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対決(1)


「待ってたわよ、響」


 その聞き覚えのある声を聞いた時、流石に人違いだろうと思ったのだが――現実はそう甘くはなかった。

 放課後、校門から下校しようとする俺たちの前に立っていた茶髪の女――。一体何を思ったのか、三代舞は校門の前で俺を待ち伏せていた。

 色々と省いたので判らないだろうが、ただでさえ今俺は微妙な境遇下にある。まず、左右にはそれぞれ不機嫌そうな表情を浮かべている神崎と鶫が並んでいるのだ。この二人はまず一緒に運用しちゃいけないと思うのだが、何故かこういう事になってしまった。

 実際、アンビバレッジを探さなければ成らないという目的上でこいつらの同行は確かにありえる事だ。しかし幼馴染を殺されたも同然だと思い込んでいる鶫と、別に特に何かしたわけではないのに一方的に恨まれている神崎……。どう考えてもこの二人が一緒にいるのはおかしい。

 で、三人でならんだ俺たちの背後では氷室と藤原が肩を並べて歩いている。少しだけ距離を置いて歩いているのは神崎と鶫が放っている拒絶のオーラに巻き込まれない為であろう。

 そんな状況で舞が現れて話は余計にややこしくなってしまう。舞は腕を組んだままこちらまで歩み寄り、俺の進行方向を塞ぐように立ち止まった。


「何、どうかしたの? 何その顔。なんか文句でもあるの?」


「頼むから帰ってくれ。正直邪魔だ」


「む……。せっかく幼馴染のお姉さんがあんたの為に時間を割いてあげよーってのに、随分な言い草ね……。あんたの方こそ女子左右に構えて何様のつもりよ」


「これは好きでやってるんじゃないんだよ……」


「……響ちん、このお姉さんだれ?」


「桜井君って……美人の知り合いばっかりですね」


 何この左右からのプレッシャー……。何? 俺が何したの? 振り返ってみる。氷室と藤原は遠巻きに俺たちを眺めていた。クソッタレ!!


「何しに来たんだ……? 用件を言おうぜ、用件を」


「……むー。何? あたしお邪魔? せっかくあんたの為に来てやったっていうのに……」


「夏休みで暇な大学生がフラフラ遊びに来ただけじゃねえのか……?」


「失礼ねー……。勿論真面目な話があっての事よ。あんたとVえす――?」


 その単語を口にしようとした舞の手を取って強引に皆から引き離す。校門の隅に移動し、舞の頭をすっぱたいた。


「アホか! それを易々口にするなっつったのはお前だろ!?」


「別にいいじゃない、あんたの友達の中に所有者がいるわけじゃないんでしょ?」


「それがいるから問題なんだろうが……」


 俺の言葉に舞の表情が変わる。鋭い眼差しで立ち上がり、遠巻きにコッチを見ている皆を眺める。


「どいつ?」


「あの、金髪チビの隣に立ってる眼鏡のボブカットの……って、うおおおいっ!?」


 ユニフォンを片手に歩き出す舞の首根っ子を掴んで手繰り寄せる。舞は不機嫌そうな顔で振り返り、目と鼻の先まで顔を近づけて舌打ちした。


「何よ?」


「何戦おうとしてんだ!?」


「何って……当然でしょ? それともあんた、まさかもうあたし以外の所有者とつるんでるわけ?」


「そうじゃねえけど……鶫の場合は色々特殊なんだよ! まだVSには目覚めてないっつーか……」


「……? じゃあ何で所有者だってわかるのよ?」


「説明すると長くなるんだが……ああもう、わかった。ちゃんと紹介するよ。あいつにとっても無関係ってわけじゃないんだし……」


 とりあえず舞はそれで納得してくれた。舞を校門の前に残し、皆のところに駆け戻る。事情を詳しく説明する自信が無かったので鶫の手首を掴み、そのまま反転して舞のところに戻る。


