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牡蠣の燻製(ポートエレン続き)

「話の前に、せっかくポートエレンを戴いたので、スモーキーなおつまみなんてある?」

「牡蠣の燻製のオリーブオイル漬けなんてどう?」

「いいわね。それお願い」


 数日前にオリーブオイルに漬け込んだ燻製牡蠣が食べ頃だ。


 牡蠣はこの料理には加熱用のふっくらしたやつがいいんだ。

 お湯に数分漬けた後、水を切って出汁と醤油と味醂の合わせに漬け込む。

 数時間後、水分をキッチンペーパーでふき取って、スモーカーで燻すんだ。1分位で良いよ。

 スモーカーが無い場合、家庭でやる時は、中華鍋にアルミホイル、網を使って、ボールで蓋にするやり方でも簡単だ。

 スモークチップはお好みでなんでも良い。そうそう「お茶」なんてのもありなんだぜ。

 その後、オリーブオイルに漬け込んで数日経つと出来上がり。



「聞いた話なんだけど…」

 涼子さんが語りだした。


「ポートエレン蒸留所は、80年代初め頃に閉鎖が決定したあと、蒸留所を解体して、モルティングの施設だけ残したのよね」


「うん」


「蒸留所の持ち主のディアジオ社のオーナーだったか重役が、モルティング施設を視察に来る時に、旅行がてら家族も連れて来て、夫妻で施設を回っている時に、十歳位の息子ちゃんは中庭でボール遊びをしてたらしいの」


「まぁ、子供にすれば、樽だけおいてある倉庫なんか見ても面白くないもんな。遊びたい盛りだろうし」


「夫妻が、外に出てきたら息子ちゃんがいなかったらしいのね。それで、中庭を探したんだけど、どこを探してもいなかったらしいの。すると、一人の美しい女性が現れて海の方を指を指したのね」


「嫌な予感がしてきたな」


「その方向を探してみると、息子ちゃんが崖の下に倒れていた」


「その崖は高いのかい?」


「いやそんなでもなかったようよ。擦りむき傷しかケガは無かったみたいなんだけど、気絶していてもう少し遅ければ満潮になって溺れるところだったとか」


「よかった」


「夫婦は、先ほどの女性を探してお礼を言いたかったみたいだけど、いつの間にか消えていたんだって」


「…」


「病院に行って手当を終える頃は子供ちゃんもすっかり元気になったので、またモルティング倉庫に戻って、奥にある狭い資料室のような、ポートエレンの歴史を収めた、小さな博物館のような部屋を見に行ったら、女性の肖像画が掛かっていたみたいなの」


「それはがさっきの海の方を指さした女性だった…とか」


「そうなの。肖像画には、『妻エレノア』と書かれていたんだって」


「ほう、奇妙な話だね」


「まだ、先があるの。その肖像画を見つめていたら、後ろから本人が現れて、夫が作った蒸留所で不幸は起きて欲しくないから思わずでてきたんだそうよ」


「…」


「夫妻が彼女に感謝の言葉を述べた後、なにかお礼をしたいと言うと、彼女は蒸留所を再開してほしいと願った。…という話なのよ」

「不思議な話だな…」


 まぁ、なんかありそうな復活話に尾鰭がついたような話ではあるけれど、何にしても、ポートエレン復活は嬉しい。

 たまに出てくるオフィシャルボトルを今買うとなると最低でも30万円以上するからなぁ、ボトル1本でだ。

 流石にそんな酒、店では出せないし。


 再開しても、新しい若いボトルが出てくるのは十数年後だから、今から楽しみだな。


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