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治っても心配する母を置いて血で汚れた服を着替える為に部屋に戻る。傷が治っても服は元通りになっていない。
『俺』だったら服だって元通りだっのにな。
部屋に入ると外が騒がしい。窓の外を見るとサルーンがアネットの奇行を止めているところだった。まだ草を毟っていたのか。
さて、改めてこの家の人間を思い出そう。
まず、俺。名前がサミュエル、十歳。記憶によると余り活発な方では無く、どちらかと言うと兄の後ろに隠れているような存在。『俺』とは全然違うな。
本来は誕生して直ぐ思い出す手筈だったが、人間の肉体には『俺』の存在が耐えられずにこの歳になるまで覚醒しなかったんだろう。
まぁ、こんな事もあろうかと転生魔法と一緒に記憶操作魔法も展開させておいたが、人間になるとは思わなかったけどな。
だから俺の言動が今までと違っても誤魔化すなんて容易い。ただ、覚醒して直ぐは力が弱いから余りズレた行動をすると効果が消えてしまう。
鏡を殴るなんて俺のする事じゃ無かったけど、大丈夫だよな…?
そして俺には母と父、二人の兄妹がいる。
兄のサルーン。冷淡な性格だが家族は大切なのか兄として弟妹の世話を率先して行い、そして責任感が強い。
魔法学園中等部一年で庶民ではなかなか居ない魔力の持ち主。魔術を扱う腕も十三歳にしては扱いが長けて、中等部の入試試験で一番だった。魔法学園は初等部もあるが貴族しか入れない。
妹のアネット。いつもニコニコ笑ってなんでも楽しいお年頃。兄弟の後ろをついて回る日常。まだ五歳で魔力はあるみたいだが魔法はまだ使えない。
そもそも庶民である俺達が魔力を持つのは父親が貴族だからだ。
人間は貴族ばかりが魔力を持っている。偶に庶民にも魔力持ちがいるが貴族と庶民というだけで優劣がつけられる。だから庶民は魔法学院も中等部しか入れない。
父親は貴族でも高レベルな魔法を扱う腕を持っている。と言っても忙しいのか帰ってくる事は殆どなくサミュエルの記憶には父親の記憶はほぼ無く顔もボヤッとしている。
そんな父親と結婚したのは母であるアナ。家族愛が半端無く、若干天然が入ってる母は父親とどうやって出会ったのか俺達兄妹は知らない。そもそも魔力も無い庶民だった母が父親と出会える事が出来たのか。
まぁ、そんな事どうでもいいか。
ただ近所の噂では駆け落ちだったらしく貴族の地位は得られなかったらしい。
容姿は兄妹で似ていて父親と同じ髪の色をしている。もしかすると人間の魔力は髪に宿ると言われているから父親と同じなのかもしれない。