表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拝啓、あの世の私へ  作者: りんごあめ
第六章 家族編
100/145

94話 ペットの鳥さん

ある日の夕方、私とエレナちゃんはルナさんから荷物の整理を頼まれていた。

「ねえ、エレナちゃん。森のお姉さんってどんな人なの?」

「しらぬいさん? うーんとね、やさしくてきれいでかっこいい!」

他人のことであろうに、彼女は自慢げに答える。

「不知火?」

聞き間違えでなければそう言ったはずだ。

「そうだけど。なんで?」

「ううん、知ってる名前だったから」

悠さんとの関係は分からないが、過去だということは祖先という事になるのだろうか。

「ふーん。会いに行く?」

「いいの?」

「たぶんびっくりすると思うけど、いいと思うよ。あ、でも先にこれをかあさまにわたしてこなきゃだった」

コロコロと良く表情の変わる彼女は、荷物を置くとかけていたカバンからある物を取り出す。

「はい、これで森の中でもまよわずに行けると思うよ。先に行ってて~」

そう言って廊下を駆けていく。

渡されたのは手に乗るサイズの羅針盤で、針は森の方を向いていた。

「これに従って行けばいいのかな」


針の方向に向かって森を進んでいくと、突然の衝撃に襲われる。

地面に倒されると、逃げられないよに体を抑えられた。

「誰だ」

背後にかけられる声は明らかに敵意が込められていた。

「どこでそれを手に入れた」

「借りたんです、エレナちゃんから」

「お前がか? 信じられるわけないだろう」

どうすれば逃れられるか考えていると、軽い足音が近づいてくるのが聞こえる。

「あー、あおいだ。いつもどったの? って、おきゃくさまー!」

彼の下に客人がいることに気付いた彼女は、慌てて駆け寄る。

「不審者に近づいてはいけません。もしお嬢様に何かあれば、僕が叱られます」

「あらあら、賑やかだと思ったら葵だったのね」

「先生……と桜」

少し遅れて現れるルナを見て安堵した様子の葵だったが、その陰から桜が出てくると一気に顔をしかませる。

それは桜も同じで、固い顏のまま話す。

「その方は先生のお客様です。すぐに放してください」

「……かしこまりました」

納得はしていない様子だったが、言われた通りに拘束するためにかけていた力を抜く。

それでも起き上がるために手を貸すとかはせず、不愛想な顔つきのまま頭を下げる。

「神楽葵と言います。先ほどは失礼いたしました」

「でも、なんで葵がここにいるの? 帰りは明日の予定のはずだったわよね」

「用事が想定よりも早く終わりましたので、その分早く戻ってまいりました」

「桜、私は葵と話があるからエレナと一緒に彼女を案内してあげて」

「わかりました」

桜が頷くと、ルナは葵を連れて家の方へと戻っていく。

「今のは?」

「神楽葵、私と同じく先生に保護された孤児です」

「神楽……」

またしても知っている名前。

神楽家は歴史のある家だという話は聞いてはいたが、ここまで来ると偶然で済ませられるのか疑わしくなる。

そもそも中央の管理をするヴァレンタイン家と神楽家に関係があるというのも初耳だ。

頭の中で知っている情報との照らし合わせをしていると、エレナちゃんは不思議そうな様子で疑問を口にする。

「なんでさくらとあおいってなかがわるいの?」

「別に、仲が悪いわけじゃ……ああいうがさつなのが嫌いなだけ」

「みんな仲良くってルナさんは言うと思うよ」

「……考えておきます」


「結果から言いますと、新しい覚者は見つかりませんでした」

一方、家へと戻った二人は床一面に広げた地図に次々と書き込みを加えていく。

「そう」

「ですが、一名今後覚醒するであろう可能性のある子どもを発見いたしました。現在目をつけさせていますが、いかがいたしましょう」

そう言いながら、葵はある場所に置物を立てる。

「じゃあ継続してちょうだい。兆候が見えたら私か桜に連絡して」

その後も一通り報告を聞くと、ルナは最後に本題を訪ねる。

「アステリアは?」

「特徴に一致する人物は発見できませんでした」

「まぁそうでしょうね。あの子が簡単に見つかるとは思わないもの」

期待はしていないような言い方をするも、葵は何年も同じようなやりとりをしているからか言葉の裏にある感情というのも何となく見えてくる。

あれこれと策を巡らせるも出来るなら早くに止めたい、そう言う気持ちなのだろう。

