20話 月明かりの密会
アテナの中央、セントラルタワーの一室。
壁一面ガラス張りのその部屋からは、明かりに照らされたアテナが一望できた。
白のワンピースドレスを着た白髪の少女、ステラ・ヴァレンタインは物思いにふけっていると、窓の外から部屋へ風が吹き込む。
ステラが振り向くと、両手を広げても届かないほど大きな黒い翼を生やしフードを被った白と黒のオッドアイの少女が椅子のすぐ後ろに立っていた。
「久遠様でしたか。今日は外からなのですね」
「いやー、さっきまで人が居たでしょ? ばったり会っちゃったら大変だから」
「何か飲まれますか?」
「んじゃ、何か甘いやつがあれば」
そう言い久遠はステラのいる位置と机を挟んだ反対側に座る。
「そう言えばさっき来てたのって誰か聞いても良いやつ?」
「あぁ、紫陽学園の生徒会長と少し話したい事がありまして」
「紫陽の……。あぁ、連邦会をクビにしたんだっけ」
「クビなんて人聞きの悪いこと仰らないで頂けますか? 相応の罰というやつです」
「それなら普通、学校会長も辞めさせるんじゃない? それとも、これも計画に必要なことだから?」
「まぁ、そうですね。いずれ彼女の協力は必要になります。なら首輪は付けておいた方が良いでしょう?」
「なんというか、可愛くないなぁ」
「他ならぬ貴女だけには言われたくありませんね」
ステラはジュースの入ったグラスを久遠の前に置くと、元いた席へと戻る。
久遠は待っていたと言わんばかりに一口飲むと気に入ったのか、あっという間に半分近くを飲み干す。
「それで、今日はどうされましたか?」
「そうだった。これを届けに来たんだよ」
そう言い久遠はUSBメモリを机の上に置く。
「これは?」
「紫陽にいる人形の情報。頼まれた通り跡は一切残さないようにしたから凄い疲れたけど」
「それはお疲れ様でした。でも、私が頼まなくてもご自分でも興味があったのでは?」
「まぁ、そうなんだけどね。同じ労働なら美味しい飲み物とお菓子が付く方が良いじゃん」
「そうですか。気に入っていただけたなら良かったです」
久遠は話半分に机に並べられた果物や菓子類を一つ一つ順番に食べていく。
「そう言えばあの妹の方はどうするの?」
「洗脳されてた事にして連邦会の管理下に置きます。後は本人の希望にもよりますけど」
「洗脳ねぇ。まぁ、実際間違っては無いか」
「いいえ、間違ってますよ。私がしたのは感情の増幅と道具と環境の提供。多かれ少なかれ元々彼女の持っていた気持ちを表に出したに過ぎません。それに、貴女と同じく彼女の記憶も弄らせていただきましたから、これで良いんです」
「そう。まぁ、私は目的さえ達成出来れば後はどうでも良いですけど」
久遠は興味なさそうに窓の外を眺める。
目下の街では、夜だというのに眩い光を放っていて、その様はまるでイルミネーションのようだった。
「綺麗だなぁ」
「そうですね。私が言うのも変な話ですけど、この街の発展は想像以上です」
「ふーん、なんだかんだ言って愛着湧いたりするの?」
「まさか。目的の為に必要な犠牲はいくらでも払いますよ。貴女もそうでしょう?」
「まぁ、そうなんだけどね」
「さて、少し長話が過ぎましたかね。まだ猶予が有るとはいえあまり遊び過ぎないようにお願いしますよ」
「別に、ただ遊んでいる訳じゃ無いんだよ? せっかく完成形が目の前あるんだし、色々と気になるからね」
「そうですか。では、いい器の完成を期待していますよ」




