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原因を作った張本人が何を言っているんだ?



「校長、最近能力開花剤が変わったらしいんですけど、何かあったんですか?」


「原因を作った張本人が何を言っているんだ?」


 あれから何日か孤児院で過ごし、戻ってきたエンターは早速好調に話を聞いて見た。


「張本人? は?」


 何のことだ?


「エンター。お前が三つも同時に能力を開花させるから、薬を変えるなんてことになったんだ。お前のように、いくつもの能力を持てるように改良しようって」


 うゎあお。

 本当に俺のせいじゃん。


「でも、どうやって?」


「無論、お前の体を調べてさ。行き着きたいゴールはそこにあるんだからな。お前の体起きた変化を他の人でも起きるように、全力で新薬を開発中だ」


「へ? 俺いつ調べられました?」


 全く記憶にないのだが。


「あの、お前が初めて能力を使って倒れていた時だ。倒れていなかったらあの日の放課後、ファイルあたりから明日検査があるので、時間をくださいって話があったはずだ。結局、倒れていたから伝えられなかったがな」


 そりゃ、全く記憶にないはずだ。


「でも、能力が開花しない子まで出てきたっていうじゃないですか」


「よくそこまで知ってるな」


「この前知り合った近所の子がそうだったんで」


 帰っていた間にそう聞きました。


「ああ、まだ未完成品でな。開花する奴は複数開花するんだが、逆に一つも開花しない子まで現れ始めた」


「開花した子、いるんですか?」


 人類で俺一人だと、密かな自慢だったのに、いつの間にか通用しなくなっていたようだ。


「四日前に二つの能力を同時に開花させた子が出たっていう報告が昨日きた。かなり遠い地区の子だがな。薬を改良してからの初めての成功例だ」


 なるほど。

 つまりこの学校では会えないということか。


「にしても、開花しない可能性があるんじゃ、使いづらいですね。開花しなかった子にはもう一錠今までの薬を飲ませるとかしないんですか?」


「んなことできるわけないだろう。あの薬がどれだけ危険だと思っているんだ。何もできないはずの人間が能力を持てるようになる薬だぞ。二乗も飲んでみろ。体が爆発するんじゃないか?」


 それは流石に冗談じゃないか、と思ったが校長の顔は至って真面目だった。

 嘘じゃないのかよ。

 にしても、あんまり考えずに飲んだが、あの薬ってそんなに危険だったのか。 

 うちのメモリーおいしいとかいってたけど?


「だが、これだけの時間で未完成とはいえ改良できたというのは、流石、あの研究室だな」


「あの研究所?」


「能力に関しての研究所だ。あの研究所、何がすごいって使えるお金の額が別格なんだ。冗談じゃなく、お湯じゃなくてお金の風呂に浸れるぞ。それも、毎日張り替えられるぐらい。これだけ短期間で結果を出せるのも、その資金源があってのことだろう。一体その新薬開発にいくら注ぎ込んだのやら」


「エネミーの研究施設とは正反対ですね」


 気力も体力も精神力も要らなさそうだ。

 流石にそれは失礼か。

 とりあえず、プレッシャーすごそう。


「だが、どうなんだろうな。その子も昨日、能力を使って倒れたらしい。お前と違って、十回使ったらだがな」


「起きたら次の日ですか」


「起きたら次の日だ」


「途中で前線に出ますか?」


「途中で前線に出るかもしれないな。今回誰かさんが大活躍だったし」


 三つの能力を使える人間が、能力なしで大活躍して何になるんだって話だけど。


「まあ、その子にも、二階から飛び降りてもらいましょう」


「お前、二階から飛び降りたのか?」


 はぁい。

 飛び降りましたとも。






「おかえり、エンター。お土産は?」


 なんか久しぶりにあった気がするな。

 部屋に戻ると、こちらの音に気づいたのか、エスケープが扉をノックした。 


「それはどっちのお土産だ」


 前線のか。

 それとも孤児院のか。


「もらえるならどっちでもいいよ」


 実際そうなんだよな。

 お土産って、もらえたらなんでもいいっていうのは一つの真実だと思う。


「これ、ファイルさんが愛用している刀だ」


 そう言って刀を外してエスケープに渡す。


「いや、どう考えてもエンターのだろ」


「そう思うじゃん。でも、それはファイルさんの」


「本当に? それ、もらっていいの?」


「いや、ダメだろうな。だから返しといて」


「ただの使いっ走りじゃないか」


 そう言って刀を返してくるエスケープ。

 本当にもらわれたりしたらどうしようかと思っていたので、正直ありがたい。


「ま、エンターの元気そうな顔見れてよかったよ。明日からまたがんばろうな」


 そう言って部屋とは別の場所に行くエスケープ。

 きっと、自主練に行くのだろう。

 あの時思いつきで帝になると言ったのかと思いきや、こいつは意外に努力するやつだった。

 単位も順調に取っているし、自主練習まで始めている。


「なあ、エスケープ」


 そんなエスケープに向かって、エンターは声をかけた。

 歩みを止めて、こちらを向くエスケープ。


「帝は本当に強くてカッコ良かった」


 これは、エンターの本心である。

 行く前は一番心の重荷だったのに、帰ってきたら一番の思い出に変わっている。

 エンターの心の中にあったマイナス分のハンデなんてものともしないぐらい、あの人たちは凄かったしかっこよかった。

 いろいろ大変だったが、今から前線へ行く前の日にタイムスリップしてもう一度行くかと聞かれれば、間違いなくもう一度行くと答えるだろう。

 そのくらい、あの人たちのことは大切な思い出として心に残っている。


「…そうか」

 

 少しやる気出たと言ったようにうなずき、エスケープは自主練に向かっていった。

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