「すまんみんな! 後で説明する!!」


「響ちゃん!? ええ〜、ど、どこ行くの〜!?」


 神崎の叫び声から逃れるように走っていく。立っていた舞の手首を掴み、左右に女子を二名連れて俺は校門前から逃げるように走り去った。

 しばらく走り続け、気付けば最寄のモノレールステーションの前にやってきていた。肩で息をしている俺の背後、舞と鶫はぽかーんとした表情で俺を見ている。


「急になにすんのよ」


「説明出来るか……? VSだのなんだの、超常現象を交えた説明でなきゃ納得行く答えにはならねーだろうが」


「桜井君、大丈夫……? すごく……はあはあしてるけど」


「あ……? そういや、お前ら……なんでそんな、平気なんだ……?」


 たかが五分ちょっと走っただけなのに、なんでこんなに疲れてるんだ俺……? なんだ、こいつらが体力ありすぎるだけなのか? 自分の体力にはかなり自信があったんだが……まあいいや。

 舞が歩み寄り汗だくの顔を覗きこんでくる。そうしてじっと俺の顔を見た後、眉を潜めてこんな事を言い出した。


「あんたなんか顔色悪くない?」


「は……?」


 言われて見れば確かにここの所身体がだるい……。生活リズムが狂ったり、夜に歩き回ったりしたから風邪でも引いたのかもしれない。

 ステーションへと続く階段の前、噴水を取り囲むように設置されたベンチに腰掛ける。この時間帯ステーション前はかなり込み合っているが、運良くベンチ一つ確保する事が出来た。

 座ってみるとじっとりと嫌な汗をかいている事が判る。本当に二人の言うとおり具合が悪いのかも知れない……。心配げに俺を見ている鶫の隣、舞が腰に手を当てて言う。


「良くわかんないけど、あんたそういえば午前中から具合悪そうだったわね」


「え……。桜井君、午前中はこの人に会ってたんですか?」


「ああ、まあな。ほら、鶫にも話しただろ? VSの話だよ。こいつも俺たちと同じ、所有者なんだ」


所有者セイヴァー……?」


 警戒するような目で舞を見る鶫。しかし鶫も舞もユニフォンに手を伸ばす様子は見られなかった。舞がそうしないという事はとりあえず戦うつもりが無いという事。鶫がそうしないのは――単純にVSの呼び出し方を知らないという事。

 舞もそれに気付いているからこそVSを呼び出そうとしないのだろう。それに何よりこんなに人が多いところでVSなんて使えばいくら目に見えなくても騒ぎになってしまう。そういう狙いはなかったが、VSを封じる場所に出たという事になる。


「あたし、三代 舞。こいつとは子供の頃からの仲で……まあ幼馴染って奴ね」


「……三代、さん。私は……皆瀬 鶫です」


「舞で良いわよ。名字そんなに気に入ってないの。まあそれは兎も角……響、ちょっとこっち向きなさい」


「あ……?」


 顔を上げた瞬間、舞の額が俺の額に当てられていた。目を瞑ってはいるものの、舞の顔が文字通り眼前に――。


「……熱は無いわね。でも風邪かも知れないし……。ステーション一階のドラッグストアで何か買ってくるわ。とりあえず響の部屋で詳しい話って事で」


「…………ぉ、おう」


 なんだかよくわからないが頷いてしまった。なんか今ちょっと問題ある発言があった気がするが、意識がぼーっとしてて上手く聞き取れなかった……。

 舞は鶫と俺を置いてステーションの中に入って行く。モノレールは基本的に空中に設置されたレールの上を移動する。故にステーションそのものとして稼動しているのは二階部分で、一階部分はちょっとしたショッピングモールのようになっている。

 ドラッグストアや飲食店、ラジオの放送局やらライブステージなんかも詰め込まれていてとても便利だ。まあ今はそんな所をウロウロしたい気分ではないが。

 それにしても意識してみると本当に具合が悪い。何もしていないのに息切れがするような、そんな奇妙な状態が続いている。額の汗を拭ってシャツを煽ると隣に座った鶫がいつの間に買ったのか缶ジュースを差し出してくれた。


