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焼き鮭の話(更に続き…からの牛肉のタリアータ)

「洋ちゃんが言うように「幽霊」=「怖い」ではないけど、やっぱり怖い霊っているのよ」


涼子さんが口を開いた。


「例えばどんな?」

淳ちゃんが目を輝かせて尋ねる。


「まぁ一番怖いのは、恨みを残して死んだ霊かな」


「それで、それで」


「思い出さない? 『チーズケーキとチャイ』の時の髪の長い女が、言ってたじゃない。 最後は無意味だと自分で気が付いたけど、それまで振った男に付きまとって、怖がらせたって。男から見れば、怖かったと思うよ」


「あ、ありましたね。そんな話」

聖ちゃんが思い出したように答えた。


「あの時、聖ちゃんも居たんだっけ?」

俺が、質問した。


「私が連れて来ちゃったと言われたんです」


「何の話です? それ」

 洋ちゃんが不思議そうに話しに入って来た。


「洋ちゃんは、あの時いなかったんだっけ?」

 又、俺が質問した。


「だから、あの時って何なんですか?」


「聖ちゃんが、この店に幽霊を連れて来ちゃったのよ」

淳ちゃんがなぜか嬉しそうに答える。


「だから、不可抗力なんだって」

聖ちゃんは、口を尖らせながら困った顔をする。


俺の方から洋ちゃんに一通りの説明をした。


「まぁ、霊のなかで、恨みを持っているっていうのは実際は少ないんだけどね」

涼子さんが続ける…


「じゃぁ、どんな人が幽霊になるんですか?」

聖ちゃんも興味深そうに尋ねる。


「まず、突然の事故で即死したような場合。車を運転していて思いっきりぶつかったとして、運転していた人は事故死した事を自覚できるかもしれないけど、助手席で寝ていた人なんかは、まぁ自分が死んだ事に気が付かない場合があるよね。それでも自覚できれば良いんだけど、自覚できない場合は、今自分がどういう状態かわからないからそこから離れられない…」


「あ、なるほど」

聖ちゃんが答えた。


「あと多いのは『未練』や『気がかり』がある人」

涼子さんが更に続ける


「『気がかり』って例えばどんな?」

今度は、洋ちゃんが質問だ。


「以前聞いた話だと、バイクでを起こした少年なんだけど、事故死したことは気が付いているんだけど、残しておいた『エロ本』を両親に見られたくなくて、友達にそっと片付けてくれと頼みに幽霊になって出てきたらしいんだよね」


「ほんとですかそれ?」

洋ちゃんが驚いたように聞き返す…


「また聞きだから、どこまで本当かわからないけど、そんな小さな『気がかり』でも、亡くなった方本人が気にしていたら、上に上がれないでこの世に留まってしまう人もいるらしいよ」


「誰から聞いたんですか? その話」

洋ちゃんが聞き返す。


「愛美さんよ」


「…」


 一同、『じゃぁ、あるんだな』と納得した顔をしている。

 確か洋ちゃんは愛美さんと直接お会いした事は無かったと思うんだけど、何度かこの3人に話しを聞いた事があったみたいだ。



「そういえば、お酒だけで、何か召し上がります?」


「僕、ローストビーフ…」

洋ちゃんがまず、声を上げた


「あ、ごめん。今日は仕込むのが遅くて、まだできてないんだ。タリアータだったら、直ぐできるけど…」


「どんな料理です?」


「牛肉の表面をフライパンで焼いて、中はレアの状態。野菜とチーズを添えて、バルサミコのソースをかける…」


「良いですね。それでお願いします」

洋ちゃんが答えると…


「私達もお願いします」

どうやら、涼子さんと聖ちゃんは、アイコンタクトしていたようだ。


「牛肉のタリアータ、承知いたしました」

俺はバックヤードに入った。


バックヤードでは、まずオーブンの様子を見た。ローストビーフは、もうちょっと掛かりそうだ。


冷蔵庫から、既に表面に塩・胡椒しておいた牛肉を取り出し、表面をフライパンで焼き、切り分け皿に盛る。

野菜を添えて、チーズを削りながらかけ、バルサミコは苦手な人もいるから、別容器でお出しする。更に別盛りでオリーブオイルと岩塩、胡椒なども添えてお好みでかけてもらうんだ。


皿の準備が整ったら、何やらカウンターの方で話が盛り上がっているようだ…

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