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この世界は人間と魔族の争いが絶えなかった。
魔族の目的は人間達を滅ぼし、この世界を自分達の物にすること。人間は魔族を根絶やしにし平和をもたらすこと。
両者の戦いはその時代の歴史を変える程激しいものだった。
力の強気者が世を束ねる事が当たり前の魔族は大多数の人間は弱き者と見下していた。
それは人間には魔法を使えない者が沢山居たからだ。
しかし、それでも魔族は何度も人間に敗北していた。
その時の魔族の頂点に立つ魔王が勇者と呼ばれる神に愛された存在に倒されて居たからだ。
魔族の根絶やしまではいかなくともその時代の魔王が倒されることにより一時的に人間に平和が訪れていた。次代の魔王を決める為に内戦になってしまい、人間との争いが一時中断してしまったからだ。
そして人類暦880年。第四代魔王がこの世界に君臨していた。
彼の名はレイヴァン。
彼は歴代の魔王より膨大な魔力を秘めており、勇者をに引け劣らない存在とされていた。
そんな彼でも君臨して数十年後魔王討伐としてレイヴァンの前に現れた勇者に敗れてしまう。レイヴァンは勇者との戦いで死ぬ寸前、転生魔法使用した。
転生魔法は今までの記憶を持ちながら新たな肉体に生まれ変わる事。しかし、これには代償として自身の貯蔵出来る魔力量を一割まで減少し、いつの時代に生まれ変われるか分からないこと。
だから誰もそんな事をしようと考える者は居なかった。
ただ、レイヴァンは勇者との戦いの記憶を持っていれば次に勇者に遭遇した時同じ人物じゃ無くてもその知識が役に立ち必ず勝てると考えたのだ。
それに魔力貯蔵量も一割になってしまっても上げる方法を知っていた。
「勇者‼︎次に会う時は貴様が地に触れ伏す番だ‼︎」
だから勇者に威勢よく言い放ち転生魔法を使用したレイヴァン。
暗くなる目の前。最期まで勇者を睨み、脳裏に刻みこみ、魔王レイヴァンの生涯は終わった。
そして時は流れ現在。
目の前が明るく感じ、魔王レイヴァンは目を覚ました。目の前に広がる天井、背中には柔らかい布がある事からベッドで寝ていた事を知る。
ゆっくり起き上がり手を見る。小さな手だが、転生魔法は成功したと思った瞬間ある事に気づく。この身体に流れる魔力、量は少ないのはしょうがないが質が問題だった。この魔力は人間が持つもの。
つまり、魔王レイヴァンは転生魔法により人間に転生してしまったのだ。