「飲みますか?」


「すげえ気が利くじゃん……。ああ、そっか自販機いっぱいあるんだったな」


「うん。桜井君疲れてるのかな……? 汗びっしょりだよ?」


「ああ…………なんでだろうな……。なんか頭もボーっとしてきた」


 舞の所為だろうか? そういえばなんだかクラクラするな……。本格的に風邪でも引いた気がする。額に手を当てて深く息を付く――その時だった。

 ポケットの中のベルサスが震える。マナーモードにしておいたが、きちんと反応したらしい。近くにVSがいる反応――。マップ上のマーカーの位置から周囲を探る。

 見上げた頭上、モノレールのラインの上にアンビバレッジの姿があった。巨大な蜘蛛のVSはレール上を移動し、二階の駅へと入って行く。


「……鶫はここで待ってろ。舞が戻ってきたら一緒に居てもらうんだ」


「え? 急にどうしたの……?」


「幽霊を見つけた……! 野郎、ステーションの中に入りやがった……! 追い掛ける!」


「桜井君、そんな……っ」


 鶫の言う事を無視して走り出す。ステーション一階に飛び込み、エスカレーターを飛ばし飛ばしで駆け上がる。よく滑る磨きぬかれた床の上で足が縺れそうになる。

 足腰にまで来てるのか……? 息切れが激しい。ちょっと動いただけでこれってのはどうなってんだかな――!


「野郎……! 逃がすかっ!!」


 思わず叫んでしまう。アンビバレッジは人ごみの中、半透明に透けた状態で俺を誘うようにゆっくりと移動している。しかしこっちは生身のある人間だ。追いつくためには利用客たちが邪魔になる。

 人ごみを透過していくアンビバレッジに追いつくのは難しい。何度も人ごみの中で転びそうになる……。そうしてモタモタしているうちにステーションにはモノレールが入ってこようとしていた。

 停車するモノレールの前に出た所でアンビバレッジを見失ってしまう。確かにこっちに来ていたと思ったんだが――。そう思った直後、背後から誰かに肩を叩かれた。

 振り返るとそこには鶫が立っていた。鶫が指差す方向、モノレールの車体の上にアンビバレッジの姿があった。逃がしてはならないと誘われるがままモノレールに向かって走っていく。

 改札を跳び越えてモノレールに向かう。背後で駅員が何か叫んでいたが知ったこっちゃねえ。閉じ欠けていたモノレールの扉を強引に開き、そこへ滑り込む。


「間に合ったか……!?」


 振り返ると背後で鶫が自動ドアに挟まりそうになっていた。慌てて手を掴んで車内に引っ張り込む。


「何やってんだお前!? 待ってろっつったろ!?」


「で、でも……櫻井君、そんな状態なのに……っ」


 こいつ、自分が足手纏いになるってわかってねえのか――!?

 周囲を見渡しながら立ち上がる。鶫も胸に手をあて、緊張した様子で辺りを眺めていた。そうしてようやく気付く。当たり前のように、それは――罠だった。


「――乗客が、誰も……居ない?」


 扉は既に閉まり、モノレールは動き始めてしまった。

 閉じ込められたのは……俺たちの方だった。



対決(1)



「桜井君、この電車……!?」


「誰も居ねえ……。そんな事ってあるのか……?」


 この時間のモノレールはまさに満員状態のはずだ。それがどうしてこんなに空いてる……? 人っ子一人居なくなりゃ快適だと思った事はあるが、実際なってると不気味以外の何者でもない。

 モノレールは普通に運行を続けている。つまり誰かが動かしているはずなのだ。しかしこの状況で動かしてるって……それって本当に大丈夫なのか?


