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第12話 畑を片付けよう

 外へ出て畑を目にして俺は絶句する。


 ティアが倒した飛竜の死体が転がってることは知っていたが、もう1体、ドラゴドーラが呼び出した巨竜の死体も畑に倒れていて頭を抱える。


 畑がめちゃくちゃだ。て言うか、誰が片づけるんだよ。これ……。


「俺、と親父か……」


 力仕事を女のファニーさんやナナちゃんにやらせるわけにはいかない。

 家の壁も直さなきゃいけないし、農作物もほとんどダメだろう。離れていたおかげで隣近所の村人や畑や家に被害がなかったのは救いか。


「これ食えるのかなぁ?」


 竜の死体を眺めて俺は思う。


 旅をしていたときも魔物は食べたことがない。食べられるという話も聞いたことがなかった。


「にーに」

「あ、ナナちゃん」


 黒いドレスに着替えて家から出てきたナナちゃんが俺を見上げていた。


「わしのせいで畑が……。すまんのう」

「ナナちゃんは悪くないよ。それよりも本当にあれを俺が倒したの?」


 首の無い巨竜に目を向ける。


「うむ。拳の一撃での」

「信じられないな……。頭が無いけどどこへ行ったの?」

「にーにの放った拳の一撃で消し飛んだのじゃ」


 殴って身体の一部が消し飛ぶなんてありえるのだろうか?

 実際、紫色の血があちこちを汚しているだけで巨竜の頭はどこにもないが。


「そういえばドラゴドーラはどうなったの?」


 彼も消し飛んでしまったのだろうか?

 敵だったとはいえ、人間……ではないが、殺人を犯したのは後味が悪い。


「ドド兄様はにーにに頭を掴まれて倒れたのじゃ」

「倒れた? し、死んだの?」

「いや、気絶をしていただけじゃ。しばらくしたら起き上がってどこかへ走り去ってしもうた。恐怖に引きつった表情での」

「そっか」


 殺していなかったことを安心したような、また襲い来る可能性を考えると死んでいたほうがよかったような、複雑な心境であった。


「はあ……ともかくあれを片づけないとな」


 俺は巨竜の死体に近づく。


 ……大き過ぎる。持ち上がるわけはない。


「刃物で細かく切断するしかないか……」


 固そうだし、それも大変そうだ。


「『ガーディアン』を使えば持ち上げて捨てて来るのもたやすいのじゃ」

「あ、そっか」


 ナナちゃんに言われて『ガーディアン』の発動を試みるが、特に身体能力が向上したような気はしない。


「これって誰かを守りたいって気持ちを高めるほどに身体能力が上がるんだよね?」

「そうじゃ」

「うーん……けど、発動しないな」


 ナナちゃんを守りたいと気持ちを強くしてもなにも起こらない。


「まあ畑を片づけるのは誰かを守ることと関係無いからの。ダメかもしれん」

「そうだよね」


 というかこれを使うとどういうわけか記憶を失うのだ。

 怖くてそうそう使えるものでもなかった。


「そもそも『ガーディアン』はにーにの能力ではない。キキ姉様の能力じゃ。同じ能力は2つと存在せんからの」

「じゃあ俺の能力ってなんだろ?」

「知らん」


 まあ知っていたらすでに教えてくれているか。


「ただ、たぶんじゃがキキ姉様が能力を失っていたことから推測すると、もしかしすれば能力を奪うような力なのかもしれんの」

「なんだか泥棒みたいで嫌な能力だなぁ」


 まあ、あくまでもナナちゃんの推測だけど。


「能力が使えないんじゃ、やっぱり刃物で切断して片づけるしかないか」


 すでに切断されて転がっている飛竜の頭から捨てて来るか。

 そこで俺は大事なことを思い出す。


「あ、ティアの様子を見てこなくちゃ」


 みんなを守るために怪我をしたのだ。

 治ったとはいえ、様子は見に行ったほうがいいだろう。


「ナナちゃんも行く?」

「行くのじゃ」


 手を握られた俺はナナちゃんを連れてティアの家へ向かった。

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