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肉巻きおにぎり

 いつもより少しばかり多めに仕込みをして、一段落したけど、その日はまかないも食べていない事を思い出した…

 今日のメイン食材は、牛! 賄い様に牛で肉巻きおにぎりを作ることにした。


  中の御飯は、白御飯に炒めた玉ねぎや錦糸卵その他の具材を混ぜているので、かやく御飯のようにうっすら味をつけている。 それを俵型に整えて、しゃぶしゃぶ用よりちょっと厚めに切ったバラ肉で、塩胡椒を混ぜて巻いて、ほんのちょっと片栗粉を振って、軽くフライパンで炙ってから、甘辛のタレを刷毛で塗って、白胡麻振って更に炭火で網焼きにする。

 網の焦げ目がなんとも旨そうに見える。自分で食べて旨かったので、お客さんにも勧めてみようかと思う…



 今日の口開けは、洋ちゃんだ。

「こんばんは、マスター」

「こんばんは洋ちゃん! なんか久しぶりだね」

「ちょっと出張行ってたんですよ」


 おしぼりで汗を拭きながら、黒板を見て…

「今日は、肉ですか… なんかお勧めあります?」

「肉巻きおにぎりなんてどう? さっき賄いで作ったんだけど、思いの外旨かったんだ」

「いいですね。それお願いします」

「飲み物は、ギネスかい?」

「はい」

「ギネスのパイントと、肉巻きおにぎり承知しました」


 俺が、ギネスを先にサーブして、バックヤードに入るのと引き換えに、奥から淳ちゃんが現れた。

「こんばんは、淳ちゃん! あれ? 今日はオーセンティックなバーテンダーズスタイルで珍しいね」

 洋ちゃんが、声を掛けた。

「こんばんは、洋ちゃん!」

「いつもの、巫女さんスタイルも可愛いけど、バーテンダーズスタイルも可愛いね」

「ありがとう。いつの間に、そんな口上手くなったのよ?」

「お世辞じゃなくて… 本当に」

「うん、ありがとう。まぁこの間ね、ちょっとあったのよ…」


 淳ちゃんは、先日の二人組の話を、最初から説明したようだ。

「なるほど… この店ならではの話ですね」


「はい。肉巻きおにぎりお待ち…」

 新しいおしぼりの他に、ナイフとフォークも用意した。

「これって、どうやって食べたらいいですか?」

「おにぎりだから、手でつかんて食べても良いし、ちょっとタレが塗ってあるので、食べにくかったら、ナイフとフォークで食べやすい大きさに切っても良いし… まぁ、好きなように食べてくれれば良いさ。そんなに気取ったもんじゃないから」

 箸を出さなかったのは、箸ではちょっと食べ難いかなと思ったんだ。勿論好きなように食べて頂ければそれで良いんだけど、なんとなく箸よりカトラリーの方が食べやすいかなぁと思ったんだよね。


「じゃぁ、頂きます」

「ごゆっくり…」


 肉巻きおにぎりをナイフとフォークで切って、二口ほど食べた時に、洋ちゃんは切り出した。


「ところでマスター、UFOをどう思われます?」

「おやおや… いきなり来たね…」

「ファンタジーとして楽しむ分は、都市伝説やこんな話も良いんですよね」

「まぁ、ね…」


 都市伝説、UFO、幽霊その他不思議な話は、洋ちゃんの好物だ。たまに俺にも、超古代文明の話を振って来るんだけど、俺は古代文明に興味はあっても、超古代は専門外だといつも言っているんだけれど、どうしてもその手の話を振ってくる。

 まぁ、俺にとって古代文明は学問的に勉強している分野なんだけど、超古代やそれ以外の不思議な話はファンタジーとして話題にするのは良いのかと思っている。


「そうだね、私の中では最も苦手な分野の話だね」

「ええ? どうしてですか?」

 ぶっちゃけ俺はUFOの話は苦手なんだ。正直言って『わけわかんない』世界なんだなぁ…


「全てが仮定の話で、落ちが無いというか、議論が平行線になってしまうというか… 例えばCSの番組で『古代の宇宙人』なんてやってるけど、全てが仮定で、 『…ではないでしょうか』 の繰り返しで本人たちは科学的に証明しているつもりなんだろうけど、客観的には証明にもなんにもなってない。 「そりゃあんたの仮定でしょ」 の一言で終わってしまう。まぁ、不思議な話好きとしては、そう言って切り捨てるのも野暮なんで、この話題だけは、聞く方に専念しているんだ」


「じゃぁ、マスター自身はどう思われています? 宇宙人っていると思いますか?」


「誰かが言っていたんだけど、UFOというのは、unidentified flying object の略の軍事用語で、もし乗っているのが宇宙人だとわかったら、DFO dentified flying object になって、UFOではなくなるんだそうだ…

 まぁ、そういう理屈っぽい事は抜きにして、宇宙人というか、地球外知的生命体は居てもいいと思うけど、飛行物体に乗って地球にやってきているっていうのはちょっとイメージ沸かないね」


「どういう事ですか? 宇宙人はいるけど、UFOで地球にやってくる事は無いって事ですか?」

「そういう事かなぁ…」

「ええ? 地球外知的生命体がいるんなら、UFOで地球にやってきても可笑しくないんじゃないですか?」

 洋ちゃんいつになく… いや、いつもの事かな… ストレートに喰いついてくる。


「じゃあ洋ちゃんはUFOはどこから来ていると思う?」

「シリウス…とか」

「ドゴン族の神話だね? じゃぁ、洋ちゃんはUFOに乗ってシリウスへ行ける?」

「無理に決まってますよ、第一UFOだってないじゃないですか…」

「そういう事さ。 地球外知的生命体が存在するのと、実際に飛行物体に乗って地球にやって来るというのはまるっきりと言って良いほどの別問題になるんだ」

「う~ん」

 洋ちゃんは、ちょっと考え込んでしまった。


「じゃぁちょっと考えてみようか… 地球型の生物が存在できる環境をと言えば… まず恒星では生物が生きられないよね。惑星か衛星でなきゃ無理だ。そして生物の誕生には海というか水が無ければならないだろう… ハビタブルゾーンって言うんだけど、太陽系の惑星で、水が液体でいられる場所は、金星の外側から火星の内側だけなんだ。惑星で言えば地球だけという事になる。だから太陽系で生物が存在できるのは地球だけなんだ。 近年ではエウロパの氷の海の地下に火山があって、そこに水が存在するかもしれないという研究もあるけど、実際にはまだ見つかっていない…」


 俺は更に続ける…


「洋ちゃん、ドレイクの数式って聞いた事ある?」


「ああ、どこかで聞いた事あります」


「我々の銀河系に存在して、我々とコンタクトできる可能性のある地球外文明を推定する算術式なんだけど…」

「あ、思い出しました」


 俺は、パッド型PCを取り出して、ウィキを引きながら説明することにした。


   N = Rx × fp × ne × fl × fi × fc × L


 このNが我々の銀河系に存在し、人類とコンタクトする可能性のある気球街文明の数なんだ。

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