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拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第一章 紫陽学園編
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2話 身元不明

「おはよう、エレナさん」

 意識が戻ったエレナの目の前は白いキツネの面をつけた少女が待ちくたびれたように立っていた。

「ここはどこです? あなたは?」

「ん? ここは……。いや、勝手に話すと怒られるか」

 面の少女はどこまで話して良いのか悩んでいるのか、顎に手を当てうつむいていた。

「じゃあ、せめて私が縛られてる理由くらい教えて貰えます?」

 私は縛られた手足を動かそうとするが、かなりキツく縛られているらしくびくともしなかった。

「あぁ、それは会長のしゅ……怪しい人はほら、何するかわからないじゃん。ね?」

 え?

 しゅ、なに?

 もしかして趣味?

 そんな事を考えていると、部屋のドアが開き、小柄な黒髪少女が部屋に入った。

 すると、さっきまで頭を抱えていた少女は姿勢を正し、黒髪の少女に向く。

「お疲れ様です、会長」

「うん、上が予想以上に頑固で疲れた。あの子は……、起きてたのね。おはよう、気分はどう?」

「縛られてる事以外は……。ちなめにこれ貴女の趣味ですか?」

「趣味? 違うけど……」

 会長と呼ばれたその少女は瞬時に事を理解したらしく、もう一人の少女の顔を覗き込む。

「み〜や〜? この子に何か変なこと教えた?」

「会長? 笑顔が怖いですよ?」

「うん、誰のせいかな〜?」

「え、あちょ、会長たんま。あの、エレナちゃんからもなんか言って?」

 追ってから逃れるため、みやと呼ばれた少女は私の後ろに隠れてSOSを出す。

「エレナちゃんもごめんね、みやの馬鹿に付き合わせて。みや、早く縄解いてあげて」

 面の少女はぶつぶつと小言を言いながら縄を解くと会長の後ろに静かに立ち、それを確認すると会長がポケットから紙を取り出し声に出して読んでいく。

「身元不明人エレナを暫定的に一連の記憶喪失事件の被害者とし、その身柄を生徒会にて引き取り、生徒会の管理のもと紫陽(しよう)学園への滞在許可を認めるものとする。と言うことで、詳しい話は後でするから、エレナちゃんはとりあえず外にいる係の子に案内してもらってね」

 そういうと面の少女は部屋のドアを開け、外に出るように促す。

 え、それだけ?

 なんか他にないの?

 私色々聞きたいことあるよ?

 そんな事を考えながら、私は係の子と二人に交互顔を向ける。

 そんな空気に耐えかねたのか、狐の面の少女が口を開く。

「あー、会長。何か他に無いんです? 私が言う事じゃ無いですけど、今私たちかなりかなり怪しいですよ?」

「まぁ、そうだよね。とりあえず、エレナちゃん、私たちはあなたの敵じゃ無い。って言っても、すぐに信じろなんて言わない。そもそも、何がなんだか分からないだろうし。ただ、私たちも今かなり忙しくて、あなたにかかりっきりになれないの。だからお願い、今は私たちの言う通りにして欲しい」

 そういうと、会長は頭を下げ、それを見て慌ててみやも頭を下げる。

「まぁ、私もわからない事だらけですし……。ただ、後で絶対に話してもらいますからね」

「ありがとう、助かる」

 まだ納得し切れてないけど、私は腹を括り部屋を出て係という子について行く。


「ところで会長。さっきの内容なら上からの許可もすぐ降りる気がするんですけど、何か他に言うことはないですか?」

「うわぁー、これだからみやは嫌なんだよ……。なんでそんなに察しが良いのかねぇ……」

「え? もしかしなくても褒めてます? あの会長が?」

 先程の仕返しのつもりか、みやはここぞと会長の事を煽り立てる。

「うるさい、それよりこれ」

 そういうと、会長はポケットから先のとは別の紙を取り出してみやに渡す。

「何ですか、これ」

「あの子の検査結果。体に異常は無し。他の被害者と似てる干渉痕があるのと、本人の状態から一連の事件の被害者と断定した」

「じゃあ何が問題なんですか?」

 そう言いながら紙に目を通すみやは検査結果を信じられないものでも見るかのように読み進める。

「うそ、こんなのあり得ないっ! もしこれが本当なら大問題ですよ」

「大問題で済めばいいのだけどね……。下手したら大戦争が起きるかもね。くれぐれも他の人に、特に本人には言わないようにね」

 そういうと会長はみやを置いて部屋を出て行き、一人残されたみやは床に座り込む。

「人工的に作られた人間の可能性? そんな、なんで」

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