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第16話 竜の死体を解体する

 斧で切って飛竜の死体を解体する。

 切った肉はとりあえず畑の外に出し、あとで荷台に載せて捨てに行くことにする。


「はあ……疲れた」


 鱗に覆われた皮膚が硬いこと硬いこと。魔物だから余計に硬い。

 力いっぱいに斧を降り下ろしても1回では切り落とせない。何度も繰り返してようやくである。


 斧を杖にぜいぜいと荒く息を吐いている隣では、ティアが自前の剣で巨竜の死体ををスパスパと軽い様子で刻んでいた。


「さすが……たいしたもんだよ」


 俺はもうしばらく動けそうにないし、親父は腰を痛めて家に引っ込んでしまった。 男として情けないが、解体の大半はティアに頼ることになりそうだ。


 あっという間に巨竜の死体をバラバラにしたティアがこちらへと来る。


「マオ兄さん大丈夫?」

「ぜえ……はあ……う、うん。まあ……いや、疲れた……」


 その場に座り込む。


「こっちも私がやっとくよ。マオ兄さんは休んでていいよ」

「す、すまん……はあ」


 俺は俯き、大きく息を吐いた。


「そういえばさ」


 飛竜を刻みつつティアは言う。


「あの……魔人だっけ?」

「魔人?」

「うん。私を斬った……マオ兄さんが倒したあの男」

「見てたのか……」


 あのときティアは気絶していると思っていた。


「倒れて動けなかったからちゃんとは見えなかったけどね。私が勝てなかったあの男をマオ兄さんがやっつけるの、見てたよ」

「……そうか」


 どうやって俺があの男を倒したのか気になっているのだろう。


 聞かれたらどう答えようか?


 俺は悩んだ。


「……なにも聞かないほうがいいかな?」

「えっ?」

「なにか言いづらい秘密があるんでしょ? マオ兄さんの強さには」

「いや……まあ……」


 俺のことを話してもファニーさんとナナちゃんのことまで知られるわけではない。だから話してしまってもいいのだが、半分は人間でないと知ったらティアの俺を見る目が変わるんじゃないかと不安だった。


「聞かないでほしいって言うなら、なにも聞かない。でも私の知らないマオ兄さんがいるっていうのは、やっぱりちょっと嫌、かも」


 寂しそうな横顔がチラと見える。

 その姿を目にした俺の胸は少し苦しくなった。


「……驚かないか?」


 ティアになら言っても大丈夫。


 そう思えた。


「驚かないよ」

「俺のことを嫌うかもしれない」

「そんなわけない」


 こちらへ振り返り、ティアはよどみない声ではっきりと言った。


「じゃ、じゃあ言うよ」

「う、うん」


 目の前で屈んだティアの目が俺の目をじっと見る。


「実はな……」

「うんっ」

「俺……」

「うん」

「半……」

「半魔人なの、この人間は」

「えっ? うおおっ!?」


 足元にゴロリと転がってきた農作物のジャガイモがしゃべったので、当然の如く俺は驚いて背後へ仰け反って転んだ。

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