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鯛尽くし(続き)

ドアチャイムが鳴った

「おばんで~す」


「おや、洋ちゃんいらっしゃい」

「こんばんは~」

「ちょいと御機嫌かい?」

「少し、はいってまぁ~す」

「あのさ、元気なのは良いんだけど、ここはバーだから、もう少し静かに入って来ていただけないかな?」

「あ、すみません。 いつものメンバーだったのでつい」


 いつものメンバーって… ん、まぁそうだけど…


「で、今日は何にいたしましょ?」


「少し、飲んできているので、ウィスキーが良いんだけど…」

「確か洋ちゃん。島物が好きだったよね? タリスカーとか?」

「ハーフロックで」

「承知いたしました」


 俺が、タリスカーをグラスに注いていると、洋ちゃんの目は、二人の前に置かれている皿に目が行っている。


「御二方が食べてるのは何ですか?」

「鯛の唐揚げだ」

「僕もそれお願いします」

「承知いたしました」

 尤も、二人のはコースの一品なんだけど、ちょいと御機嫌の洋ちゃんにコースは重いかなと思って、今お出しした一品だけを教えたんだけどね。


 グラスを彼の前に置いて、俺はバックヤードに入る。

 さっき二人に出した唐揚げの油の温度が下がりきっていなかったので、早めに用意できた。


「お待ち! 鯛の唐揚げです」


 すると突然洋ちゃんが俺に聞いてきた…


「そういえばマスターは、都市伝説とか全く信じない人なんですか?」


「う~ん、そういうわけじゃないんだけど、いつも言っているように、ファンタジーとアカデミックを分けて考えたうえで、そのどっちともつかないような話は結構好きだね。例えば、『古代の宇宙人説』は嫌いなんだけど…『月人工物説』は好きなんだ。あと前も言ったかな『日ユ同祖論』とかね」


「ええ! 以外!」

 声を上げたのは洋ちゃんではなく、聖ちゃんだった。


「『月人工物説』なんて、マスターが一番嫌いそうな感じなのに…」

 聖ちゃんは続けた…


「マスターが『古代の宇宙人説』が嫌いなのは、考古学を学ばれたからだって以前に聞いたけど、『月人工物説』は『古代の宇宙人説』と対なような気がするのに…」

 次に涼子さんまでも口を開いた。


「だって、月って本当に不思議じゃない?」

 俺は答えた…


「やっぱり、あの大きさで、あの位置にあるのが奇跡なんだよね。地球の半径の4分の1のサイズで、太陽からの距離が400分の1で、太陽の直系の400分の1… てさぁ、超出来過ぎだと思わないかい?」


 俺は続けた…

「月がなければ、地球の地軸の歳差周期って言うんだっけ、地軸ももっと不安定になって、気候ももっともっと不安定になって、地球上では生物が誕生しなかったんじゃないかと言われたりしてるでしょ。アポロの着陸船を月に落下させ人工地震の実験をしたら、内部は空洞みたいな振動波が検出できたという話もあるしさ」


 更に続けた…

「なんて言うのかな、月の存在の全てが出来過ぎなんだよね。まるで誰かが地球に生物を生ませるように仕組んだというか、わざわざそこに置いたような感じがするんだ」


「じゃぁ、誰が置いたって言うんですか? 確かマスターは宇宙人説は嫌いなんですよね」

洋ちゃんが喰ってかかる…


「う~ん。 誰かが置いたって言う表現は、ちょっと無理があったかな。その存在そのものが不自然過ぎると思っているんだよねぇ」

洋ちゃんは俺を見つめている… 次の一言を待っているんだ。


「そうなんだよねぇ。宇宙人が置いたっていうのはあんまり認めたくないな、強いて言うなら…」


「言うなら?」

 みんなの視線が俺に注がれた…


「超自然的な存在とでも言うかな」


「それって、宇宙人みたいなもんじゃないんですか? マスターは確か『そういうもの(神様)』も否定的だったんじゃなかったでしたっけ?」

 更に洋ちゃんは喰いつく。


「そう、神様と言えば… 白い髭で杖を持っている… とか、ヤハウェとかアマテラスとかアッラーとか名前が付いているような、普通の人がイメージするような神様は信じていないんだけど… 何ていうかな、『宇宙の絶対的な真理』… 『超自然的な何か』… みたいなものはあると思うんだ。具体的に言うと「宇宙を作った人」はいる… それが超自然的な存在… みたいな感じ。もちろん「人」じゃなくて、絶対の法則みたいなものの事なんだけど、1足す1は2だと言うことはその絶対の法則の一部みたいな…」


「それじゃ、月はその絶対の真理によって作られたんなら、『人工物』じゃなくて自然物なんじゃないんですか?」

 今日の洋ちゃん喰いついてくるねぇ。


「うんそうだねぇ。月ってのは自然物にしちゃ本当に出来過ぎなんで、めっちゃ大きな矛盾に突き当たるんだ… よなぁ」


「例えばデス・スターみたいな物ですか?」

 聖ちゃんも聞いてきた


「いや、あの兵器というか戦闘的なものじゃなくて、生命を育んだんだからライブ・スターかな。まぁ人工物は言い過ぎかもしれないんだけど、月は不思議が多すぎるって事を言いたいんだよね。単なる衛星にしては… 」


 ちょっと俺の立場が苦しくなってきたかなと思った時に、洋ちゃんが突然、踵を返した。


「いやいや、意外ながマスターの見解を聞けて楽しかった。 今度は日ユ同祖論の話を聞かせてください。今日は御勘定お願いします」


「おや、もうお帰りかな」


「ちょっと、明日が速いんで」


「OK、ちょっと待っててね」


 チェックを済ませ、洋ちゃんは早々に帰って行った。

 何となく、俺は腑に落ちない気持ちが残ったんだけどね…


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