スモークド魚介(続き)
「某オカルト雑誌で毎月コメントしている、竹原姫子さんという方なんだけど、2020年の東京オリンピックは無いと予言していたんだって…」
「ほう…」
「2013年に東京オリンピックが決定したでしょ。 その時の竹原さんは、『オリンピックは無い』と言っていたらしいんですよ」
洋ちゃん今日のテーマは、『予言』らしい
実を言うと、竹原さんの名前を俺は知っていた。
だから、俺は知っている範囲で答えた…
「あれね… 確かに2020年には無かったけど、その時竹原さんは、日本全国でオリンピックで盛り上がっている未来が視えないとおっしゃったんだよね。
確かに2020年にオリンピックは無かった。でも2021年に開催されたよね…
『盛り上がっている未来が視えない』とおっしゃったけれど、2021年は凄く盛り上がった。よね?」
「そうですね、金メダルラッシュでした」
「某、野党の議員さんはオリンピック反対と言いながら、ブログで金メダルラッシュを称賛していた…
国籍法違反の野党議員ね、罰則規定が無いからのうのうと議員やってるけど、法律違反してるんだから本当は犯罪者だよね… まぁそれはおいといて…
少なくとも、東京オリンピックは、盛り上がったと言って良いね」
「じゃぁ、竹原さんの予言は外れたった言うんですか?」
「外れたって言うんじゃなくて、情報が多すぎるんだよね…
例えば、地震予知って難しいじゃん。でもそれを真剣にやってる先生もいるんだよ。地殻の変動っていうか、日本の地面がどれだけ移動したかって事を研究している方がいるんだ。これは気象庁とかじゃなくて、スポンサーを探したり、自腹をはたいてセンサーをつけて地面がどれだけ動いたかを測定してメルマガにしてるんだ。私もその意気込みに賛成して少しでも足しになればと思ってその有料メルマガをとろうしたんだけど…
サンプルというか、一月無料だったんだけど、その情報が多過ぎるんだよね。北海道は、この辺の地殻が動いている。東北地方はこの辺で中部・関東はこの辺りでどうのこうの…
って、日本全国網羅されている。
毎回こんな感じの内容でさ、あまりにも情報が多すぎてさ、こりぁ、これだけ言ってたらどこかで当たるよなと思ったんだ」
「そうなんですね…」
「真面目に研究している先生でもそうなんだよね、実際にそれだけ地面が動いているのかもしれないけれど、やっぱり下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって奴になっちゃうね。 まさに竹原さんの予言もそんな感じなんだよ」
洋ちゃんは思わず口を開いた。
「ええっ… そんな事ないでしょう?」
「いやいや、竹原さんのおっしゃってた言葉を時系列に並べるとそうなってしまうんだ。 確かにあたっている予言もある。でも外れた方が多いんだ。でも人間て当たっていた事の印象が残っちゃうから、外れた事は忘れちゃうんだよね」
「予言ですか。私らの若い頃はノストラダムスが流行りましたなぁ」
高橋さんが口を開いた…
「ノストラダムスってなんですか?」
おやおや、淳ちゃんも乗って来た。
「ノストラダムスってのは、ミッシェル・ド・ノートルダームだったかな? という西洋の医者というか予言者が書いた四行詩の本を日本語約した五島勉さんという方が、『ノストラダムスの大予言』という本で、1999年7の月に世界が終わるような事を書いて売れまくったんだよ」
高橋さんは説明した。
「ありましたねぇ。 因みに私は全く信じていませんでしたが…」
俺は答えた。
「そうだねぇ、僕も信じてなかったかな。でも姉は信じてた… ようだ」
高橋さんも同意してくれた。
「何となくなんですが、『この世の終わり』というような末法思想というかは人は信じやすいですよね。2000年のY2Kとか、2012年のマヤの終末なんて、大騒ぎしましたよね」
「あったねぇ…」
「Y2Kってなんですか?」
淳ちゃんが聞いてきた。
「僕もうっすらとしか覚えてません」
洋ちゃんも聞いてきた。
「二人とも若いねぇ… Y2Kってのは、コンピュータが西暦の下二桁で『年』を表すプログラムで書かれているために、2000年になったら1900年と2000年の区別がつかなくて、誤動作する事が予想されたんだ。だから全てのコンピュータが2000年の1月1日になると誤動作するんじゃないかって思われてたんだよね。中にはミサイルのプログラムが誤動作して核戦争が起こるんじゃないかなんて、アホな事が書かれた書物もあったんだ」
高橋さんが説明してくれた。
「実際はどうだったんですか?」
洋ちゃんが口を開く
「下二桁で『年』を表すプログラムってのは、殆ど事務系のプログラムなんだよ。ミサイルを飛ばすような所謂組込み系のプログラムでは、基本的に『年』を入れる事はめったに無いし、あったとしてもそんなプログラムを私は書いた事はなかったなぁ」
「高橋さん… じゃない… 高ちゃんの御仕事ってそっち系だったんですか?」
洋ちゃんが聞いた。
「うん。まぁ、こういう処で仕事の話をするのは野暮なんだけどね…
で、事務系のプログラムは人出が許す限り見直されたし、もし何かあった時のために泊まり込んだプログラマー達もいた。
結果として、幾つかの小さい問題はあったみたいだったけど、大きなニュースになるような事は無かったんだ。
『やばそう』って最初から分かっているんなら事前に手を打てるからね」
「マスター、マヤの終末の話をしてよ」
洋ちゃんが続けて言ってきた。
「あれ、前に話、しなかったっけ?」
「私も聞きたいですね」
高橋さんも乗って来た…
俺も、マヤの話ができるのは嬉しい…
「マヤ文明というのは、暦が凄く発達していたんです。私たちの西暦が、『年』・『月』・『日』という単位で、表せるように、マヤ歴は、『バクトゥン』・『カトゥン』・『トゥン』・『ウィナル』・『キン』という単位で表されてたんですよ。これが碑文に掛かれていて、その単位を現在の西暦に直す事ができて、紀元前3114年8月13日を起点として、紀元後2012年12月23日に終了する暦だと言われていたんです。これがマヤの終焉あらわすと言われていたんです。
『終焉』だと思っていたのはなんていうかなぁ、中途半端にこの暦を知っている西洋の学者だけで… それを日本に紹介した文人だけで、本当にマヤ文明を研修している考古学者や人文学者はマヤ歴というのは『巡回』する暦だと知っているので、この2012年の12月が終焉だなんて思ってもいなかったんですよ。現在でもまだユカタン半島にいるマヤ人達は2012年の12月に『新しい時代が来た』と盛大にお祝いしたそうです。 因みに『バクトゥン』より上の単位も発見されていますしね。要するに我々のカレンダーで例えるなら、9999年12月31日の次の日があっただけなんですよ」
それを聞いて高橋さんは口を開いた
「じゃぁ最初からマヤ文明は滅亡なんて予言してなかったという事だね?」
「そうです」
「そうなんですか」
洋ちゃんが口を開いた。
あれ?洋ちゃんには一度説明したような気がしたけどなぁ…
「そんなもんなんだよ」




