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エンターは服燃えてない側の人間だよね?


「では、みなさん揃いましたね。行きましょう」


 馬に乗った炎帝が周りを見渡してから進み始める。

 重傷を負ってもなお毅然とした態度を崩さなかったが、やはり内心はきついのだろう。

 重傷者を乗せ終えた後、馬が余ったと知るや否や真っ先に確保に向かった。


「そういえばエンターは明日帰るんだったな。どうだった? 前線に来てみて」


 持ち物が刀一本なため軽そうな校長がエンターに聞いてきた。


「エネミーって結局なんなんでしょうか」


 どこから現れたのか。

 なぜ、現れたのか。

 何が目的なのか。


「さぁ、なんで現れたんだろうなぁ」


 知れるもんなら、私も知りたい、といったふうに校長はそっぽを向く。


「調べている人とかいないんですか?」


「いるけどなんというか、中途半端なんだよな」


「中途半端?」


「正直、調べる気があるのかないのか分からない。軍の上の方としては、なんで現れたか調べる余裕があるのなら、一匹でも多くのエネミーを殺すべしっていうのが正直な意見なんだ。あんな、言葉も通じないような奴らが現れた理由なんて分かっても、私たちの明日が保証されるわけじゃないから。今の人類にそんな余裕はないって」


「まぁ、そう言われればそうですね。人類が滅ぶか、エネミーが滅ぶか、今はその瀬戸際なんですからね」


「ああ、そうだ。だから軍がエネミーに対する研究室を持っているが、予算は全然ない。あそこは常に研究者の気合いや根性、精神力というリソースのみで回っている」


 それ、大丈夫なのかよ。

 というか逆になんで回ってるの、それで。


「つまり、エネミーについて詳しいとは何も分かっていないと」


「まあ、そうなるな。唯一分かっているのはエネミーの殺し方だけだ」


「…なるほど」


 確かに現状のところはそれさえわかっていれば大丈夫か。

 だが、本当になんであんなものが現れたのだろうか。

 

「共通点がないんだよなぁ」


 協力しあって襲いかかってくるエネミーもいれば、単独のエネミーもいる。

 小さいエネミーもいれば、大きいエネミーもいる。

 共通点があれば、ちょっとは思考の手掛かりになるのに。

 強いて挙げるとすれば、殺せば死ぬってことだけじゃないか。


「エンター、見えてきたぞ。あそこが第二防衛基地だ」


 そんなことを考えていると、どうやら目的地についたようだ。

 先ほどの基地とよく似た形をしている。


「でもやっぱり、見覚えはないな」


 先ほどはそう言われれば見た気がすると思ったが、実物を見てそう思った。





「エンターは服燃えてない側の人間だよね?」


 基地に入り、部屋割りをホワイトボードに書いてから、部屋でグータラしていると、扉がノックされた。

 鍵を外して、外の人を確認すると、水帝だった。

 何のようだと思う間もなく、水帝から放たれた言葉で思考が混乱する。

 一体この人はどういう目的でこのセリフを言ったのだろうか。


「はい、無事でした」


「じゃあさ、その中で部屋着を何着か寄付してくれない? 燃えたせいで着替える服がない人たちがたくさんいるんだ」


 なるほど、炎帝のせいですか。

 別に、服を寄付することは構わない。

 そもそも今来ている服の全ては兵士学校で支給されたもので、何一つ自分で買ったものはないから。


「ちょっと待ってくださいね。どのくらい足りないんですか?」


「全く足りない。二階と三階、四階にそれぞれ同じ数泊まってたわけじゃないけど、単純に考えると二階の人だけで、三階に部屋と四階の人と増援に来てくれた人たちの分を賄わないといけないんだ」


「あー、それは随分と足りませんね。って、増援に来てくれた人たちの分もですか?」


「ああ、帝が三人もいるのに増援を要請したでしょ? これはただ事じゃないぞってことでそれはもう着替えの準備もさせないうちにとにかく送り出したらしくてさ。それで、今きている分しかないんだって。ランプも服について注文するのは流石に忘れてたみたい」


