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エンターおは



「ほんと、能力が使えないってつくづく不便だな…」


 周りの人たちを見てそう思った。

 今エンターは戦闘訓練中だ。

  あれから、何度も帝たちがああでもない、こうでもないと空飛ぶエネミーたちを打ち落として、二十回に一回ぐらい倒さずに打ち落とせるようになった。

 そして、そんな満身創痍のエネミーにエンターがとどめを刺す。

 このとどめを刺す作業に意味はあるのだろうかと疑問を抱きながら、日々を過ごしていると、もう明日は帰る日である。


「エンター、こいつをお願い」


 そんなことを思っていると、また水帝が空飛ぶエネミーを撃ち落とすことに成功したようだ。

 この人たちも、生かさず殺さずエネミーを打ち落とす技術を磨いているが、この技術が役に立つ未来はきっとこないだろう。

 なんかそう思うと申し訳ない気持ちになりながら、ほぼ死んでいるエネミーに止めを刺す。


「倒しました」


 水帝にそう報告すると、近くにドスンという音がした。

 音のした方に視線を向ける。


「また倒しちゃいましたか」


 ほら、これだよ。

 撃ち落とそうとして失敗したエネミーが炎帝によって燃やされていた。


「とりあえず、いったん休憩しようか」


 一区切りついたため、水帝がそう声かけをした。


「はい、喉が乾きましたし、私も休憩したいとおもいっていたところです」


 炎帝も賛成する。




「おはようございます」


「エンターさん。おはようございます」


「エンターおはよう」


「エンターおは」


 なんかだんだんと雑になってきているが、ファイル、校長、雷帝に挨拶をしたエンター。

 三人は昨日夜勤だったため、今起きたところだ。

 ラフな格好で食堂に座っていた。

 本当はこの三人が起きるまで、前線に出るのは控えた方がいいのだろうが、エンターも大分戦えるようになってきたため、帝二人の護衛のみで前線に出た。

 感想としては、十分すぎるぐらい十分じゃないだろうか。

 俺、確かに能力を三つ使えるけれども、この三人にお手間を取らせるほどすごい人材ではないんだけどなぁと一人戦いながら悶々としていたところだ。


「どうだった?」


「随分と戦い慣れしましたよ。見ていて危なさがありません」


 それは、倒している相手がほぼ瀕死の空飛ぶエネミーだからだと思います。


「そうか、よかった」


 あくびをしながら、返事をする雷帝。

 昨日の夜は襲撃が多かったらしい。

 だから、まだ疲れが抜け切っていないようだ。

 本当、ご苦労様ですと心の中で拝んでいると、襲撃を知らせるサイレンが鳴った。


「では、ちょっと行ってきます」


「僕も」


早急に飲み物を飲んでから、炎帝と水帝が入り口に向かって駆けて行った。

 さっき挨拶した三人はあの二人がいれば大丈夫だろと言わんばかりに食べ物を物色している。

 エンターも正直あの二人がいれば、大抵のことは大丈夫だと思わざるおえない光景をここに来て何度も見たので、特に心配することもなく見送った。


「雷帝! 強敵です。増援お願いします!」


「ああ?」


 口の中に食べ物が入った状態で何かをいう雷帝。

 その表情は何を言っているんだと言いたいようだ。

 エンターも正直そう思う。

 だって今帝が二人も向かったばっかりじゃないか。


「何事ですかね」


部屋着のまんまファイルが一応状況を見ようと靴を履き替え外に出た。


「これは、まずいのでは?」


 エンターもファイルを追いかけて外に出る。

 そこにはまるで人がゴミのぐらい小さく見えるほど大きいヘビみたいなエネミーがいた。


「はい?」

 

 あまりの光景にエンターは素っ頓狂な声を出した。





「エンター! こっちの人もお願い!」


「はい!」


 あの大きなエネミーと戦い始めてから、どのぐらいの時間が経ったか分からないが、今なお戦闘は続いている。

 エンターは戦闘に加わっても足手纏いになるだけなので、後方で負傷兵の治療に専念していた。

 基地の入り口まで運ばれてくる負傷兵を中に入れて適切な場所に運ぶのがエンターの仕事だ。

 また一人負傷兵が運ばれてきたため、基地の入り口に走る。

足を負傷した兵士のようで、傷自体はそこまで重症ではなさそうだが、今は戦えないだろう。

外に兵士を迎えに行ったついででチラリと先頭現場に目を向ける。

いままでに見たことがないぐらい大きな炎や水、電気が目に入る。

 きっとあの三人の帝の仕業だろう。

 あの人たち、今までどんだけ手加減していたんだと思う反面、あれでまだ生きているあのエネミーは一体なんだと心の底から戦慄する。

 俺、能力使えるようになったらあんな相手と戦わないといけないのだろうか。

 多分、戦わないといけないだろう。

 それだけの期待をいまかけられている。


「いや、にしてもな」


 あれはちょっとないだろう。

 ファイルだったり、校長だったり、雷帝だったりあれを見た瞬間、これはまずいのでは程度の反応しかしなかったが、あれくらい普通なのだろうか。

 能力を使う人類は想像以上に強いらしいとエンターは頭の中で人類を上方修正した。


「では、運びますね」


 足を負傷した兵士を担ぎ上げてエンターは基地の中に入る。

 命に関わるような負傷ではないため、治療は後回しだ。

 とりあえず、安静にできる部屋に運んで次の負傷者を中に入れるため基地の入り口でスタンバイする。


「炎帝⁉︎」


次の負傷者はまさかの炎帝だった。

しかも割と重症だ。


「大丈夫ですか?」


「自分では大丈夫なつもりです」


力なく笑う炎帝を抱えてエンターは中へ連れ込んだ。


「炎帝⁉︎」


 周りから、あの炎帝が⁉︎ という同様の声が響いてきた。

 炎帝の怪我が重症だからというより、炎帝が負傷で運ばれたということに基地では激震が走っているようだ。

 

「とりあえず、動けるようにだけしてください。私は今から前線へ行きますから」


「無茶言わないでください。だいぶん重症じゃないですか!」


 救護班の人が大きな声で炎帝を怒鳴りつけた。


「ですが、事態は深刻です。今ここで私が休んでいる場合ではありません」


 炎帝は炎帝で引く気はないようだ。

 とりあえず俺は新たな負傷者が出たときにすぐ運べるよう外で待機しておこうと思い、外へ行こうとしたところ、鼓膜が破れるかと思う程に大きな音が近くからした。


「防衛線が突破され、大型エネミーが基地に突っ込んできました! 総員、退避してください」


 あれ、これ想像以上にまずいのではなかろうか。

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