「あの、さっきのは」

「私の特別な客よ」

「あの桜がなついているなんて信じられません」

「そう? あなたよりかは人懐っこい方だと思うわよ」

「あれがですか? 初対面で僕を殺そうとしたのに」

桜がこの家へと来たその日、同じくこの家に滞在していた葵は壮絶な出会いをした。

今思えば、あの時からポテンシャルの高さは感じられたのかもしれない。

「それはあなたが桜の気に障ることを言ったからじゃない」

「それは……ですが、その後も何かと敵対視してくるのは自分の方が出来がいいとでも言いたいのでしょうか」

「あなた達は得意とすることが違うから一概には比べられないけど、成長速度も含めると確かに桜の方が優秀ね」

そう言ってルナは静かに笑う。

かく言う葵も、元々は力に振り回されるだけだったのを短時間で修正するなど優秀なことに変わりはない。

それでも、桜よりも早くから教えを受けていた葵からすれば追い抜かされるというのは面白くないのだろう。

「笑いごとではありません」

「いいじゃない。あなただって比べる相手がいないと頑張り甲斐がないんじゃない?」

「どうでしょう。先生は、そのアステリアって方をそう言う風に思っていたのですか?」

「アステリアは……そうね、似たような感じなのかもしれないわね。私が色々なものに興味を持つようになったのも彼女がいたからだもの」

彼女は遠くの空を眺めながら、過去を懐かしむ様子で言う。

ルナ・ヴァレンタインという人格を作るのに、アステリアは最も大きく関わったと言っても過言でもないかもしれない。

「せっかくだから、しばらくはゆっくりしていきなさい」

「いえ、明日の早朝には発とうかと」

「そう。悪いわね、大変な仕事ばかりで。部屋はいつもの場所のを用意しているから、せめて今晩ぐらいはゆっくりしていきなさい」


「あれー、いつもこのへんにいるんだけどなぁ」

桜ちゃんの案内の後ろを追いしばらくの間歩いて行くと、木々に囲まれてログハウスが立っていた。

だがエレナちゃんはドアへは向かわず、家の屋根の上の方をじっと目を凝らして見ていた。

「今日はいないね」

「いつも屋根の上に居るの?」

素朴な疑問だったが、二人はしばらくの間顔を見合わせる。

「まぁ、大体屋根の上か木の上に居ますね」

もう二人はそれが当たり前という様子で、桜ちゃんは淡々と答える。

家の外に居ないと判断したからか、エレナちゃんは改めて玄関ドアへと向かう。

「さくらー、かぎかしてー!」

「ちょっと待ってて」

桜ちゃんは首から下げている鍵の束をとると、その中から一本を差し出す。

それを使って鍵を開けると、扉は音を立てて開く。

エレナちゃんがその隙間から顔を覗かせると、家の奥の方に向けて声をかける。

「お姉さーん。いるー?」

「返事がありませんね」

「入ってみる?」

「入るよー」

家の中はきちんと整理されている、というよりは最低限の物以外は置かれていなかった。

迷わず進むエレナちゃんは、一室の扉を開ける。

「やっぱりねてた」

「これが不知火さん?」

扉を開けると、そこら中所せましと置かれた本の山に囲われ、悠さんを女性にすればこうなるだろうという想像そのままの女性が横になっていた。

「おこす?」

「流石に申し訳ないしそこまではいいよ」

何か話が聞ければと思っていたが、流石に寝ているところを起こすのは気が引ける。

「なんだ、言いたいことがあるならば言えばよいではないか」

このまま引き返そうと思っていると、ふと声がかかった。

聞き馴染みのない声で、その主を探すのにも手間取る。

何せ、相手は鳥の人形だったのだから。

「あ、鳥さんだ」

「鳥さん?」

「不知火さんのペットです」

「ふんっ、我がペットなどふざけた話をしよって」

ペット扱いは気に入らなかったのか、鳥さんはフェルトで出来た羽をパタパタと羽ばたかせて抗議する。

「それで、わざわざ出向いてなんの用だ、来訪者」

「らいほーしゃってなに?」

「客人という意味だ。少しは勉強をしたらどうなのだ」

「ルナさんの悪だくみ、そのことで聞きたいことが……」

「それは我が話していいことではない。知りたいならルナに直接聞け」

「ルナさんに聞いても答えを貰える感じではありませんでした」

「であれば尚更我の口からは言えぬ」

「そうですか、残念です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