 ならたくさん渡したほうがいいか。

 一週間分持ってきた部屋着を明日自分が着る分と今きている分を残し、あとは全部水帝に渡そう。


「何か手伝いましょうか?」


 水帝が服集めをしているため、エンターは気を利かせてそう言った。


「ほんと? ありがとう。 じゃあ、これを地下一階の洗濯室でひたすら洗濯と乾燥をしてくれないか? 場所は、前の基地と同じだから、間違えないと思う」


「かしこまりました」


 そう言ってエンターは今渡した自分の服と、それ以外の水帝がすでに持っていた服を受け取り、地下一階に向かった。


「エンターさん、どうしたんですか?」


「水帝に手伝いましょうかって言って、これを地下に持って行き、洗濯と乾燥させる業務を任されました」


 洗濯室に行くと、ファイルがいた。


「なるほど、じゃああの洗濯機に入れましょう」


 半分持ちます、と言ってエンターが持っている服を半分受け取り、空いている洗濯機に入れる。


「どうです? 服は足りそうですか?」


「どうでしょう。足りてくれないと困るんですが、微妙なところですね。私はいざとなったらここで乾燥機かけ終わった服を一着いただくことにしますけど。このまま着替えられないなんて絶対に耐えられません」


 なるほど、大丈夫です。

 私は何も見ていないし聞いていないと言っておきますから。


「今回のエネミーの強さってファイルさんの経験上、上から何番目ぐらいになりますか?」


 洗濯が終わるまですることもないので、エンターは話題を振った。


「強さですか。うーん。私が出会った中では一番じゃないですかね」


「やっぱり強かったんですね、あいつは」


「はい。帝が三人揃っていてあれほど手こずるエネミーを見たのは初めてです。増援を要請して本部がすごく焦るのも分かります」


「着替えも持たせずに派遣したんですもんね」


「そうです。ありがたいことですけどね。着替えを準備している間に仲間が全滅とか、笑えませんから」


 クスっと笑ってこちらを見てくるファイル。


「エンターさんは明日帰るんですよね」


「はい。ファイルさんはどうするんですか?」


「私はもう少しこちらに残ります。早急にやらないといけないことが多いですから」


「なるほど、頑張ってください」


「はい。エンターさんも残りの単位取得頑張ってくださいね」


 ピーッと洗濯が完了した音がしたので、二人は乾燥機へ写すために立ち上がった。




「では、お疲れ様でした。エンターさん。また学校で会いましょう」


 次の日、迎えの馬車が来てそれに乗ったエンターと校長。

 少しサイズの大きい部屋着をきたファイルが見送りに来てくれた。

 それ、多分俺と同じぐらいの身長の人が着る服ですね。

 もしかしたら、もしかするかもしれないけど。

 ま、みんな柄同じなんでわからないですけどね。

 水帝と雷帝は前線の偵察に行っているらしい。

 昨日あんな敵と戦ったにもかかわらず、本当にすごいと思う。


「ああ、ファイルもこっちの業務を頼む。学校の方の仕事は教頭にでも追加で振っとくから、何も心配せずにこっちの仕事を終わらせてきてくれ」


「はは。ありがとうございます」


 苦笑いしがなが頬を描くファイル。


「では、お世話になりました」


「いえいえ、本当にありがとうございました」


 馬車が進み始めたので、最後にそう言ったエンターと校長をお辞儀で見送るファイル。


「校長、相談があるのですが」


「うん? なんだ?」


「平日なんで、帰ったら学校じゃないですか。でも、一回実家に帰りたいです」


「ああ、いいよ。 書類を書いて承認印を貰わないと平日の外泊はできない決まりだから、それを記入してもらうことになるが、承認印は私が直々に押す。 二、三日ゆっくりして来い。本当、ご苦労だった」


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