16話 戸田茜
私は幸せな子だった。
優秀な実業家の子として生まれ、どんなに忙しくても出来るだけ一緒に居てくれる両親の愛を一身に受け育った。
私が6才だったある日、両親は知らない娘を連れて帰ってきた。
「茜、この子は今日から新しい家族になるんだ。挨拶しなさい」
「はじめまして、とだあかねです」
「かぐら、ゆずは……。です」
そう言う彼女は痩せ細った体にボロボロの服を着ていて、子供ながらにただ事じゃないと理解できた。
そこから一年と少し、柚葉がこの家に馴染むまでに時間は掛からなかった。
気づけば『お姉ちゃん』と呼ぶようになり、私達は本当の姉妹の様に仲良くなっていた。
「それでね、今日学校でね。ってどうしたの? 急に泣いて」
「何でだろ……残してきた家族のこと思い出しちゃって。私1人だけこんな幸せになって良いのかなって」
「じゃあさ、助けに行こうよ」
「たすけに?」
「どう? 名案じゃない?」
「そんな、出来っこないよ。神楽家はとっても厳しいし、もし助けてもその後どうやって逃げれば」
「わからない! でも、私とお姉ちゃんが協力すれば何とかなる!」
「そんな」
今考えるとなんとも子供らしい考えだと思うが、結果としてこれが全ての始まりだったのだから不思議なもんだ。
数ヶ月後柚葉にギフトが与えられ、プレイヤーとしての才覚を発揮し始めると、生活は一変する。
どこに行ってもお姉ちゃんの話で、私は『戸田柚葉の妹』になった。
家の中でも話すのはお姉ちゃんの事ばかりで、次第に私は部屋に引きこもるようになった。
「みんなお姉ちゃんばっか見て、誰も私を見てくれない」
そんな時もお姉ちゃんは毎日声をかけてくれた。
最初は何の嫌がらせかって思っていたけど、段々とドア越しにだけど話をするようになっていった。
お姉ちゃんだけが私を見てくれる。
お姉ちゃんだけが私と話してくれる。
「あのね、私。この家を出ることにしたの」
「なんで……。私にはお姉ちゃんが必要なの!」
「ねぇ、私の前の家族の話したの覚えてる?」
「覚えてるけど……。何の関係が」
「私さ、やっぱり皆んなを助けにいきたい。そして、守ってあげるだけの力が欲しい。それに、私は何処にいても茜のお姉ちゃんだし」
「そんなの、ずるいよ……」
「大丈夫。茜はもう1人でも大丈夫だから」
違う、私にはまだお姉ちゃんが必要なの。
何でわかってくれないの。
誰が私からお姉ちゃんを。
そっか、前の家族がいるからいけないんだ。
記憶消したら私の所に帰ってくるかな。
それとも、もっとしないとダメかな。
あぁ、大切なお姉ちゃん。
今、迎えに行くからね。
そして、2人だけの世界を作ろう。




