学校に外泊の許可はもらって来てからね?」
「はい! ありがとうございます」
音葉が部屋を出たのを確認すると、医者は受話器を取る。
「あーもしもし、紗奈? さっき君たちの弟診たけど、前と比べて相当弱ってたよ? え、話し方が違う? そりゃ今は仕事モードですからね。って今はそんな事はいいんだよ。一応入院させるから、折を見て見舞いにでも来なって沙羅に言っておいてね。んじゃね」
そう言い電話を切るのと同時に看護師が一枚の封筒を持ってくる。
「連邦会からですけど、今度は何やらかしたんですか?」
「ん? もしかして仕事のたんびに何かやらかしてるって思ってる? 侵害だにゃ〜。これでも仕事モードの時ははちゃんとしますよ〜」
「そうですか。では、仕事中なのに語尾が出てるのは私の聞き間違えですか」
「おっと。危ない危ない」
「それで、さっきの子は結局泊まるんですか?」
「まぁ、沙羅が任せた子だから大丈夫じゃない?」
「そうじゃなくて、勝手な事されるとそのしわ寄せがこっちに来る、って皮肉を言ったつもりだったんですけど」
「それはごめんにゃさい」
「あーはいはい、もういいです。真面目な反応を期待した私が馬鹿でした。今日はもう閉めるので散歩に行くなら遅くならないようにしてください」
「はぁ、これでもみんなのボスなんだけどなぁ」
医者は白衣を脱ぐと椅子にかけると両手を顔の前で合わせる。
一息つくとその場に医者の姿はなく、代わりに真っ黒な猫が一匹座っていた。
「さて、今日はどこまで行こうかにゃ〜」