「兎に角先頭まで行って見るか」


「う、うん」


 おっかなびっくりついてくる鶫を気にかけながら前の車両へと移動していく。一つ、二つと扉を潜り抜けてもあるのは無人の空白のみ。

 一つの車両が無人なだけでも相当違和感があるが、こう無人が続いていると本当に怪奇現象以外の何者でもないな……。

 殆ど揺れもない吊るされたモノレールの中、静かなモーター音だけが鳴り響いている。まるで異世界に紛れ込んでしまったかのようなそんな錯覚を受ける。

 窓からは夕暮れの日差しが差し込み始めている。なんとも不気味な空間を更に紅く染め上げて行く。しかし立ち止まっていても仕方がない……。前に進まなくては。

 また一つ車両を移動した。既に先頭車両へと進もうとしている。この先には運転士が居るはず。モノレールもかなり自動化が進んでいるはずだが、それを管理する人間の一人くらいいるはずだ。

 しかし運転席に入る扉は閉じられていて開く事が出来ない。何度か頑張ってみたが、どうにも動きそうにない。


「くそ……」


 しかもどんどん体調が悪くなっている気がする。思わずよろけて鶫にぶつかりそうになる。しかし彼女はそんな俺の肩を支えてくれていた。


「何が起きてるんでしょうか……」


「わからねーが、ヤバそうだ……。あの蜘蛛野郎、どこに逃げたんだ……?」


 ここまで閉じ込めておいて逃げましたって事はないだろう。周囲をもう一度注意深く見渡す。すると正面、元来た車両の中に人影があるのが目に留まった。

 先ほど通過したときは誰も居なかったはずだが、どうやら後部車両からこちらに向かってきているらしい。しかしその足取りは不気味にふらついており、しかも人数が一人や二人ではない。


「何、あれ……」


 ゆらゆらと揺れながら一歩ずつ近づいてくる乗客たち。サラリーマンに学生に主婦に……全員が同じ動きをしている。まるで映画でみたゾンビか何かみたいだ――。


「下がってろ」


「え……? 桜井君……?」


 何だか良く判らんがやばそうだ。連結部に向かい、そこでリーマンを待ち伏せる。ふらふら進んでくるリーマンは白目を向いて涎を垂らしていた。死んでいるわけではない、と思う――。だがこれは――!?

 リーマンが鞄を振りかざす。俺目掛けて振り下ろすつもりなのは明らかだった。腕に蹴りを飛ばし、鞄を落とさせる。


「んの野郎っ!」


 リーマンの顔面に肘を減り込ませる。思い切り吹っ飛んで行く威力で放ったはずだったが、リーマンは怯んで後退しただけだった。

 やはり身体が重い。まるで全身から力が抜けて行くようだ。よろけて背後に倒れてしまい、なんと立ち上がる事が出来ない。


「桜井君っ!!」


 身体が震える。腕が持ち上がらない。足に力が入らない。這うようにして連結部から後退する。我先にと進んでくる連中の手が扉からこちらへと伸びている。

 それが遮断されたのは鶫が扉を閉じたからだった。なんとか連中をこちらに入れないようにと列車の扉を一生懸命に押さえている。しかし非力な鶫の腕でそれを阻止出来るはずもない――。


「下がってろ……! 危険だ!」


「でも、桜井君が……! 桜井君が……っ!!」


「人の心配してる場合か……!?」


 駄目だ、声を上げるのも辛くなってきた。このままじゃ、死ぬんじゃないか……? ふとそんな思考が頭の中に浮かび上がる。死ぬって、アホか……? だって俺何もしてないのに――なんで死ぬんだ?

 体から力が抜ける。意識が朦朧としてくる。なんでこんな時に――こんなにぐったりしてるんだ俺。駄目だ、意識を保てない。


「逃げろ……鶫……」


 扉が破られる。そうなったら何をされるか判らない。鶫を巻き込むわけにはいかない。でも、なんでこうなったんだ? わからない――。いや、待て……。なんで鶫を襲うんだ……?

 アンビバレッジは榛原陽子のVS――そのはずだ。それが親友を危険に巻き込むのか……? 思考が纏まらない。瞼が重い――。気を、失う――。うしな、って―――――。





 ――――列車全体に激しい衝撃が走った。

 それは、列車の前方から後方目掛けて駆け抜けるように伝わって行く。モノレールは完全に運行を停止していた。ほんの一瞬――刹那の出来事だった。

 軋み、へこんだ列車の前方部――。一般人の目には見えない、半透明の影があった。巨大な盾を腕に構えた獣の幻影……。停止した列車を“受け止めた”怪物の背後、その背中を蹴って跳躍する舞の姿があった。

 壁を蹴り、列車の上部に移動する。瞬間ディアブロスの姿は消え去りモノレールは再び加速を開始した。強引に停車させられていた全てが動き出し、舞はオレンジのベルサスを揮う。


「ディアブロス!!」


 列車の窓に映りこんだ怪物が硝子を電撃と共に砕け散らせる。その一瞬、舞は滑り込むようにして車内へと侵入していた。

 召喚されたディアブロスはそのまま車内に姿を現す。響を抱えて迫り来る人々に背を向けている鶫を見下ろし、舞は肩首を軽く鳴らして駆け出した。

 その足取りは響の何倍も軽く、大地を滑るかのようにして近づいてい行く。鶫の背後から伸びていた腕目掛けて蹴りを放ち、サラリーマンの男性を豪快に吹き飛ばす。

 連続で拳を繰り出し、近づいてくる人間を容赦なく殴り飛ばす。そうしながら響と鶫の前に体を捻じ込み、ディアブロスが腕を伸ばして出入り口を封鎖する。


「大丈夫だった?」


「……舞、さん……!? どうしてここに……?」


 鶫の言葉は尤もである。何しろこのモノレールは常に移動を続けていたのだ。同じ駅に取り残された舞が列車を“追い越し”、しかも正面からそれを“停止”させて見せるなど、正気の沙汰ではない。

 勿論鶫にはディアブロスの姿も見えている。龍のような獣のようなその怪物は巨大な腕で襲い掛かってくる人々を押しのけ、連結部に拳を叩き込み後部車両を全て切り離す。


「駅じゃ色々とパニックになってたわよ。それより響のケータイは?」


「は、はい……」


 慌てて鶫は響のベルサスを差し出す。それを受け取り、直ぐに舞は電源をオフにした。


「ここから逃げるわよ」


「え……? 逃げるって、どうやって――!?」


 その次の瞬間にはディアブロスの大きな腕が鶫の胴体を鷲づかみにしていた。同じように気絶した響の体を掴み、ディアブロスは振り返る。その視線の先には猛スピードで彼方へと吹っ飛び続けているレールの線があった。

 まさか――? そう考えた時には既にディアブロスは列車から飛び降りていた。空中を軽く跳躍し、細いレールの上を巨大な身体で滑って行く。ブレーキをかけると同時に火花が舞い散る。舞はディアブロスの肩の上に乗ったまま遠く離れて行く列車を見送っていた。

 ディアブロスはそのままレールから飛び降り、地上10メートルほどの高さから大地へと降り立った。その衝撃でアスファルトに巨大な亀裂が走り、大地が揺れる。周囲を歩いていた人々はその衝撃で倒れかけ、誰もが同時に周囲を見渡した。


「とりあえずここまで来れば一安心――ね」


 ディアブロスが姿を消すと同時に鶫と響の体は大地へと落下した。舞はそれよりも先に飛び降りていたのか、全く無傷のまま遠く頭上を見上げていた。


「…………すごい」


「響を部屋まで運ぶわよ。ほうっておいても死にはしないけど、ちょっと危険な状態だから」


 そう語りそそくさと響を背負い上げる舞。鶫は慌ててその後に続き、歩き出した。


「あの……何が起きてるんですか?」


「話すと長くなるけど――ま、それを説明しに来たような所もあるしね。実際に体験したのは良い経験だったでしょ」


 舞は鶫の話をろくに聞いていない。頭上ではまだモノレールが暴走を続けているかもしれない……。ふとそんな事を考えながら鶫は舞に続き、響の住むマンションへと進んで行った。


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